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営業力

第243回 勝ち続ける営業マン

Posted on 2017-03-30

 自分自身が優秀な営業マンの部類に入るかどうかはコメントを差し控えますが、私の周辺には多くの優秀な営業マンがいます。しかも、彼らは勝ち続けています。

 何故なのかと常々疑問に思っていたところ、今回『勝ち続ける会社の「事業計画」のつくり方』(クロスメディアパブリッシング社)の執筆を機に、これまでの情報を整理していて気付いたことがあります。それは、彼らがそれぞれ生来持っているある性癖があるとしても、それに努力や学習した部分を付け加えて顧客の心を動かし信頼され受注や実績を上げていく共通なものを持っていることです。

 

 優秀な営業マンは以下のような特徴を持っています。

 それらは、

1.営業行動に正直さ、誠実さがにじんでいる

 人間の持つあらゆる性質の中で最良のものは「正直さ」、もしくは「誠実さ」だと、私は思っています。

 他のどんな性質もその不足を補うことができるが、この性質だけは、他で補うことが出来ないほどのものと考えています。これが勝ち続ける優秀な営業マンには備わっているのです。

 私が経営を託されていた会社にもこのような人材が沢山いました。中でも役員のF氏はこのカテゴリーに当てはまる筆頭格でした。外部内部を問わず常に、正直の服をまとって歩いているような存在でした。当然のことながら、顧客の信頼を勝ち取るのに時間を要さない。更に、誠実なるがゆえに信頼を傷つける事象を起こすリスクも持っていない。やはり、天性の優秀な営業マンといってもいいほどの人物でした。

 顧客は皆賢いので、簡単に嘘を見抜きます。彼のような偽りの無い正直な営業だと、顧客の構え方が違ってきます。時に、大風呂敷を拡げることがあっても、どこかで辻褄を合わせて、勝ちえた信頼を傷つけることをしない特色を持っています。この要因こそ彼が営業で成功を続けるのに役立っていたと思います。

 

2.やり抜く意思の強さがある

 多分これは営業に限ったことではないと思いますが、決まった計画をやり抜く意思の強さが勝ち続ける営業マンには他の人より強いと思います。

 商品が良くない、技術力が弱い、サポートの対応が良くないなど売りにくい事情はいろいろな理由があるかもしれない、しかし、その状況下でも計画をキチッと達成している営業マンがいる。

 人のせいにする部分を最小限にして、自分で自分をコントロールする力が強く、なんとしてでもやり抜く精神力の強さがあるのではないでしょうか。くだんのF氏もやり抜く意思の強さは人一倍強いものを持っていました。

 

3.欠点を開示して警戒感を解き、親近感を覚えさせる能力を備えている

 これは、上記1と無関係ではありません。

 欠点のない商品やサービスは世の中にあまり存在しないことは顧客も皆分かっている。たとえスペック通りの商品やサービスでも、利用する側の尺度や価値観の持ち方で欠点や落ち度にもなりえます。このことが分かっているにもかかわらず、普通の営業マンは売りたい一心で自社の商品やサービスの欠点を隠す癖がある。

 実は勝ち続ける営業マンは、この逆をいっている。

商品の弱点を顧客に最初から伝えてしまう。彼らの警戒心を解いていくのです。臭いものにふたをしない方法をとって警戒感を解き、顧客の中に入り込んだ上で顧客と一緒に解決策を考えていく。このような営業スタイルをとっています。

 

4.商品やサービスに備わっている魅力を感覚的に示せる表現力を備えている

 普通の人は、モノやサービスを買う時、理屈でなく感覚的に決定しています。これに応えるために勝ち続ける営業マンは、商品に備わっている魅力を感覚的な言葉で表現する力を備えています。

 例えば、大型バイクの販売の場合です。「ハーレーダビッドソンのツーリングの仲間入りをして箱根の山を飛ばしたくありませんか?」。他のメーカーの大型二輪車には無いツーリングの仲間入りができる。これぞ営業が薦める時の殺し文句。感覚で売る表現力を備えているのです。

 購入予備軍の顧客を理屈で納得させない。理屈は購入者が自らの購入の妥当性を他の人に説明する理論的根拠を探すときに勝手に見つける言葉だと、勝ち続ける営業マンは考えています。曰く、「他より安全だ」とか、「技術的に優れている」とか。

 件のF氏も、商品やサービスに内在する魅力を論理でなく感覚的に表現する抜群の力を備えていました。

 

5.提案書は単純明快で、内容に具体性を入れている

 勝ち続ける営業マンの提案書は単純明快です。

 私もセミナーや講演会で、提案書は「絞り込め」と繰り返していますが、これは勝ち続ける営業マンから教わったことです。たまに彼らの提案書をレビューすることがありました。他の人の提案書と明らかに違いがあります。

 自社の商品やサービスが持つあらゆる機能を並べ立てていない。

 「なんでもできます」というスタイルの内容ではなく、顧客の関心がある一点を、単純明快に表現して、他を削いでいる。このような内容になっています。

 それでいて、商品やサービスの説明には具体性がある。売りたい側の売り込み文句でなく、第三者の意見を簡単に添えている。例えば、「ツーリングに参加している人のx%が、自社のメーカーのバイクを他の人に薦めています」と、説明内容に具体性と信憑性を付け加えている。

 

6.顧客の好奇心をくすぐる力が備わっている

 勝ち続ける営業マンといえども、最初の訪問で顧客の意図を明確に聞き出すことは至難の技です。それでも次の訪問や提案に繋げられるように、顧客の好奇心をくすぐり興味を持たせる力がある。

 商談の過程で、最初になにかをほのめかして、顧客の反応をみる。顧客が興味を覚えたことに関して、ほのめかしの答えを最後に明かすようにすると、顧客は好奇心をくすぐられ、その営業マンにますます興味を持ち始める。こうなったらしめたものです。顧客とのやり取りの妙を演出できます。

 以上、勝ち続ける営業マンの特徴を列挙しました。「なんだ、俺も持っている。」と思う方もいるかもしれません。それはそれで結構な事。しかし、頭を冷やしてもう一度真摯に自分の営業活動を振り返ってみると、自己評価するほど周囲は同様の評価をしていないかもしれません。

 この際、「何故か?」と振り返る良い機会かもしれません。