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人間関係 / 折々の言葉

与え続ける

Posted on 2014-05-08

 「Give & Take」という言葉があります。「与え、与えられる」関係です。

 この言葉、一見、フェアに聞こえます。響きが何となく良いです。しかし、私の20年の経営体験からすると、これは意外に「計算ずく」のフェアさだけのことが多いように思います。この場合、「Give & Take」の結果として何かを成し遂げても、嬉しい実感が本心から湧かないことが多いのです。「与えられる」ので「与える」という打算が働き、本心の動きが感じられないことが多いからです。むしろ、現実には、「Give & Give」で与え続けることの方がビジネス上のメリットが大きいと、私はずっと感じてきました。しかも、これを意識していないで「与え続ける」のです。その方が結果として、周囲からの「信頼」、「信用」という、ビジネスマンとして最高の物を勝ち取る機会が多くなると考えます。ビジネスで成功している人には、これが多くみられるのではないかと思います。

 何故でしょうか?

 第一に、与え続ける人は、チームワークの中でお互いに助け合い頼り合うことの重要性を熟知しているからです。ゴリゴリ自分を押し出すと、全体のチームバランスを崩すリスクにつながります。私も、自分だけが前に出ても、全体を大きく構築するには限界があることを知りました。与えることで助け合うことが、かえってチームを強固にし、全体の成果を大きくする力があると考えます。論理でなく道理の世界です。

 第二に、与えることは、任せることと一脈通じます。与え続けるので、与えられた人は、与えられたものを利用して何か仕事をする、任されて仕事をすることになることが多いのです。与えること、すなわち、任せたことで、部下が育つ機会を作ることのなるわけです。育った部下からの感謝も含めて、その部下の以前より高いレベルの力を借りて、部門全体が大きくなることにつながります。自分個人の利益より全体の利益を大きくして、その中から大きな分配をもらうことにつながります。

 第三に、与え続ける人はいろいろな関係性(Relationship)をつくるからです。関係はごく限られた人のみでなく、与えられた沢山の人に及ぶのです。この関係がどこからどう自分の成果に結びつくかは本人にも分からない。本人もギラギラしたマインドが無いことが、かえって、集まる人々に安心感を与え、その人たちからの信頼をうることになります。結果として、人間関係づくりの基本をわきまえている人と見られるからです。

 皆様もご存じのとおり、16世紀末、日本の統一の過程で毛利軍と織田軍が熾烈な戦を展開しました。好き嫌いは別として、この双方、毛利元就、織田信長とも「与え続ける」こととは全く逆の「Take & Take」型だったかもしれません。他方、安芸の毛利軍に常に攻められ続け、最後は有名な武将の山中鹿之助をもってしても一族再興ならず、毛利軍に滅ぼされたわが故郷、出雲の月山富田城の城主の尼子義久は、どちらかと言えば「Give & Take」型だったかもしれないと思います。こと戦となると、取った、取られたという土地支配力がモノを言ったので、そうならざるを得なかったのかもしれませんが、ビジネスの世界では、最後の決め手は「信用」や「信頼」支配がモノを言うとなると、「与え続ける」ことこそが、一番効いてくると考えます。

 

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