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折々の言葉 / 語り継ぐ経営

ビジネスを始めるにあたって

Posted on 2014-07-17

 久しぶりに会った私の友人から、新しいビジネスの開始にあたっての相談を受けました。彼らのビジネス機会を最大にするために、私はいろいろな考え方の中から次のようなアドバイス(詳細は彼らの立場を考えて省略)をし、彼らを激励しました。上手くビジネスが展開することを望みます。

 

1.ビジネスモデルと言えるものを持つこと

 始めは幼稚そうに見えるものでも結構です。ただし、他と何か違うビジネスモデルを持つことが肝心です。そのビジネスモデルに気づくには、浮かぶアイデアなどをまず書き留めて、しばらく熟成させる必要があります。単なる思い付きに属するものが判明し、選別されるプロセスが必須だからです。

 世の中、そう簡単に問屋が卸さない例えの通り、書き留めた中のほとんどが消える運命にあるかもしれません。選別され残ったものが、多分、あなたが本当にやりたいことになるかもしれません。問題は、選択して残ったビジネスモデルに現実性があるか否かです。これを第三者的な立場の人にチェックしてもらってください。先々のことを考えると、そこまで厳格に吟味する必要があります。

 私も、最初に経営を任された時に、思いついた戦略的なアイデアを、とにかくPost-itに書き留めておきました。数週間してからそれを読み直すと、そのほとんどが消え失せたり、第三者との議論の過程で自分の考え方の甘さに気づいたりして、内容を修正することが多々ありました。こうして厳密に詰めた内容、換言すれば、信念を「6つの約束」として内外に明示し、背水の陣を敷いて作戦展開に没頭し成功した記憶があります。

 

2.ビジネスのロジックが明確であること

  ・誰(顧客の具体的なイメージ)を顧客に選ぶか、

  ・その顧客に何かを販売するか、

  ・その顧客に、他社の商品でなく、自社の商品を好んで選んでもらうためにどうするか。

  ・顧客に買い続けてもらえるためにどうするか。

 すなわち、特定の顧客にとっての価値を高めるビジネスロジックを、これまた厳格に整理しなおすところから始めなければなりません。事業を始める時に、自社の論理で展開することが多く、顧客の価値が疎かになることが多いからです。

 私の場合も自社が売りたい気持ちが前のめりになり、顧客がその商品やサービスの何に価値を求めているのかに関したロジックが曖昧だったことがありました。このような場合には、「こんな良い商品を、顧客が何故買わないのだろう?」と、顧客を責める気持ちが心の奥に出てきていました。

 こうなると、論理がおかしくなりがちですが、この時に、ビジネスのロジックを整理しなおす必要性に気づいたのが、私にとって幸いでした。

 

3.競合が気づく前に一気に仕掛けること

 普通のビジネスの世界では、新しいモデルが既存の業界を撃破するのに20年、30年以上かかると言われています。ネットの世界では多分これの半分以下の期間かもしれません。

 いずれの分野にしろ、最初の時点では誰も新しいモデルに見向きもしない、気が付かないことが多いです。しかし、10年、若しくはネットの世界では3~5年も経過すると、新しいビジネスに一目も二目も置く、目ざとい競合がでてくるのが一般的と言われています。このように競合が気づく前に一気に仕掛けてください。

 更に展開を積極的にしていくと、そのうち、競合がどうしようもない状態になったことに気づき始めます。こうなればしめたものです。競合は気づくのが遅すぎ、対応が後手に回った状態です。スピード感を持って一気にたたみかけることが重要です。

 

4.永くプレイヤーとして残れる持続性を持つこと

 問題は、上記の1.や2.が満足していることを条件に、競合が対応に手をこまねいている期間まで、あなたの会社が生き残れるための投資負担に耐えうるか否かが、勝負の分かれ目です。つまり持続性です。

 水圧で岩盤を破砕しながらガスを汚泥と一緒に抜き出すという技術開発に負うところ大なシェールガスの開発等もこの例です。もともとこの方法自体は新しくありません。1970年頃、私がアメリカにいた時、大学院の地質学の講義でシェールガスの開発技術のことをすでに話題にしていました。しかし、経済的に合理性が乏しかったため、、この当時は原油の開発のことが大きな話題を占めていました。

 時が経過し、技術開発力のお蔭で、低コストで地中の岩の間からガスを抜き出すことができるようになりました。投資負担に耐えながら、持続性を持って地道に取り組んでいた人が成功したことになります。既存の原油開発の会社が、この新しいビジネスモデルの展開に気づいて中期的視点に立ち、本気で地道な対応を続けていない限り、ビジネス上後手になる憂き目が多いと考えます。

 スケールや発想の大小がありますが、持続性を持った開発力がモノを言ったことになります。万一に備えて、普段から友軍を持っておくことです。このためにも、ビジネス上の信頼関係を周囲の人々と築いておく必要があります。友軍が投資負担に耐えうる力にもなりますが、加えて、簡単にあきらめない経営者の気力も問われます。

 世の中チャンスだらけです。しっかりしたビジネスモデルとロジックを持ち、既存の分野に新機軸を持って密かに殴り込みをかける勇気があり、それを持続できるか否かが、経営者に問われることになります。

 

5.時には、相手に負けなければ良いとの柔軟な発想に切り替えること

 既存のジャイアント企業を簡単には撃破できません。勝とう、勝とうという気持ちが前のめりになると、余り良い結果が出ないこともあります。精神的に視野狭窄に陥るからです。この場合には、勝たなくとも負けなければ良いくらいの柔軟な発想を時に持つと、多少気が楽になり発想が豊かにもなります。

 全て上手くいくとは限りません。そのような時には、いろいろな情報を分析・駆使して、既存企業に勝てる分野を捜すか、勝てない相手とは正面戦争に入り込まないことです。消耗するだけの資源がなければ、これに挑むのは危険です。どの企業にも死角があります。勝てると思う分野に相手が準備できぬ間に、そこで勝負すればよいのです。

 彼らには他にもいろいろなアドバイスをしましたが、今回は主要な点のみを書きました。

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