園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

考える

あなたはビジネスマンとして成長する定石を知っていますか?(1)

Posted on 2013-03-21

 あらゆるビジネスマンが自己の成長を願って、さらに力をつけたいと日々努力をされていると思います。本日はこの力を強化するためにどうすべきかについて私の体験を交えて書きます。

たくさんの社員の成長を20年間経営者として見つめてきました。結論は、成長のための定石には、その深さの違いがあるとして、それぞれの役職レベルとはほとんど違いがなく、以下の共通点があると個人的には確信しています。

1.まず、自分の明確な考え方、哲学、違う言葉で言えば、理念を再度考え直してみることです。

 私の場合も、実質倒産寸前の会社を建て直すにあたって、それまで培ってきた自分の哲学、考え方が、会社の成長にはもちろんのことその後の自己の成長にも非常に役立った実感を持っています。

 当時周辺の会社の苦境を見聞きしていて、私自身一番心が痛んだのは会社の倒産によりその会社に関係していた社員やその家族が非常に不幸な目に合うことでした。生活に困窮して一家離散などにつながることも見ました。

 このようなことが起きないように、経営者として自らを律し会社の成長にすべてのエネルギーを注ぐことを心掛けました。また、「社員を大事に」しながら社員と会社を成長させるという基本的な哲学、考え方を持ち、この考え方を会社のビジョン理念の中に明確に織り込み、それに向かって自己の情熱を傾けていったのです。

 この情熱が以後の自分の人生を積極的に生きるエネルギーにもつながったように思います。

2.考える力を蓄えることです。

 このコラムのほかの項でも「How to」にたけている人よりも、「Why」を考える人こそ重要だと主張しています。

 現在は細かい情報が氾濫しており、ある課題に対してその解答を得るための「How to」は教える人や機会が沢山あると思いますが、思考のルートやヒントを与えてくれる人や機会が意外に少なくなってきてはいませんか?

 人間がレベルアップしていくには、起こりうるいろいろな事象に対して、それを克服するための応用問題を解くことが要請されます。全体構想力(コンセプト力)に関係します。

 また、応用問題を解くアプローチが沢山あり、どのルートを選ぶかの選択力も要求されます。判断のために考えることです。

 ある固有の問題は早く解けるが、違う応用問題に直面した時には解けなくて自己の思考の深さの限界を知ることはありませんか?「さらに、努力しなければ」と、思うことはありませんか?

 個人的には、深さのある回答方法を見つけるルートのほうがその人の将来の成長には望ましいと思います。このようにビジネスマンが考える力を養うことに投資を惜しまない姿勢が欲しいものです。

3.さらに、コミュニケーション能力を早い段階で磨くことです。

 コミュニケーションと表現すると何となくきれいに響きます。

 しかし、その主旨が、伝えたいことを伝えたい、汲み取りたい本当の意見を汲み取るために双方の貴重な時間を費やして行うことを目的としていると考えると、綺麗ごとでは済まされません。

 実態はもっと「人間臭い」ものではないかと思われます。生身の人間同士の話し合いですので、「対話」(ダイアログ)力と表現するほうがその実態に近いかもしれません。

 人間臭い対話(ダイアログ)を成立させるためのビジネスマンの姿勢として私が過去も今も重視しているのは、

  • 日常的に挨拶をすること
  • 上下の身分上の姿勢をださないこと
  • 本気で真剣みを持って、相手も整理された意見を言えないことがあっても、我慢して相手の話を聴くこと。しかも、共感性(Empathic mind)(同情、Sympathyではありません)をもって聴くこと。この同じ目線で「傾聴する力」がポイントとなることを意識すること
  • 会話のやりとりで、双方向性(一方方向でない)に配慮すること、自分が話しすぎないこと
  • 相手の興味を抱くことに話の焦点をできるだけ絞ること、まず相手の話題に集中すること
  • 出来ない約束はしないこと
  • 座り方で対峙する座り方や腕組み、横柄な態度は避けること

 こういう姿勢で対話をすることを習慣としていくと、相手との考え方の違いが浮き彫りになりながらも、真摯に話し合うことを通じて相互の信頼を築くことになります。

 新しいアイデアを相手からもらいながら、自身の考えとミックスすることから共同で新しいものを作り上げることができる喜びも味わいます。

 メールのやりとりでも内容はもちろん伝わります。しかし、問題は話すその瞬間に相手が納得するかです。相手の顔色、言葉に対する反応などを読みながら対話するには、フェーストゥーフェースの対話が望ましいことが多いと考えます。

 さらに、どんな対話でも一回の伝達でその真意が伝わることは、せいぜい10%位。視点を変えて繰り返し話しあうことが臨まれます。

 理由は、相手側からすれば、なぜ、そういう内容の発言になるかの背景が分からない場合や対話する相手側が受信モードになっておらず、当面自分とは関係ないと勝手に推測され、身を入れて聴く気にならない場合があるからです。また、対話する側に相手に刺さるあなたのキーワードが不足している場合もあります。

 

あなたが急ぐその仕事は重要ですか?

Posted on 2013-01-10

新年を迎えるにあたって

 新年あけましておめでとうございます。

 国家の運営は政権が交代して経済や金融に新政権が力点を置いた施策を打ち出していることは、ビジネスに関係する一人として喜ばしい限りです。

 読者の皆さん、新しい年になり気合が入っておられると思います。気合を入れれば入れるほど、ビジネスでは矛盾することを同時にやらなければならないこと、さらに、その時間が限られていることにお悩みかと思います。

 例えば、顧客を増やしたい、顧客に対するサービスを強化したい。しかし、会社の負担が多くなる。社員の満足度を高めたいが、これも会社の負担が一時的に多くなる。それでも、矛盾したことをうまく調整して関係する皆をハッピーにしなければ、経営をしたことにならないのです。

 私は、「三方一両得」と言って、顧客も社員も会社も皆が得をする解を見つけることが必要でと説いています。特に、皆さんのビジネスを実際に推進しているのは社員です。したがって、社員、社員の育成に力点を置いていくのが、皆さんのビジネスを成長・発展させる経営の近道かもしれません。

 皆さん、本年もよいスタートをきってください。

 そのために、まず仕事の仕方について述べることにします。なぜなら、この気持ちで1年を経営してもらいたいからです。ほとんどの仕事には、仕事の目的遂行のために「重要度」「緊急性」の概念が関係しています。

 にもかかわらず、事前にこの二つの概念を意識して仕事を遂行することが少ないのも事実です。緊急度については日常的に意識して判断せざるをえない場合が多いのですが、大半の方々が重要度を明確に意識して仕事をしていないのが現実ではないでしょうか。

仕事の重要度と信頼性の関係

 重要度と緊急性の組み合わせで4つにカテゴリー分けできます。

①事業の目的達成のために重要度が高く、緊急性が高い仕事も理論的には多いのです。

経営上一番重要度が高い仕事として、私は

1.顧客の開拓と

2.顧客との良い関係の維持、

3.社員の働きやすさの環境造りにおいています。

この3点は独立してあるのでなく、統一的に完結する経営姿勢、経営哲学として私は重視しています。

 自社の商品を買ってくれる顧客の具体的な顔を社員と一緒に見たいのです。ニッチな分野の個客とでもいえる人々です。緊急事態が多くて、日常の判断からこの視点が意外に失念されやすいのです。

 仮に、顧客に関わることや重要度が高く緊急度が高い状態が毎日発生しているとしたら、このこと自体がその企業の存続のためにまず問題ではないでしょうか。

皆様の会社、大丈夫ですか?その会社に根源的課題があるか、もう少し早く必要な手を打っていなかったが故に大きな課題に今直面しているケースかもしれません。でも、これを克服しない限り、その企業の継続的発展は厳しいと見ざるを得ません。

重要度が高い仕事は、意外に緊急度が低い場合が多いのです。

 すなわち、会社の将来の発展のために極めて重要な仕事は、「今すぐ実行」という意味での緊急性は少ない仕事であるのが一般的です。例として、人材の強化です。

 これはどの会社にとっても重要な仕事です。しかし、今日緊急にこれを実行できなくても、明日実行することができるのです。健全に時間をかける場合は別として、人材の強化が重要性が高いにもかかわらず、明日、その翌日と一日伸ばしとなり、結局、実行に移さないまま、その年度に積み残し翌年に繰り越されることが多いことに留意すべきです。会社としての大きな機会ロスです。 

重要度が低くて緊急性が低い仕事に属するルーチン的な仕事をしている人には、何か新しいことにチャレンジしなくてもこれで一日が終わってしまうことが問題です。

 これが常態化すると、会社としてはゆゆしきことですが、現実には、いろいろな会社でこれに似た事態が発生しているかもしれません。上司がこのパターンを意識的に排除する経営手段を講じていない場合です。会社が重要視する方向に社員のベクトルを合わせる努力を怠っていると、このような現象が現れます。 

重要度が低いが緊急性の高い仕事は理論的にはありえますが、ビジネス的には意味が薄いパターンです。このパターンで業務を継続的に続けることはまず不可能です。

重要性に力点を置いた仕事のやり方を認識

 重要度と緊急性の4パターン分類で経営上一番問題なのは、ほとんどの仕事が緊急性に引っ張られやすいことです。経営層が計画的に段取りよく仕事をしていれば、本来緊急性に引っ張られる確率が少ないにもかかわらず、経営層の計画性の無さからこのような事態が発生します。

 また、緊急性が高いが故に、会社の中の大騒ぎ事態を救う救世主が現われます。この時点では本源的解決にはなっていないにもかかわらず事態は一応落ち着き、急場を凌ぐことに貢献したその人が評価を高めやすいことになります。

自分の仕事の点検

 皆さんの日常の仕事を一度、この4パターン分類で振り返ってみてください。緊急度の高い仕事が多く発生するのは、本人か上司がこれまで重要度の高い仕事に対応していないことが原因です。他の部門や人々にも大きく影響を及ぼしてしていることを認識すべきです。

 私は、1年間にその会社でなすべきことをリストアップして、その中から重要度の高いものを選択することにしています。逆に、重要度の高くないことには、首を突っ込まないことにして、不要と思うことを捨てています。

 このように重要度を峻別することは、仕事のやりかたの反省にもつながると考えます。ぜひ、このことを「考える」習慣をつけたいものです。

 

「変革」のためにどのようなリーダーシップを発揮していますか?(1)

Posted on 2012-11-15

社員を大事にし、社員とともに成長するという基本的な考え方

 経営者やリーダーが自己の志を実現していく過程で、社員の支持を継続的に得ながら会社を変革させていくためには、常に社員を安心させ幸せにしていく基本的なスタンスを持ちつつ、しかも、いろいろな場面で変革のための施策を確実に実践していくことが肝要だと私は20年の経営体験で分かりました。

 逆に社員のことに余り配慮せず、社員が経営者などリーダーの志に協力しがたい雰囲気の中で成長している企業は稀有だということも分かりました。

 幸せの概念は多様です。

 成長できる環境、人間関係など個人の価値観によって幸せの概念には違いがあると思います。しかし、少なくとも概念の構成要素として、会社の置かれた状況を踏まえた上で、社員個々人が安心感を持ちながら成長している実感があることが不可欠ではないでしょうか。

社員が成長を感じるのは?

 では社員はどのような時に十分な成長を実感出来るのでしょうか。

 私の経験では次のとおりだと思います。

  • 仕事の裁量を与えられ、日々の仕事に主体的に取り組んでいる時です。
  • 成長プレッシャーを感じつつも挑戦的な仕事ができ、結果に対する成果意欲が湧く時です。
  • 必要な時に適正な返事が返ってくる良き上司に恵まれている時です。
  • やりたい仕事につけた時です。
  • お互いに教えあい、協力できるチームワークのある職場である時です。
  • チームとしてのコミュニケーションが円滑に実施されている職場環境がある時です。

 経営者やリーダーは、上記の点を踏まえた上で変革のためのリーダーシップを発揮してはいかがでしょうか。

変革へのリーダーの心構え

 変革のリーダーシップを発揮することはそう難しいことではありません。ただ最低限、次のような心構えがあったほうが、成長意欲を持つ社員をうまく巻き込めると思います。

 いろいろな所で引用されていますが、William Arthur Wardという著名な作家で教育者が言っている言葉を思い起こします。

凡庸な教師は、指示(tell)をする、

良い教師は、説明(explain)をする、

優れた教師は、模範(demonstrate)を示す、

そして、偉大な教師は心に火をつける(inspire)。

 この最後の言葉に気をつけたいものです。

 第一に新しい夢や目標を自分の言葉で語り火をつけることです。

 リーダーたる人は、部下の心に火をつけ(inspire)なければなりません。火のつけ方にはいろいろあると思いますが、新しい夢を語るのも一つの方法です。

 夢のない人に部下を任せると、部下の信頼を勝ちとって人の集団をまとめるのが厳しくなり、結果として部下の心に火がつかないどころか、逆に部下の心に火がつく前に彼らの心が萎えてしまうからです。またリーダーが、新しい夢を語る相手の人間に興味を持つことが大切になってきます。

 第二に、正しい指示と報告をする習慣をもつことです。

 指示と報告は対ですが、まずリーダーの正しい指示が適切なタイミングで出されることが大事です。

 そのためにはエンドのところを洞察したリーダーの深い考えが前提となります。

 結論の先を見越さない指示は、プロの指示ではありません。方向性が全く定まらない議論のみで、出たとこ勝負の判断をしやすいからです。

 しかも、指示は相手に伝わってナンボの世界ですから、相手の言葉で相手を尊重して正しく伝えることが不可欠です。エンドを想定して、一人一人との対話を通じて個人の性格や人間性を観察して指示をだしていくことが前提です。個別対応です。併せてその指示が部下の末端まで通じたかを見るために、要点をリーダーが質問するなどして、指示が正確に末端まで浸透したかのチェックすることも必要です。

 自分の体験でも、この通りにはならないことが多いのですが、「忍耐力」を持って努力をし続けるしかありません。

まず考えること

 リーダーとして変革のために「考える」ことに一番時間を費やしたいものです。

 「限られた時間」の中で会社の発展のために時間を有効に使うことが大事ですが、重要なことに時間が使えないのは、リーダーのスケジュールの立て方と部下への仕事の指示の仕方に原因があることも想定すべきです。

 代替できそうなことは他の人に任せて、あえてスケジュールを入れないことです。私の場合、ある時期スケジュールが詰まっていないと安心できないこともありましたが、今振り返ればその時期はただ忙しいだけで、本質的なことに時間を費やせていたかを疑問に思うほどです。

 特に最近の企業間の競争では、商品の性能に加えて商品のコンセプトやサービスのデザイン次第で顧客に受け入れられるかどうかの価値が決まると思います。この傾向に対応するためリーダーが、会社の変革のための新商品や新プロセスを考えることに時間を費やすことの重要性は論を待ちません。

「ゼロベース」思考の奨励

 またリーダーとして「ゼロベース」で考え、さらに奨励される風土に変革することが必要となります。

 新しいことを考え発想することが、評価される企業風土です。環境変化が激しいので、その変化に追いついていくために組織として新しいことへの挑戦は不可欠で、競争上にもプラスに働きます。

 ゼロベース思考とは「それをやると、必ず失敗する」などといった、新しい発想を排除する既存の発想に凝り固まった論理思考と真逆の思考で、時間を前向きに使うことにもなります。

 リーダーは「それをやると、必ず失敗するよ」というような物知り先輩のコメントをやめて、「少しでも上手くそれを実行ためには、何をどうしたら良い?」といった問いかけを、部下に投げかける習慣にしてはいかがでしょう。リーダーが「顧客に今よりさらに当社の商品を選択してもらうには、サービス導線をどうしたら良いか?」など顧客視点を前面に出した質問を、部下に投げかけるのも方法です。「ゼロベース」思考から少しはなれられますが、これに応えるためには、社員自身が結構勉強し「考える」ことが必要になるはずです。

 このような質問をしても、すぐネガティブな方向に議論をむかわせるクセを持っている人がどの組織にもいるのが事実です。これは本人が悪いのでなく、これまでの経営のやり方からの蓄積で、そのような風土がなっていると考えるべきです。

 「ゼロベース」思考があらゆるところで芽をだし根付く風土に変革するきっかけをリーダーがつくることです。