園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

ありがとう

定着率を上げ、離職率を下げるために

Posted on 2013-05-16

函数の帰結

 「定着率と離職率は、社員の働く幸せ感、喜びの函数」です。

 これは私の20年の経営経験から得た結論です。

 離職には個々人のいろいろな理由があるにしても、社員に根源的には「わくわく元気」な環境をどれだけ作れるかに関係しています。

 私は「農耕型企業風土」づくりの「フォーミュラ」の中で、企業が中期的に成長・発展するためには、社員の幸せ環境作りが先決で、企業の成長と社員の幸せとの関係で原因と結果を逆にすべきでないと説いてきました。

 スタートは社員の幸せ環境作りにありです。

経営者の姿勢

 社員の幸せ感を醸成するには、経営層の責任でまず働き甲斐のある職場環境づくりをすべきです。この環境とは会社の諸制度、仕組、評価等すべてを言います。

 会社がうまくいかないのは「社員が仕事をしないからだ」等の言葉を経営者から聞くことがあります。

 しかし、原因を他人のせいにしてもリーダーとしての甘さを露呈するのみで、全く発展性がありません。経営層が社員を育てようとする姿勢が欠如していることと裏腹の関係であると私は見ています。

 やりがいのある仕事をさせれば、社員はさらに士気を高めレベルの高い仕事をする方向に向かいます。結果として、顧客は満足し会社の業績も伸び、社員の金銭的メリットも増加する関係となります。

 特に、社員数が少ない企業においては、会社の成長はまさに人、社員次第ということになるのが鮮明に見えてきます。

留意すべきステップ

 ここで留意すべきは、手順、ステップです。

 私の著した『これからの社長の仕事』でステップを明示しましたが、意外に短絡的な方法を選ぶ経営者が多いのに気づきました。いろいろな課題が吹き出し会社が経営上厳しい段階で、会社が「社員がどういう時に幸せ感を抱くか」のことを優先的に考えず、いきなり顧客満足の実現をスタートとして取り組むとどう展開するかを経験しました。

 顧客に良いサービスを提供するという大義名分のために、往々にして、最前線の社員に負荷が過大にかかることになります。教育もしていないのに最前線の社員に過大なスキルを要求し、レベルの高いパフォーマンスを要求していくことになりやすいのです。

 一時的にはこのことで上手くいきますが、結果として、最前線の優秀な社員の「燃え尽き症候群」が起きて悪循環をきたし、このステップが破たんすることに気づきます。気づいた時にはすでに社内の混乱が輪をかけて進んで行ってしまうという悪いパターンになるのでご留意ください。

 まず社員の幸せ感のことを十分考慮の上、適切なステップを踏むべきです。

「わくわく元気」感には「心」の問題が大きい

 人はどういうことで「わくわく元気」感を持つのかも配慮しなければなりません。

 金銭的報酬もある程度必要です。

 でも、あるレベルを超えると、「心」の面に対する面の方がはるかに大事です。仕事に対するモチベーションです。朝起きて会社に行きたくなる「わくわく元気」モードになるには、心にどう配慮するかがポイントとなります。

 日本人なら誰でも、どんなポジションの人でも人の役に立っているか否か、仕事を通じて自分が成長している感覚を抱けるか否か、仲間と一緒に仕事をして楽しめるか否かを基準に「わくわく元気」度が大きく変化するはずです。

 「人の役に立っているか」には感謝の気持ちを伝える声掛けに私は努力していました。小さくとも、本心から「ありがとう」が大事です。部下からの週間報告書に、自筆でメモして私の感謝の気持ちを「見える化」することも務めていました。

 実力より少し上の仕事をさせることで本人の成長感につながります。新しくマネージャーに任命された人には、「暫く、ボケッとしていなさい。現場のメンバーにいきなり口出ししないで、暫く仕事の様子を見ていなさい」と、上司が余計に手出し、口出ししないことも、注意していました。

 仲間との絆の出発点は上司と部下の信頼関係が基本です。これは毎日の積み重ねで、しかも仕事を通じて勝ちうるものです。部下からすると、先に述べた「心」の部分に対するストロークを送られ続けているか否かに関係していくと思います。

 これさえあれば、仕事のことで叱られても、本気で叱られたか、パフォーマンスで叱られたかがすぐにわかることになります。自分を成長させようと考えての叱りは部下から尊敬されます。

 上司や仲間と一緒に仕事をして、良い人間関係の中で楽しく仕事ができることが肝要です。