園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

キャリアディベロップメント

「変革」のためにどのようなリーダーシップを発揮していますか?(3)

Posted on 2012-11-29

前回からの続きです。

多様なキャリアディベロップメントへの対応

 社員の多様性にいかに対応するかが今後の「変革」にとって重要です。経営者やリーダーは、このことを発想しておかなければなりません。

 私が経営を任されていた時代でも、社員の価値観や要望が多様化していました。しかし現在は、さらにその速度が増してきているのではないでしょうか。

 例えば、アルバイト層の会社への入社動機です。以前はほとんどのアルバイト社員がある限られた目的を持って入社したと推測されるのに、最近は、必ずしもこの前提が当たっていないかもしれません。

 だとするとそのような人には「十把一絡げ」的な対応をすると感謝されないアンマッチとなることが多くなります。人事施策はこの状況に追いついていかなければなりません。

 複雑なことですが、顧客のサービス導線が多様化するのと軌を一にしていると理解した方が得策です。人が財産である限り、経営上の出口のみでなく、入口のことへの対応が遅れるわけにはいきません。

 他方、入社するアルバイト層へも世の中の状況を理解させるような指導をすべきです。今がどういう時代になっているかの客観的傾向を洞察してもらうことです。

 まず、高度成長の右肩上がりの時代はあまり期待できないことです。右肩上がりの成長の過程でいろいろなことが解決したこともあるかもしれませんが、今は、自己のキャリアディベロップメントは右肩上がりを前提にしないことが得策です。

 さらに、仕事の内容が専門細分化する傾向にますます拍車がかかっていくことを認識することがプロになるための生き方であることを彼らに学んでもらう必要があります。つまり彼らに、自己の専門分野に他の領域から他の知識を持った人が参入してくる競争リスクを最初から抱えていることを前提にした契約をさせるということです。

 より専門性の高い人に自分が代替されるのは当然のことと理解させ、理論など普遍性のあることを仕事の中で学んで、自分のプロレベルを上げていかざるを得ない仕事観を彼らが持つよう普段から指導することも「変革」のためのリーダーの仕事の一つです。

心を動かすメッセージの伝え方

 変革のためリーダーシップの発揮でいろいろなタイプの経営者がいますが、Why(理由)からHow(手法)へ、さらに、What(何を)の順に考え、行動する人が多いと言われています。Why(何故)からの発想です。

 私も期せずして、この形の発想を重要視して行動に起こしていました。

 「マーケティング・コミュニケーションサービスを提供するNo.1カンパニーになります。なぜならば、・・・」と、社員に具体的な個別の商品をアピールするのでなく、まずこの理由(Why)の「・・・」の部分から情報発信していきました。

 私は、志の内容を経営理念で明確に表現していました。

 理念実現のため戦略絵図と具体的作戦を示し、理解を得ながら組織を束ね、全社員に作戦を浸透させました。Whyを現実にするために、How(実現方法)を述べました。

 What(何を)するかは、あらゆる機会や場を利用して言葉で表現し、幸い、「6つの約束」(社長就任後のコミットメント項目です。詳細は、『これからの課長の仕事』に譲ります)を実現できました。

 経営を取り巻くこの行動原理が人間の脳の構造と関係することを、私は『WHYから始めよ!』(サイモン・シネック著、栗原さつき訳)から知りました。

 脳の外側の新皮質はWhatの部分に相当し、合理的で分析的な思考や言語機能をつかさどるといわれています。脳の内側の大脳辺緑系はWhyとHowに関係し、感情や行動、意思決定機能をつかさどっており、言語をつかさどる機能はないと記載されていますので、Why(理由)、How(手法)、What(何を)の順序で発信することが経営上も大事です。

 コミュニケーション方法として内から外に、つまり最初に相手の意思決定をつかさどる脳の内側の部位に訴えかけ、その後に言語をつかさどる脳の外側の部位に情報を伝えれば、感情による決定が合理的なものになっていく、プロセスを踏んだやり方となるという記載もあります。

 いろいろな会社のメッセージの伝え方を比較してみてください。変革のための社員に心を動かすメッセージの伝え方の参考になると思います。メッセージのWhyの部分で、その会社の理念に共感する顧客もいるかもしれません。

Whyの連鎖で考える

 いろいろな課題が発生してくると、その課題の原因よりもどうしても結果に焦点を当てやすくなります。結果はよく見えて誤魔化しようがありません。

 しかし、この結果は何らかの原因があって初めて出るものです。

 そこでWhyの連鎖で疑問を突き詰めていくと、その原因が少しずつ浮き彫りになります。この原因をベースに課題解決へ進むと、会社にとって生産的な議論ができることになるはずですが、実行を急ぐがために、このプロセスが尻切れトンボ状態になりがちです。素早く課題に反応することと原因をベースにした課題解決は、全く次元の違うものです。Whyの連鎖で変革を志向し、物事を根源から正す方が結果として早く終点に到達すると考えます。