園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

マーケテイング

マーケテイングの概念を少しでも先取りしていますか?

Posted on 2012-11-08

私が推進してきた経営をマーケテイングの潮流と重ねあわせてみると、ある意味で1990年代のマーケテイングの流れを、上手く先取りしていたことに気づきます。経営に携わる方々はご自身の経営の参考になれば幸いです。

人間臭い経営とマーケテイング潮流の変化への洞察

1980年代に入り、マイケル・ポーターなどによって競争戦略が経営的マーケテイングとして主張されだし、ROI(投下資本利益率)の尺度やミドル層のマネジメント技法が盛んに議論され始めました。

私も、経営をするために「4P」の原則やマイケル・ポーターの競争戦略を勉強しました。新しいマーケテイングの概念をタイムリーに勉強することができました。

しかし、何となくこれらの論理に馴染みませんでした。経営している企業の発展のためには、これらの理論が少し実態にそぐわないと感じたのです。

数字先行のテクニカルな議論に終始し、社員という人間の「心の部分」を忘れている印象を何となく持ったのです。私自身は社員の心や顧客の心をどう掴み、彼らと一緒に成長することが経営上必要で、それがマーケットの流れの変化であると感じていました。

ちょうどこの頃、私はある会社の経営を託されました。

実質倒産状態の会社を建て直すために志をたて、これを経営理念に定め、関係するあらゆる対境者を顧客とみなし、顧客とのより良い関係性をいかに実現するかの視点で、顧客のファン化のため「人間臭い経営」を意図的に進めていきました。

具体的には、事業のコンセプトの「軸」をぶらすことなく、賑わいの「場」をつくり、社員との垣根のない良好な「湿り気のある人間関係」をつくる一方、中・長期的な利益をあげることを目指しました。特に経営上、私は「社員をどう幸せにするか」を最優先に発想していました。社会の構成員としての義務を全うし、会社の品格を磨く努力をした結果、世間から一定の評価を得る会社になることができました。

マーケットの変化をいかに洞察するかは経営のセンスによるところが多いとは思いますが、懸命に生き残る、競争に勝つことを考えれば、自ずとその方向性を見いだせるものと思います。

顧客の声を聴くこと

1989年にアメリカは、自国の企業の優位性を保持するため、「マルコム・ボールドリッジ賞」という国家的制度を制定しました。

私は、顧客に焦点をあてた「マルコム・ボールドリッジ賞」のコンセプトがより体系的であることに気づき、当時幹部社員であった江頭さんとともに、とにかくその内容について勉強しました。米国で行われたセミナーに出席し、あるいは、デイスカッションに参加し、われわれ日本流の経営手法を紹介する機会も持ちました。

このマーケテイングの流れが、私の経営の流れと上手く同期していたのです。

ビジョナリーカンパニーの概念もこの頃言い出されてきましたが、ある意味で、既に私はこのような考え方を会社経営に取り入れていましたので、私にとっては特に目新しい考え方ではありませんでした。ハリーハンセンも顧客主義の重要性を主張してきましが、それまで私が経営上最重要と考えていた、「顧客の声を聞け」とほぼ同一の考え方であると自信をもちました。

当時私は既に、年令や性別などといった人口統計的特性で「売りたい人」を特定化してターゲットを想定するよりも、顧客の考え方や価値観から「買いたい人」が「その商品やサービスの何に魅かれているか」の「顧客の声」を大事にした施策を打ち出していました。

このようにみると、マーケテイングの流れを先取りしていたことになるかもしれません。

その結果として顧客主義を日本的に独自に展開し、「農耕型企業風土」づくりを徹底して進めたことが、以後の会社の成功につながった一つの要因だと今でも考えています。

その後、「1:1マーケテイング」(個別対応)が重要視されてき、これに対応すべく組織も「小さな商店とその経営者」の発想を取り入れ、少しでも個別対応を目指そうといろいろな方策もうちだしました。

マーケテイングの流れを少し先読みして経営を展開することがいかに企業の成長につながるかを実体験した次第です。