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モデル化、キーワード、因果関係、フォーミュラ

第151回 「農耕型企業風土」づくりを通じた経営構造を考えるにあたり取った思考方法

Posted on 2015-04-16

 今回は、物事の本質のエキスの部分をどう整理してモデル化するかについて、私の実体験を通じて紹介します。

 私は過去に経営を委託されていた会社を、幸いにして優良会社に成長させることが出来ましたが、あるファンドから彼らの意にそぐわないとの理由で、社長職を突然実質解任された経験があります。

 その後、ある会社の社長から「園山の経営」を是非、本に著わしたいとの意向を受けて、初めて畑違いの筆をとることになりました。最初に中堅管理者向けの『これからの課長の仕事』を、直後に、社長職にある人向けに『これからの社長の仕事』を書きました。

 本を書く過程で、私が主張する「農耕型経営風土」づくりを通じて会社を中・長期的に発展させる経営をモデル化し、この経営のフォーミュラを抽出、経営の「公式」を整理することができました。

 今回は、この整理の過程で私がとった実際の方法を披露しながら、物事の本質、エキスをいかにして見つけるかに関して述べ、皆様の参考にしたいと考えます。

 何故なら、過去私が執行した経営を深く考え、体系的に整理した同じ手法が、一般のビジネスマンが物事の課題設定をしたり、それについての本質的な解決策を探る手法に類似した思考をすることになると思うからです。

 

1.キーワード抽出

 経営していた頃、私が手書きをして社員向けに話した講話、研修、戦略などの内容が『折々の記』と題した6冊の本に整理してあります。

 この中から、私が目指す経営に関して重要だと考えるキーワードを沢山抽出して列記しました。例として、対話、聴く、賑わい、感性、行動、自由などなどです。

 

2.キーワードと経営目標間の因果関係図

 次に、経営の目指すビジョンや中期目標と上記のキーワード群との因果関係を推定し、それらを図式として整理しました。この段階では、余りに沢山の因果の関係図が出来て、自分でも迷うくらいの大きな図式となりました。

 

3.図式の整理とモデル化

 更にこの図式を経営するという視点で整理していくと、ある単純な「経営モデル」となりました。

 沢山の事象と関係線の中から、物事(現象)の表面のみならずその裏側に潜む経営要素が表わす構造を単純なものにモデル化しました。私が目指す経営の本質を自分にも「見える化」して経営構造を再現したのです。

 この時、表面の現象だけに拘り整理すると、数字などの結果のみに拘り過ぎ、それを引き起こした原因分析が疎かになることが非常によく分かり、経営に関する枝葉末節を省き、幹のみを抽出することに成功しました。

 

4.影響度の長・短

 このモデルから短期的に因果の影響を及ぼすものと、中・長期的に影響を及ぼすものに区分分けしました。

 それを人間に例えると、骨格部分とそれを動かす内臓部分の一枚の図式に整理できました。内臓を楕円で、骨格と四角で表現し、それらと目標への因果を矢印で表現しました。

 いろいろな因果関係があり複雑で未だ完全とは言えませんが、このような整理が、物事の動態的な因果の流れを明確にし、他のビジネス課題の解決にも十分使える思考方法だと自信を持った次第です。

 

5.フォーミュラ(公式)

 この過程で、私の目指す経営の「フォーミュラ」を考えました。「公式」と呼ぶものです。

 課題解決(目標の達成)に一番大きな影響を及ぼすものを捜していくと、その関係が、経営の本質を凝縮した「フォーミュラ」として整理できたのです。経営の筋の理想形が見えてきたのです。「農耕型経営風土」づくりです。経営に一番大きな影響を及ぼすポイントとなる因子です。

 ファンドの世界ではよくレバレッジという言葉を使います。何かに投資をする時に一番効果的な方法を言います。このレバレッジを見つけました。要するに梃子(テコ)です。何か重いものを持ち上げる時に、梃子の原理を利用して省力するように、目標実現に一番に効く作動支点を見つけることと同じです。

 社員が一生懸命に仕事をすれば会社の成果が上がるといった短絡的なことではなく、実は、その間に企業風土という経営構造全体に大きな影響を及ぼすものが、作動支点になる「フォーミュラ」を見つけることができました。

 

6.モデルの検証作業

 ほぼ概念図の本質が整理できましたが、そのモデルを動かしたら、実際にどうなるかを見る必要があります。現実の経営にフィードバックしなければなりませんが、私の場合幸いなことに、過去の実績とその時に採用した諸施策が『折々の記』に整理されて書かれています。それを年代順に遡っていくと、あたかも現実の経営に適用して検証できることになりました。

 経営記録に照らしてモデルの諸因子の効果を試すことにもなったのです。最初に考えたモデルに修正を及ぼす因子が本当に無いのかを探るプロセスとなりました。

 

 以上、私が経営を整理する時に使った方法を概略述べましたが、この方法はもろもろのビジネス課題を解決するにあって皆様も使えるのではないかと思った次第です。