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事業

第225回 後世になにを引き継ぐべきか

Posted on 2016-11-03

 戦争や大震災などの自然災害によって、人間の一生は予測のつかないことだらけです。人は誰でも、最後には人生の幕を閉じることになりますが、その時間の長さは神のみぞ知ること。そんな中でも、人間は精一杯の努力を重ねて生きています。歴史や記録に残る人もいます。小さいことでも良いので、この世に自分が生きた証の記念碑を残したいと願うのは、人のエゴの部分を除けば、人間として尊い行いではないでしょうか。

 

何を残すか

 内村鑑三は彼の講演、「後世への最大遺物」の中で、後世に残すものとして、遺産を家族や子供のみでなく、社会の遺すという意味で、まず「金」を挙げ、金を貯められない者は、労力を使って金に転換させる「事業」を、更に、「金」も「事業」も残せない場合は「思想」を残しなさいと、説いています。自身の思想を本(Essay of Human Understanding)にして、後世に思想も残しているとも書いてあります。ルソーやモンテスキューを通じてフランス革命に影響を与えたジョン・ロック等思想を残した例のようです。

 これら三つを遺せない人は、「勇ましい高尚なる生涯」を遺せると言っています。その内容は人により大きく違いがあるとしても、これは誰でも残せる遺物です。

 内村鑑三の言わんとすることは、私もその通りだと思います。努力をしたなりの成果や成果物が、社会で公平に評価される限りにおいてです。

 しかるに、今の世の中、必ずしもそうはなっていないのではないかと思います。だとすると、彼の言う順序を逆にして考えてはいかがかというのが私の考えです。

 

私流の残し方

 私流に言えば、「礼節を重んじ誠実で立派な生涯」を遺すことを第一義と考えたい。

 『礼節と誠実は最強のリーダーシップです。』(クロスメディア・パブリッシング)の中でもビジネスマンの事例を紹介しながら、このことについて述べました。

 次に遺したいのは、やはり「思想」です。

 著述や講演などで、若い人々に思想を注ぎ込むことです。私自身、「農耕型企業風土づくり」を通じて、企業を中・長期的に成長、発展させるための「フォーミュラ」と経営の「公式」を若手の経営層に説いています。ビジネスコラムも毎週アップしていますが、これを心待ちにされている方々がいると聞き、嬉しい限りです。若干なりとも思想に影響を及ぼしているかもしれません。

 約20年間の経営者としての実績で「事業」の礎を若干遺すことが出来ましたが、お金は遺せませんでした。しかし、「礼節を重んじ誠実に生きた生涯」と少しの思想を遺せるのは幸せです。

 最後に金を残す。それを転換して事業として発展させる。これは若手の経営者層にお任せするのが順番かなと、今では思います。是非、若手の方々、新しいことに挑戦して、「勇ましい高尚なる生涯」、「思想」、「事業」、「金」を残してください。順番は問いません。