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企業風土

第237回 継続的な成長を図るために不可欠な「経営力」(2)

Posted on 2017-02-09

 2017年1月26日に掲載したコラムの続きです。

「経営力」の強化のために、組織体のエネルギーを結集するためのポイントが本日のテーマです。

 

社員をはじめ組織体のエネルギーの結集を図る

 1月26日の前号に示した「経営する力量」の6)の部分、「社内のベクトルの統一とエネルギーを結集して実績を出す」について述べます。

 あなたが立派で遠大なヴィジョンを持ち、これを実現するための「経営目標」を設定して走り出したとします。そこで思い知るのが戦略や戦術を実践していくには社員や会社の関係取引先の協力が不可欠なことです。立派な戦略があっても失敗する事例が沢山あります。私自身も、社員のエネルギーを特定のベクトルに向けて結集できる力量こそ、「経営力」の肝の部分であることを、約20年の経営体験から学びました。

 国のリーダーしかり、組織の長としての会社の経営者しかり。彼らが構成員の「やる気」をどう高めていくかに腐心しています。強権的に特定の方向性に向かわせることは理論的にはありです。しかし、そのやり方で「勝ち続ける」ことは至難の技です。社員の心の中に「従いたくない」負の力が常に作用しているので、彼らの自主性やモラールが低くなる。これをリーダーが「社員が悪い」と勝手に判断し突然強権的に社員を異動する、リストラを実施する。ますます負のスパイラルに入り、勝ち続けることは絶望的になってしまいます。

 このような事態にならないようにするため、経営にあたって組織体のエネルギーを結集するには何がポイントでしょうか?

・まず、会社の「ヴィジョン」が社員の価値観と一致する部分が多いこと

 リーダーたる人は、社員の心に火を点ける、「インスパイア」する役目があります。火のつけ方にはいろいろな方法があると思いますが、まずもって、「ヴィジョン」の中味です。経営哲学で火を点ける。

 経営者の野望や夢は彼の個人的な価値観を反映したものであるとしても、ある程度の社会性を持つものが望ましい。ヴィジョンの中味に社会的に意義がある内容が多い時、価値観を共有できます。インスパイアされやる気を刺激され、初めて組織が一丸になって動き出します。

価値観の違う社員がたまたまその組織に参集して一緒に仕事をすることになる。考えてみれば、これはほとんど偶然です。彼らの価値観は多様なはずです。ここでその価値観が違うとしてもそれを変えさせるのでなく、ヴィジョンの中味自体が彼らの賛同を得るに値する内容に仕立て上げられているかがポイントです。

 一丸になって取り組むことになるヴィジョンの内容に社員の価値観と重なる部分が多い時、初めて社員がその経営哲学に賛同し彼らの共感を得られ、エネルギーの結集につなげることができるからです。加えて、そのエネルギーを、「どこに向かって、いつまでに、何をやるか。それを実現したら社員にはどんなメリットがあるのか」の全体像もヴィジョンとともに示すことが肝要です。

 このようなヴィジョンが策定されれば、目標に向かって戦略や戦術が効果的に実行に移せる社員のモチベーション醸成のイロハが出来たことになります。もし、経営者が自分本位で発想し自己の利益のみを考える、社員の成長やキャリア・デベロップメントをないがしろにするなどの発想があるとしたら、一般的にヴィジョンと社員の価値観の不一致部分が多すぎて、成長し続けることは困難となります。

 更に、社員の心を動かすヴィジョンの伝え方も工夫が必要となります。 これは経営者に限ったことではありませんが、多数の雇用責任を負うリーダーには特に必要なことです。

 いろいろな方法があると思いますが、私は、Why(何故)の部分から情報発信をする工夫をしています。Why(何故)を説き、次にそれを現実にするためのHow(実現方法)を丁寧に話す方が、理念実現のための戦略絵図と具体的作戦展開にあたり、社員に浸透しやすいからです。このWhyの部分を説く過程で社員の心に響くレベルが即分かり、共感を得るためのタイムリーな修正につなげることができるからです。

・「人づくり」の姿勢が具体的に見えること

 人づくりを簡単に言えば、社員を大事にし、社員とともに経営者も会社も成長するという基本的な考えが背景にあります。逆に、社員の成長のことにあまり配慮せず、経営者のヴィジョンや夢の実現に協力しがたい雰囲気を持った経営姿勢が見え隠れする会社が、継続的に成長をしている姿を見るのは稀です。その経営姿勢が、人づくりの具体策にも現れてきます。経営側が社員の成長を組織的に図ろうとしている熱心さが、見える形になっていることが望ましい。

 その時々の思い付きで「社員は大事である」旨の発言があったとしても、それを裏付ける教育・研修体制やキャリア・デベロップメントのプログラムの明示がない限り、そのうち社員はその言葉に全く反応しなくなります。むしろ、その言葉を聞くたびに、「また・・・!!」と心の中では反発を感じる社員も出てきます。

 この制度の形が見え、しかも確実に実践されている証拠が必要です。いろんな会社を見ると、意外にこの部分への注力を失念しているところが多い。 この制度やプログラムは一見会社の負担増に見えますが、まったく違う。採用、訓練、退職、採用、訓練の繰り返しのコストをはるかに凌ぐほどの大きなメリットがあります。

 会社のノウハウや知的財産の大部分は社員個人の頭の中に保存されている場合が多いとしたら、会社の発展は、優秀な社員の在籍期間、社員の潜在的なレベルの高さとその力を発揮できる機会の有無に左右されます。採用した社員が早期に一人前になり、更に高いレベルの仕事をできるほうが会社にとっても生産性寄与が大です。社員本人にとっても自己実現に近づく機会を得ることになり、彼らのモラールアップを通じて社員のエネルギーの結集に必ずつなげることができます。

・何か新しいことに取り組める機会があること

 社員は変化を求めています。ほとんどの仕事がルーチン化されている中でも、何かの変化を探しています。

 日々のルーチンの中に埋もれて流されている自分と、「これではダメだ。チャンスを見つけ更に成長したい」秘めたる意気込みを持っている自分との間にジレンマの中で葛藤しています。

 事業を経営している経営者も、環境の変化に対して、既存の事業や商品だけでは先行きの成長・発展に限界を感じている。新しい取り組みをしない限り、経営目標の達成が危ぶまれる危機感を覚えている。

 ここに経営側にとっても社員にとってもメリットがある双方をつなぐ一つの方法は、新規事業などの新しい取り組みです。

 環境の変化に対して、会社を変革しなければならない。そのために経営者はいろいろな新機軸を考え、手を打つことになる。これは社員の立場から考えると、変革の実践過程で自分が挑戦できる機会が訪れる可能性を察知する。会社か否かがもちろんすべての社員がこの分野に参画できないかもしれない。それでもよい。いつかは自分も関係できるかもしれないという期待、そのために今のうちに自己研鑽しておこうという意気込みが湧くかが、彼らのやる気の分かれ目です。何か新しいことへの取り組みが社員のモチベーションのアップに大いに寄与し、結果、エネルギーの結集につながります。

 新しいことの取り組みを続けている過程で、ゼロベースで発想し、新しいことを思考し、それが評価される企業風土が育ちます。挑戦することが尊重される企業文化です。

 逆に、「それをやると、必ず失敗するので・・・」といった挑戦を排除した消極的な発想の論理思考がまかり通る場合には、それに即した企業風土となります。ここでは社員のやる気が起きません。できれば「新しいことにチャレンジしてみたい。それを上手く実行するためには、隣の部門にも是非協力をお願いしたい」との前向きな議論ができる風土をつくりたい。社員のエネルギー結集に相乗効果を発揮するからです。

・「マネジメントの仕組み」があること

 社員は、「何時かは係長、課長になりたい、その立場で大きな仕事をしたい」と、思っています。営業、製造、間接部門を問わず、「いつかは自分も課長として・・・」と期待を抱いています。

 「否、私は、・・・」とそのポジションに興味が無さそうな発言をする人でも、その中の50%の人は言葉とは真逆のことが多いです。もちろん、子育てやいろいろな事情で、マネジメントの立場につけない人もいるのは事実ですが、大半の人は昇進したい、マネジメントの職に就きたい願望をもっています。

 しかし、いきなりなれない。最初は係長や課長たる上司に仕えることになり、そこで上司のマネジメントのやり方を見ることになります。上司が既存のマネジメントの仕組みをどのように有効に活用しているか、時代遅れの仕組みをどう変えようと努力しているかなどを、部下の立場で観察しています。すなわち、会社のマネジメントの仕組みが、自分が頭の中で描いている像かどうか、部下たる自分の成長を支えてくれるものかを見ています。

 マネジメントの仕組みは、会社の経営目標を実現するため、組織の中に組み込まれています。このように本来会社側の論理でその仕組みは作られている。しかし、会社側の論理のみならず、社員の自己実現をサポートする仕組みの視点が組み込まれているか否かが、社員のモチベーションに大きく関係していることを忘れてはなりません。

 その仕組みが、社員が頭の中で描いているマネジメント像の一部でも満たしてくれているか、逆に、いくら努力をしてもその努力がマネジメントサイドにネグレクトされてしまうかは、社員のエネルギーの結集に決定的な影響を及ぼすことになります。

・組織に新陳代謝を図る力があること

 会社が成長していくには、脱皮が不可欠です。脱皮しても従前と同じ形で現れるのでなく、できれば過去を捨てて違う形で現れたい。過去を捨てて、新しい視点に軸足を持ってくる、新しい形をつくることで新陳代謝して欲しいと、社員は願望しています。

 経営側としては、「捨てる」ものと「捨ててはいけない」ものとの峻別がまず必要となります。脱皮すべく「捨てる」には決断が必要です。

 この前提で、会社の組織を見ると、結構さび付いているものが見えてきます。環境の変化に対応した新しいノウハウが蓄積されてきているか、単に古いノウハウが貯蔵されているのみか、迅速に動ける現場主導の組織の仕組みになっているか、環境変化に鈍感な運営体制のままになっていないかなどなど。このように会社全体の組織の在りようを洗濯してみると、新陳代謝を怠っているものが沢山見つかります。

 これはどこの会社でもあることです。問題は、これに迅速に修正対応する力が組織としてあるか否かです。

 トップダウンでこれを実行する力がある場合は問題が少ないのですが、そうでない場合どうするか。社員の有志にかかってきます。困難な事かもしれない。しかし、それでも旧態依然になっている状況を熱く議論して、一人でもたくさんの賛同者を得ることで、少しずつ新陳代謝を図る。そのうち、流れが変わります。新しいものに入れ替える努力を応援する流れが優位に立ち、じわりじわりと効果がでてくる。トップをはじめ幹部社員を動かすことに繋がります。

・オープンなコミュニケーション環境があること

 限られた閉鎖的なメンバー間のコミュニケーションのみで満足している組織を時々目にします。甘えの構造がある組織です。別の言い方をすれば、既存の階層意識や村社会的環境の中での限定されたコミュニケーションをよしとして、外との開かれたコミュニケーションに消極的な組織です。ここで育った人は、逆にオープンな環境下では自分の地位の危険性を感じているのかもしれません。

 問題は、そのコミュニティーから外れている社員のモチベーションです。これは推して知るべしで、その人から会社の方針を一生懸命推進していこうとする仕事の姿勢と気力が段々失せてくるのは自然の論理です。

 上意下達のみでなく下意上達の双方のルートが円滑に作動するオープンな環境がある時初めて、組織にイノベーションが生まれやすい。イノベーションがあると、社員のやる気が湧く。この意味で、社員のエネルギーの結集のためにオープンなコミュニケーション環境が不可欠です。

 円滑なコミュニケーション・ルートを図るに当たり、幹部社員の多忙さが時に議論される。しかし、彼らの多忙さとオ-プンなコミュニケーションができないことは無関係です。経営者をはじめ幹部社員が閉鎖的な環境を排除しオープンな環境を尊重する姿勢とそのための具体的な行動が組織に根付いているか否かが、エネルギー結集のために問われることです。

 以上、このコラムでは「経営力」を高めるために、組織体のエネルギーを結集するためのポイントを列記しましたが、改めて人の上に立つ人の訓練と寺子屋的指導の重要性を痛感します。

 

 

第235回 継続的な成長を図るために不可欠な「経営力」(1)

Posted on 2017-01-26

 会社の成長拡大のためには、勝ち続けなければならない。個別の勝負で一回勝つことは簡単だが、勝ち続けるのは大変です。しかし、勝ち続ける時に初めて、会社が成長拡大するのも現実です。

 

勝ち続ける決め手

 それでは、勝ち続ける決め手は何でしょうか?ズバリ列記すると、

   a) 社長の覚悟に裏付けられた経営力の大きさ
   b) 壮大で、綿密な事業計画
   c) 組織の運営力
   d) 企業風土・企業文化

と考えます。

 しかも、これらの4要素が複雑に絡み合うことを考慮の上で、それぞれの要素を上手く展開しなければならない。そう指摘すると、スーパーマンでないと経営は上手くいかないのではないかと誤解する人がいます。決してそうではありません。これらの4要素の内容をしっかり把握しながら、少しでも理想形に近づく経営努力の過程こそが、結果として、「勝ち続ける決め手」を経営者が会得することになるのです。これが、経営の醍醐味です。

 

経営力とは

 まず、上記a)の「経営力」の部分について述べます。低成長時代になり競争激化の環境下でこそ真の経営力が試されると、言われます。

 ここに、経営力とは何でしょう。

 経営力とは、「経営する力量」です。具体的には、

   1) 将来の経営目標(灯台)に向かって確実に近づく意思をもち、
   2) 現状の分析などから他社との差異化を図れるドライバーを探し、
   3) 自社の強みを活かしたドメインと経営の方向性を決め、
   4) 経営目標など将来の姿を実現可能な戦略群と武器群に優先順位付けをして、
   5) そこに経営資源を集中的に配分する。
   6) 社内のベクトルの統一とエネルギーを結集して実績を出す

 力であると、私は主張します。

 

経営ヴィジョンを実現していく覚悟

 上記のうち、2)~5)に関しては、別途「事業計画」の戦略にふれる箇所で言及ことになりますので、ここでは、特に1)と5)について触れます。

 まず1) の部分、すなわち、経営目標に向かってそれを実現する意思に関する部分です。

 会社を起業した時、または、家業の状態から公の企業として脱皮をしたいと思う時に、経営者が必ず遭遇することがあります。そもそも「自分は経営で何をやりたいのか?」、「社員の力を結集できるのだろうか?」と悩みます。

 起業の時や、次の飛躍のために経営を抜本的に改革したい時、最初のポイントとなるのは、経営者がどんなヴィジョンを掲げ、将来何を目指そうとしているのかです。

 これに関して、現在若手の経営者層の経営指導を通じて私がいつも感じることがあります。

 「ヴィジョンが不足している」か、その「ヴィジョンに壮大さが不足しているな」と思う経営者が多いことです。ヴィジョンの大きさが会社の将来のスケールを決定する大きな要因だと考えている私からすると、この点は非常に残念です。現にこのことは日本のみならず、アメリカでも起きていると聞きます。MBAの学生では起業すること自体が目的化しており、将来何を目指して、どう社会での存在価値を訴えて貢献していきたいかの価値観が起業に当たって不足していると。

 他の国でも起きている現象かもしれませんが、我が国から立派な経営者が育ち、イノベーションを起こしていただきたい。

 経営者自身がやりたいことは、最初は野望や夢と呼ばれるものかもしれない。また、最初はまとまった言葉になっていないかもしれない。それを文字で書き落としていくうちに、少し洗練された言葉や内容ととなり、世の中で一般的にヴィジョンと呼ばれるものとしてまとまるものですが、問題は、それを実現していく覚悟です。

 ヴィジョンを実現するために、「経営目標」、すなわち、「x年でxxをやりたい」などの具体的な目標設定が重要です。しかも、その目標は、「何故(Why)」、「どのような方法(How)で」などの肉付けされたものでなければ組織体の多数の賛同を得られません。

 私は「経営目標」を灯台の火に見立てて話す場合が多いですが、大海の荒波の中で会社という船をどうやって限られた時間内に灯台に到着させられるか、経営者として不退転の覚悟がなければなりません。世の中の優秀な経営者をみると、皆覚悟が違います。艱難辛苦に遭遇しても、いろいろな脅威や苦しい環境を克服する心の強さを備えています。

 すぐひるむ、すぐ目標を変更するような度胸のない経営者では、経営力の入り口のところで失格となります。

 「経営目標」の具体的な内容については、個々の経営者の価値観によるので千差万別ですが、社会の変革に寄与するような目標は貴重です。経営者本人がやりたい、実現したいそのヴィジョンを数字目標も加味した「経営目標」として設定した以上は、これをやり抜く覚悟を持つことが、「経営力」の入り口と考え、勝ち続けるために不可欠な要素です。

 

第228回 退職しそうな人の心の置き方

Posted on 2016-12-01

 退職しそうな社員の説得を、私は何十回と繰り返しました。

 何とか、会社内で頑張ってほしい、この一心で説得を繰り返しましたが、上手くいかないことも多くありました。

 今自分流に納得することは、結局その人を取り巻く人間関係などがきっかけとなって退職に至る場合がとびぬけて多かったということです。その社員のポジションによっては、社長の立場では状況が把握しにくいがため、本人が人間関係に苦労していることに気づくのが遅すぎたことが、上手く説得できない主たる理由でした。

 

経営側の責任

 それでも会社の経営者として、いろいろなことに努力をしなければなりません。

 下意上達のコミュニケーション環境を改善する、戦略の魅力を増す、給料を上げる、仕事に面白さを出す、キャリアアップのプランや筋道を示す、自己実現を目指す機会を与えるなどなど。

親の会社を引き継ぐなどの特別な場合は別として、これら以外に退職を引き留めるため経営側として本当に重要なことは、できる限り良好な人間関係が蔓延する企業風土をつくることだと考えます。私もこのことに気づき、早くからこの対策に腐心し企業風土で差異化を図りました。

 

退職しそうな人の心の持ち方

 上記のように、退職防止には会社として経営側の責任が当然大きい。

 しかし、今回は、もう片方、退職を希望する側の社員個人として何かできることがないかに焦点を当ててみます。経営側が重要と思う企業風土づくりに参加する社員側の退職しそうな時の心の置き方の部分です。

 ほとんどの社員が、人間関係が悪くなると心が不安定になる。仕事ぶりにも表れます。退職を考えている頃は、なんとなく投げやりな仕事の仕方になります。

 心の不安定な兆候は、週間報告書(週報)など一週間の仕事の内容を本人が上司へ報告する書類の書き方にも表れます。会社や部門の欠点、改善点をすごく詳細に並べ立てて一見改革に資する内容に見えるところが多いが、問題は本人がその景色の外にいる内容であることです。それでも、何かを訴えるものが多く見られる。

 ここで上司が異変を察知すれば退職を食い止められますが、それを過ぎると、本人の決意が固くほぼ無理だということを、私も長年部下からの週間報告書を読み続け、そのパタ-ンに気づきました。

 退職を考えている本人は、自分の退職のきっかけや原因を当然探す、しかも、自分でなく他の人に原因を探すくせがあります。心の持ち方が完全に片方にブレてくる傾向が出てきます。

 冷静に考えると、彼が原因を外に探すよりも、自己の目標実現に向かって人間関係を良くするためには何か自分に出来ることがないかを探すのがポイントなのに、なかなかこれに着目しないのが一般的です。

 上司との相談では格好良い説明をしても、本心では、他の人に原因を探してしまいがちです。

 

より上位の軸での行動を起こさない

 誰でも、自己実現や自己のレベルのアップなど何かの目標をもって仕事をしているはずです。したがって、本人にとって最も重要なことは、本来その目標の実現にあるはず。目標の追求のための努力以外のことは、よりレベルが下位の存在のはずです。

 ところが、心が揺れていると、そこの軸に焦点を当てないで、相手が悪いという下位の軸で物事を考えやすくなります。

 相手が悪い、誰がどうした云々よりも、本来目指す目標に向かって自分の心を変えることで人間関係が改善され、より良い人生を歩めることに気づいていません。行動に反映されません。

 もちろんこれを超えるような不満が会社の経営自体にある時は例外ですが、これに努力する方が本人も組織にとっても遥かに有益であるのに、そのような行動に移すことをしないのです。

 

究極は、自分の心の置き方を変え、行動する

 何かの行動をする時には、誰でも自分で暗黙裡に判断の選択をしています。こと人間関係に関して言えば、自分が置かれている状態に満足しているかが判断の基準になると思います。

 満足しているとすれば、通常、本人は良しとして、退職の文字が頭の中で重要な位置を占めるようなことはないと思います。

 もし、その状態に不満である場合は、退職のルートに行かない最善の方法は、目標を実現するために自分で良い人間関係を維持できる方法をまず考え、次にこれまでとは違う別の行動を自ら起こすことです。これしか、究極の解決策はありません。

 すなわち、自分の心の置き方を変えることだと考えます。自分に正直に向き合い自分をごまかさず、在りのままの自分をまず客観視する。そうすると周囲の人が違う見え方をします。彼らは必ずしもあなたに敵対的ではない、彼らも自分の目標を実現するために周囲と良い人間関係が築けないかの努力をしている。彼らの良い点が少しずつ見えて本人の人間関係も改善してきます。

 彼らの良い点を評価し周囲の人を信頼して、自分がその人の仕事目標追求に役立つことは何かに気を配る行動を起こしては如何でしょうか。心の持ち方と考え方に余裕が出てきます。

 判断の軸として自分を正直に見つめるところに置く。それから他の人の課題の解決に役立つ自分の役割を見つけ行動するところから始めることになります。

 

会社を自滅に導かないために

 会社での議論もこの心の置き方が参考になります。自分の仕事が上手くいかないと、必ずこれを外の理由からアプローチする人がいます。このような人は実は成長が遅い。もっと課題を自分自身の中に見つけて、自らの心の持ち方を変える勇気が必要です。

 私もこのようなタイプの経営者を知っています。経営が上手くいかない。それを、部下の社員や資金を供給してくれている株主の介入のせいにする。結局、経営につまずくことになります。自分を客観視する姿勢が欠如し、すべての原因を自分以外の他の人のせいにすることで、最後は自滅状態。

 こうならないようにするために、少しはヒントになったでしょうか。

 

経営者が成功するための条件

Posted on 2014-01-09

 私は、経営者の成功にはいかに良い企業風土を造るかにかかっていることを体験的に知っています。

 ここに言う良い企業風土とは、経営者のためにというより、どちらかと言えば企業集団に参加する社員のためにと考えられたものであることが適切です。

 経営者一人のエンジンで会社を動かすより、多数の社員が「燃える集団」化してそれぞれの社員が自己の裁量で判断し行動するエンジンを、どれだけ多数もっている企業風土となっているかがキーと考えます。日本の経営者の皆様、頑張ってください。

 経営者が成功するには、商製品の革新性は当然のこととして、経営者と社員との連帯感が不可欠です。

 こうなるためには、経営者が社員の共感を呼べる経営哲学、経営動機を持たなければなりません。単純に金儲けをしたい、では社員の共感は得られません。その企業が、社会のためにどんな貢献ができるかを明確、かつ具体的に社員に伝えなければなりません。このメッセージには起業の動機に社会性ありやが問われます。これは経営理念や社是等の言葉で表現されることが多いのですが、ホームページ上や額に掲げられる文言の背後に、どのような真実があるのかが不可欠となります。

 私は経営再建時に、「とにかく会社を倒産させないように」と歯を食いしばって頑張りました。その過程は別の項で述べる機会があると思いますが、社員が「燃える集団」と化していくのがわかりました。経営理念の内容と経営目標を社員と共有したことが負け犬根性の払拭につながり、あらゆる社員が営業をしていたことを思い起こします。

 社長の私は当然として、間接部門、直接部門等関係なく10円の積み上げを行うためにあらゆる発想で稼ぐ行為をしました。また、多様性、ダイバーシティーを重視し、異なる発想を奨励してイノベーションにつなげました。そのことは業界と言われる中で旧態依然たるビジネスモデルを変えることにつながっていきました。

 特に、新しいマネジメントのイノベーションを試み、成功しました。自らが知恵を絞って儲けるためにどうするのかのマネジメントを考えるために、垂直形から平面型、顧客接点多様型にマネジメントを革新したのです。当然、顧客を知ることから出発しなければなりません。本の中に出てくるマーケテイングの格好良い言葉などどうでも良い。要は、顧客が何を欲しているかを肌で感じ知恵を絞らなければなりません。

 小グループ制を採ったことで、グループの長の柔軟な発想を呼び、素早い行動が出来ました。今でこそ当然の方策ですが、小グループ制のもとで、グループの経営をそのグループの長に任せ、マネジメントの自由度を増し、彼の裁量の下に経営できる中間層を育成しました。この規模のグループだと部下の隅から隅まで面倒を見られるので、血がかよった経営につながり、「わくわく元気」な組織になります。

 

継続的に伸びる会社は何が違うと思いますか?

Posted on 2012-10-11

 私が経営にとって重要なポイントと日頃考えるところがあります。

 「これからの課長の仕事」、「これからの社長の仕事」(ネットスクール出版)の中で「農耕型企業風土」づくりで会社を成長させるための「フォーミュラ」について述べ、そこでポイントを説明しましたが、今回は継続的に伸びる会社のポイントを違う側面から言及します。

チームの中で活きる個々人の能力アップ

 第一に、社員一人一人が自主性と能力を持ち、それぞれが機関車の機能を全うできることです。個々の社員がエンジンを持ち、部隊を引っ張っていける能力を持つことです。

 その為には、詳細は前述の本に譲りますが、個人の能力をチームとして発揮できるようにする「企業風土」づくりが必要です。

スピードある行動力の維持

 第二に、組織風土としての駆動力、行動力が必要です。環境、技術革新やマーケットの変化への、企業の迅速な対応力と言ってもよいかもしれません。

 経営戦略を描くことも肝要なことですが、オペレーション上齟齬がなく実行(行動)できるということが担保されない限り、利用者への訴求力は弱まります。企画が実行された段階ではじめて様々な顧客のリアクションが出てくるからです。

 時に、企画自体の変更や、サービスプロセスの高いレベルの変更を余儀なくさせることになるかもしれません。スピードをもった行動力で変化対応する柔軟な組織風土が企業を救うことにつながるのです。

特色ある仕組みをプラットフォーム化

 第三に、すばらしい特色ある「仕組み」をつくることです。システムも含めたいろいろな仕掛けを仕組みにすることです。

 自社のサービス商品提供のためこの仕組みを最初につくるとしても、ゆくゆくは自社以外の他社を含めて共同で利用できるプラットフォームにすると、更に会社の持続的な発展につながる考え方もあります。小さい会社にとっては非常に難しいことですが、第三者が魅力を感じるほどの仕組みやプラットフォームでない限り、その会社の差異化につながらないという意味で難しいことなのです。

 その仕組みには通常経営理念やノウハウを具現化する自社の企業風土を映したノウハウや特色が鮮明にでてくるはずです。手の内を開示するわけですから、ここで自社のノウハウをオープンにして第三者の共同利用に供するか否かの経営判断の岐路に立ちます。したがって、自社の企業風土やノウハウを背景としたプラットフォーム(仕組み)を共同の利用に供する判断は、相当な自信がないとできない相談で、そう簡単ではありません。

 要は、それぐらい素晴らしい仕組みでない限りその企業の持続的成長を支えることができないので、「仕組み」に大きな特色をだすことが重要です。

「個」より「全体」を売るサービスのデザイン

 第四は、サービスのデザインを設計し、商・製品をその中のサービスの一部としてとらえるべきことです。デザインの中にサービス重視の考え方を活かすことです。

 企業が売りたい商・製品を押し付けがましく店に並べるのでなく、顧客がその商・製品を手に取り、自分の生活空間の中での利用シーンを思い浮かべるような、利用シーンの各フェーズで利用者の願望や要望をどうサービスのデザインの中でどのように実現していくかを念頭に置いたサービス・デザインにすべきです。

 こうするとサービス導線全体の中で、その商・製品の持つ個の価値より、さらに付加価値のついた全体を利用者に提供できるものになります。すなわち、経営の中に需要側のデマンド・オリエンテッドの視点を積極的に取り込むことにつながります。

 iPodなどは、楽曲、店舗、第三者のアプリ、電子書籍などのサービス全体をデザインすることで単なる単体商品より、全体として付加価値の高いサービス商品を利用者に提供することを、初めから戦略として狙っていたかもしれません。