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経営

第264回 ブランディングと経営(2)

Posted on 2017-11-23

以下、前回からの続きです。

 

3.「何でも屋」から脱却する

総合力は一見、力の象徴に聞こえます。

しかし、現実には、これが魅力をボケさせる原因の一つです。今は、何かの専門性こそが人を魅きつける。デパートのように沢山並べ立てるのでなく、最も大切な点のみを絞って訴求する。ホームページや宣伝物で「これもできます」、「あれもできます」は魅力を感じない。何を強調したいのか、そのシンボルとしての一点に絞り込んで打ち出していくのが最善のブランディング策です。

このため、「強く勝ち続けるブランド」をつくるには、「引き算の発想」を持つことです。特に、経営資源が乏しい経営ステージでは、この作戦、「何を捨てるか」が有効です。「何でも屋」でなく特定のことで尖がった強みを強調することが、ブランドを築く近道です。

「何でも屋」になっていないかのテストとして、「xxといえば○○」のxxに自社の名前を入れてください。○○に顧客が何を入れるかです。みんなで試してみてください。

意外に顧客は正直であることを知ります。会社がどんなに沢山の綺麗ごとを並べても、顧客は勝手にその会社に特定のイメージを持ってしまっています。会社が顧客に言ってほしいと思っていても、顧客はその言葉を○○に入れてくれません。ここで「勝手に」と表現しましたが、実はそれがその会社の過去の活動や情報発信、すなわち、ブランディングの蓄積であることを忘れないでください。その意味で最初にどの専門性を想起・着手されるブランディングにしたいのか、経営の一環としてブランド形成の考え方が重要です。

 

ブランディングの効果

ブランディングの定石は「非価格戦略」です。

経営の定石で私自身が最も重視するものと重なります。価格でなく価値で顧客を引き付ける。この発想で戦略をたてていました。コモディティーの仲間入りで、結局「低価格競争」に巻き込まれることを回避するためです。

ブランドを強化すると、高い価格でも購入したい消費者が増えるので「プレミアム価格」で販売可能です。かつて私が経営していた会社で提供したサービス商品がこのパタ-ンでした。ブランド化に成功すると、「高いものは良い商品」のイメージが働き顧客が感じる「品質レベル」が高くなる心理的効果を一部反映するからです。安心感と信頼度も増してきます。これらを励みに、更に品質の企業努力を重ねていく。ブランドの実質レベルが更に上がることにつながります。

勿論、顧客の品質の感じ方は微妙です。ある種の心理的錯覚が働く部分もあります。

佐賀関の「関サバ」と対岸の佐田岬の「岬(はな)サバ」は実際何が違うのでしょうか。同じサバかもしれません。

また、同じワインでも、価格が高いと美味しく感じることがあります。

これを「ワインが美味しいか美味しくないか」の内的認知と「価格が高いワインを飲んだ」という外的認知の間にもし矛盾が発生した場合、人間は「無意識につじつまを合わせ」ようとするようです。このことの論理的背景がある本で社会心理学者、L・フェスチンガーにより説明されていました。

既に飲んだワインの味を価格に合わせて無意識のうちに高価格のワインが美味しいと変えてしまう論理です。

嘘をつき続けるとすぐしっぺ返しが来るので、そうならないように企業として普段の実質的経営努力を重ねなければなりません。

このような心理的錯覚も加味して、ブランディングは、「非価格戦略」に大きな効果を発揮します。錯覚があるからと言って、

 

ブランドの構築 

会社が「こうありたい!」、「こうなりたい!」と描く「経営ヴィジョン」の一環として、ブランドの構築面では自分の会社や商品がこうなって欲しいという「ブランド・ヴィジョン」を描く必要があります。中小規模のほとんどの会社では社長が描くもので、「経営ヴィジョン」と連動したものになるはずです。

この描き方にはいろいろ方法があります。会社の経営戦略を反映することになります。

一つの方法として、そのブランドから連想される人間的な特徴を組み合わせる方法があります。これは顧客の眼を魅きやすい。

あまり評判のよくないものも最近見見受けられますが、「ゆるキャラ」もこの方法の一つです。擬人化してそれに名前をふし、そのキャラクターにパーソナリティーを持たせ、消費者の感情や情緒を刺激するものです。上手くいけば、競合に対してより優位なイメージを顧客にもたせることができます。顧客がこの商品を利用する時に、より身近に感じる確率が高いからです。

また、顧客に必須条件を示せるものにする方法もあります。その商品をその人が持つべきですと、主張できるものにする方法です。

例として、友達といつでもつながるiPhoneのベネフィット、PC端末の魅力的なデザイン、飛行機チケットの価格などで、「あなたがその商品を持つべき」ことを強力に主張していく方法です。この「持つべき」ことを呈示できることは、商品の「違い」、「差異」を出せるからです。こうなると、単にブランディングとして顧客にとって望ましいだけでなく、その会社が経営上成長するための非常に有効な手段となります。

 

顧客から学ぶ

ブランド構築のアイデアはどこから入手するのか。

先ほどのベネフィット、デザイン、価格帯の「差異」も、顧客から学んだはずです。

ブランド化した商品をみると、それを購入した顧客の購入状況、利用の便・不便の様子を観察することから始めているはずです。

理想的には、顧客と一緒に生活するのが最適です。そこから学べるからです。それが無理としても、出来る限り実利用の場面からうる情報を活かすことです。「顧客の声」(Voice of Customers)です。そこから得る彼らの利用方法こそがブランド構築の源泉です。ビッグデータやAIなど最近のデジタルの武器を十分に利用して「顧客の声」をブランディング形成、そして、経営戦略に活かしてください。