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規制

起業と環境変化の客観視(2)

Posted on 2013-11-21

前回からの続きです。

環境を客観視したうえで狙いを定めたら起業にあたり次のことをアドバイスします。

 

起業する人へのアドバイス

 

ある程度の統計や分析を終えたら、自分のインスピレーションに従うことです。

 実は、これがその人がその事業に注ぐ執念の深さに関係してきます。大企業発の新規事業ならたくさんの分析資料がサポートしてくれると思いますが、一般の起業にはこのようなことは望めません。本人が「これだ!!」とインスパイヤーされたことに全精力をつぎ込むことを勧めます。

 次に、インスピレーションが湧いたら、そのアイデアを、スピードを持ってまずは行に移すことです。実行してみて、上手くいかない場合には柔軟に計画を変更すればよいのです。考えていくうちに不安になることが沢山あります。「ああなったら、こうする。こうなったら、ああする」と考えているうちに、他の人に先を越されることにもなりかねません。スピードが勝負です。迅速な判断力が問われることになります。

 迷う起業家の大半は、自分の置かれた逆境から、その起業のタイミングを悩みます。資金がない、マーケットが明確に見えない、一緒に立ち上げるにあたり人材が不足しているなどなど、数えたらきりがありません。しかし、これが現実です。この逆境を如何に自分に有利に持っていくかで、事業のやり方はいかようにでもなります。

 資金がなければ、これを募る方法を考える。マーケットが明確に見えるような分野には大手の企業がすでに食指を伸ばしているはず。一緒の立ち上げる人は、当然企業する人の本気度を見ているので、初めから人材などいるはずもありません。このように置かれた状況を逆手に捉え、逆境を乗りきるという発想に切り替えることです。

 

起業環境への支援

 上記のような起業ができても、海外の起業環境と聞き及ぶに、日本の起業のサポートには未だ環境が不十分だと思います。是非、国を挙げて改善策を打ち出してほしいと思います。

・新しいことへの取り組みの挑戦は、大企業の新規事業部門でもその取り組みは旺盛です。しかし、これらの挑戦の件数でみると、ほとんどは小さな組織から生まれることが多いと考えます。だとすれば、もう少しこれらの小さな組織に焦点をあてた施策や活性化策が政府や地方自治体から出てくることを望みます。

・また、特定の分野以外では規制を大幅に撤廃し、市場の原理にまかせるベンチャー的自由な活動を応援する施策を国として強力に打ち出していただきたいものです。

特定の分野の定義づけは利害関係者によって違い、かつ難しいものです。だからこそ、政府がこの国の将来像を明確に示し、そのために守るべき特定分野を提示の上、国民の議論を重ね決定し、それ以外の分野では自由な競争を促進すべく現在存在する各種規制を撤廃・緩和すべきと考えます。

・税制などの過去の失敗の反省の上に、初期投資資金の出し手が動きやすい投資環境に規制を緩和することも必要です。ベンチャー資金の供給と言いながら、その資金を本当にベンチャー的投資として起業人が使える状況なのかも真剣に考えてみるべき時期です。

・最後に、起業家自体への教育研修、特に、新しい分野への取り組みの周辺応援体制の充実も必要と考えます。

企業は、社員、顧客、株主の順にそのニーズを考えるべきだとすれば、起業家は社員が会社の一員であることに誇りを感じる経営をめざし、あらゆる機会を捉えて社員の話を聴き、最前線の社員に皆が協力し、このために良いチームワーク作りを心がけることなど、起業家に対する基本的な教育研修が不可欠です。

働きにくる社員たちは、それぞれ自分の生活をエンジョイする手段を求めてきているという意識を忘れない、彼らを会社の犠牲にしない高邁な企業マインドを教え込むことが不可欠な段階だと考えます。

バージングループのリチャード・ブランソンの言葉です。「会社は人の集まり以外の何者でもない。人材こそ財産です。」と。

 

 

 

 

起業と環境変化の客観視(1)

Posted on 2013-11-14

日本の若者にはどんどんイノベーティブなことに挑戦して欲しいと思います。起業もひとつの大きな挑戦です。

 私の友人にも今起業を考えている人がいますが、挑戦するにはまず、本人の得手とする分野のノウハウ以外に、マーケット全体がどういう流れになってきているかの潮流を見極める必要があります。安倍政権が「成長戦略」を打ち出してきています。国際環境の変化に対して、国レベルでも政策において新しい取り組みが不可欠だとの認識からですが、実はこれと同様に、環境の変化に対してどのような新規の取り組みに挑戦するかで起業人の力の発揮度が大いに変わってきます。

まずこのマクロの環境変化を私なりに客観視してみます。

 

マクロ環境変化の客観視

1.日本が過去10年以上デフレに悩んでいる間に成長してきた国々が沢山ありますが、これらの国々、特に中国や南米の一部の国、過去の成長を謳歌していた国々の経済に、一部陰りが出だしてきたことです。

陰りに至る背景は個別の国で違いがありますが、総じていえば根本的な課題解決に向けて国家レベルでのタイムリーな政策の打ち出しが失敗したことかもしれません。中国の金融政策などはこれに属する部分かもしれません。

2.国際決済については未だドル建て、ユーロ建てが多い中で、対ドルと対ユーロの円為替相場が、2013年の春、日銀による円通貨供給増の決断と実行や、海外の景気動向の変化により、円に関係する為替相場の動きに大きな変化が出てきたこと、かつ、この潮流がひとつの流れとして定着しつつあることです。

過去には異常な円高で、貿易立国である日本の輸出産業が大きな痛手を蒙っていましたが、輸出型企業にとっては過去の状況に比較して、より有利な流れになってきました。このことが、先ほど述べた円通貨供給量の増加によって日本全体の景気の底上げに貢献してきています。

3.高付加価値の部品産業が一部日本国内で目を覚ましてきたことです。過去、主要産業とともに海外の安い労働力を求め海外移転した部品産業の一部が、その主要機能の一部を日本に戻し日本国内での事業展開を充実する傾向が出始めたことです。

そうは言っても、この10数年の間に日本国内の設備は老朽化してきています。これを新規の最新設備に更新しない限り競争力が伴いません。幸いなことに、安倍政権がかかる新規投資に対して税務上などの優遇措置を講じるという報道がなされていますので、これが実現すれば、競争力を持った部品産業の、日本国内での展開に新たな動きを見ることにつながります。

結果として、それが日本の国内需要創出につながることになります。

4.新しい商品と新しい消費者が登場しつつあります。経済理論的には当然のことですが、日本が貿易立国だとしても輸出のみでは食っていけません。国内での消費需要が増大しない限り、日本は元気になりません。iPad、iTunes、iPhoneのような新しい商品に対して、新しい企業や消費者が少しづつではありますが国内で登場しつつあり、新しい商品に対するアプリの開発、新しい利用方法の開発、それを利用する新しい消費者の登場が国内の消費需要に貢献する傾向が出てきました。

2007年から5年間で上場企業が50社未満であったのに、ここ最近、新しい名前の企業が新しい事業を株式市場に上場させる流れが出てきたことを株式市場が証明してくれています。起業マインドが少しづつ旺盛になりつつある証拠かもしれません。もちろん、中国や米国での起業の勢いよりは劣ります。しかし過去の傾向が確実に変化し新しいことへの挑戦意欲が出てきつつあります。

また、日本の社会が急速に高齢化してきていることも着目すべき事実です。この高齢化した新しい消費者の登場に対して何を提供できるかは、挑戦し甲斐のあるテーマとなってきつつあります。

5.国内で起業する人も多くなってきましたが、同時に海外で起業を目指す日本人が増えてきています。投資機会、賃金、制度上の自由度などいろいろな理由があります。

海外での起業する傾向の増加は、皮肉なことに投資機会、制度など日本国内でのそれらとの間で一部競争条件が働くことで、日本国内の諸制度の改革に向けて日本政府を動かすことにつながる望みもでてくるかもしれません。

新しいことに挑戦するにしても、どのようなところに狙いを定めればよいかです。

 

どういうところに狙いを定めるか

それでは、このようなマクロ環境が変化する中で新たに起業するには、どういう分野に狙いを定めれば良いのでしょうか。

私が今起業するなら次のようなことをまず考えます。

a)    「業界」と称されていないような分野や市場を狙うか、あるいは、業界を根底から揺さぶる機会を狙うことを、まず考えます。 市場がある程度飽和状態になると市場の秩序維持のために「○×業界」としてくくり、ここに協会をつくる傾向があります。飽和されていない所に新たな商機があるとすれば、「業界」と称されないところを狙うか、固定観念で固まった業界のビジネスモデルを根底から変革することを考えます。

b)    その分野の収益モデルが確立されていないところを狙うことを次に考えます。 一般的に、「業界」と「収益モデル」がリンクされることが多いのですが、リンクしていなくても既存の収益モデルと違うものを持ち込みます。ここに新たな「ビジネスモデル」が生まれることになり、起業メリットが活きるからです。

c)     しかも、既存のノウハウのみでなく、新たなノウハウや革新的技術開発を伴う分野を狙うことも考えます。既存のノウハウのみで戦うより、上記のa)やb)を考えればイノベーティブなオペレション、製品、商品やビジネスモデルは、新しいノウハウや技術との組み合わせにより将来展望が大きく変わるはずです。ノウハウは技術の混合から新たな切り口を見出してくれるはずです。この意味で普段からなるべく異分野の人々との接点を持ち、彼らの知恵、ノウハウ、技術との組み合わせを狙うのも大きなチャンスと考えます。

アップルが2011年発売したiPhone4S以降に使用が可能になった「Siri」と呼ばれる音声を利用したアシスト機能がありますが、9月に友人と会ったとき友人のスマホで試してみました。優れものです。「・・・を検索してください」等の指示を音声で端末に発するとSiriで実行してくます。

私の友人の一人もこの分野で会社を設立し頑張っていまが、このArtificial Intelligenceと呼ばれている技術との組み合わせがモバイル・インターネットの分野で極めて重要な分野になると思う一例です。この技術が我々の世界を変えることになるかもしれません。このように革新的な技術は世の中に沢山あると思います。それを何か他のものと融合させることで新しい分野を切り開くことになるかもしれません。

d)    既存の人材群以外の新しい人材層との組み合わせが必要な事業分野を狙うことです。ネットとリアルの融合で、違う人材群の組み合わせが発生します。これまたスマートフォンの登場がこの背景にあります。企業側は、クーポンの発行、電子決済システム、ゲーム性の組み込みなどいろいろな仕掛けで消費者を囲い込む計画を増やしてしていますが、他方それを使う消費者側は、様々なサービスを使って消費生活をエンジョイする志向を持っています。

特に、自宅でネット上で商品を閲覧し、ある程度の選択をした後、実際に店に出向いて、スマホ上で取得するクーポン等を利用して、割引で購入する層が確実に増えてきている傾向を考えると、Webを中心に発想展開している会社は、さらに顧客をファン化するためにもインターネットからリアルに顧客を誘導するOnline-to-Offline戦略を展開せざるを得なくなってきているのが現状です。ネットとリアルの融合です。

私が関係している会社でもこの傾向が出てきています。主としてネットで教育コンテンツを配信していますが、問題はネットとリアルを連動させて学習する人の時間の流れをフローとしてどのようにして全体把握し、如何に顧客に学習の楽しさを体験してもらうかの知恵が必要となっている段階です。キーワードはやはりOnline-to-Offlineです。