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農耕型企業風土づくり、フォーミュラ、定石

忠誠心と企業の業績

Posted on 2014-05-01

 2014年4月21日の日本経済新聞の「経済教室」欄で京都大学の若林直樹教授が「忠誠心と業績向上」の関連について述べられていました。

 このような欄での説明なので、内容が自説の主張と言うよりどうしても教条的、多面的になるのは否めませんが、先生は結論として、「忠誠心と業績向上」の点を以下の三つの点から見る必要があると整理されています。

 1.仕事が面白くてやりがいがあると感じると内面的なやる気が高まり、業績が上がる。

 2.職務規定の役割以上のことをして積極的に他の人を援助する利他的行動が、会社の組織活動を向上させる。

 3.帰属意識とその効果は国により異なる。東南アジアに見られるタテ型家父長的意識モデルはヨコ型の個人主義的な意識モデルと異なる。

 また、社員の雇用形態や働き方の意識の多様化が現実的になってくるのに伴い、社員の多様な期待に合わせた形で動機づけをするいろいろな工夫の必要性と、日本的なチームワークの方法を海外移転するには、現地に即した形で考慮すべき点があることを課題としてあげられていました。

 基本的にはこの通りだと思います。

 私は、特に日本での経営にあたっては「農耕型企業風土づくり」の「定石」を踏まえた経営の必要性を主張(『これからの課長の仕事』および『これからの社長の仕事』)しています。それは、先生が整理された上記1~3の点を、まさに反映した経営手法です。

 わくわく元気に仕事が出来る環境を整え、社員のやる気を高める、チームの中で他の人を助け合う関係性から組織を活性化することを、経営上非常に重要視しています。何故ならば、日本人が古来より得意とする要素を経営の中に取り込む方が、企業の業績には良い効果をもたらすと考えるからです。

 人間集団の営みは、その土地や国の風土、慣習、宗教、思想などを上手く反映して初めて円滑に行われます。特定の目的の実現を目指す会社という経営体も、人間を抜きにしては成り立ちません。だとすると、そこに参集する人間の育った風土、宗教、ものの考え方などの背景を反映させた経営方法が集団の摩擦が一番少なく、理にかなっていると考えるのも、ごく自然です。

 仮に、経営体の日常の運営が日本人を中心に組成されているとしたら、私の主張する「フォーミュラ」にのっとり、「定石」を踏み、良いチームワークの中で社員のモチベーションを高めることを通じて個人の成長を促し、結果として会社の中・長期的成長を実現する経営が今求められていると、私は強く主張しています。

海外で展開する場合には、「農耕型企業風土づくり」を通じた具体的マネジメント方法を現地の環境、宗教、思想などに合致させる修正を加えれば済むだけで、経営モデル全体の「フォーミュラ」や「定石」は不変なものです。構成員たる社員を中心に置き、その土地や国に合致した方法で、彼らのやる気をどう出すかに最大限留意した「人間臭い経営」のやり方が、海外でも受け入れられると考えます。