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リーダーシップ

第275回 変革のための幹部社員の行動と企業風土

Posted on 2018-03-08

 いろいろな会社の指導を通じて幹部社員の行動特性で気づくことがあります。幹部社員の振る舞いを観察・分析することで、経営上改善すべきことが炙り出される。

 炙り出された特徴をその会社の成長度合いと比較すると、その特徴自体が経営の在り方との関係性をある程度検証できるのではないかと推測します。

 

成長する会社の幹部の行動

 成長している会社の幹部社員の特徴は、ほぼ間違いなく

・他の人から指示をされなくても、自分事として主体的に物事に取り組むみ、自己の判断で期待された以上の成果を出す努力を自ら行っている。

・決められた組織の枠などを気にせず、良かれと思うことは組織の枠の越境を当たり前としてチャレンジする。

・好奇心が非常に旺盛で、新しい知識や人脈づくり、特に外部の人脈づくり、人間関係づくりに前向きである。

・幅広い人間関係を利用して、社内でストレスを感じても外部との接点を上手く利用して、それを緩和している。

 

 仮に、上のような幹部社員が会社全体の4割以上を占めていれば、その会社の持続的な成長が維持できる傾向があることを、私自身経営で体験をしています。

 4割の幹部社員が他の6割の社員に徐々に影響を及ぼし、どこかの時点で比率が逆転し社内風土を一気に良い方向に転換する力となるからです。

 

個人と組織構造の兼ね合い

 逆に、上手くいかない、成長が鈍い会社の幹部社員は、どんな特徴があるのでしょうか。

 それは、

・組織運営が上手くいかない問題を「人」の問題であると位置づけ「人」たる「個人」に焦点を当てて解決しようとする。

・しかも、本人自身のマネジメント力は棚に上げ、他の「人」の課題にする。結果として、「人」の入れ替えを主張する。

・毎年この繰り返しで、結局、組織全体としては人材メンバーを消耗する負のスパイラルに入る傾向が見られる。

 このアプローチに対して、私は違う発想が必要だと考えます。

 成長している会社の経営では、そのアプローチが特徴的にみられるからです。

 すなわち、上手くいかないのは「組織構造」に問題があり、これをどうするかにまず頭を使う。「組織」の問題の本質部分を解決せず、「人」たる「個人」に焦点を当てすぎると、経営自体の変革につながらない傾向があります。

 組織を組成・革新するとなると、「経営目標」を設定し、その「戦略」を策定し、戦略の遂行のために最適な「組織構造」をデザインするという段取りを踏む手順が最適です。

 「人」の前に、まず「組織構造」をどうするかに十分留意することになります。

 組織構造の変化であるので、当然のことながら社内からは大きな反発が予想されます。

 しかし、それは経営側や幹部社員の受け止め方次第で解決できることが多いです。

 すなわち、反発があるということは、従前のやり方に社員自身が何らかの矛盾を感じているか自己評価を持っているからです。それの良いところ悪いところを議論することで、変革の第一歩になるのです。

 組織の長たる幹部社員が自己の裁量で判断の幅を拡大し、それを体質となるまで経験で学ばせることができるような組織構造を、私は重視しています。

 ビジネスで起こっている物事は、チームの一人でも成果がゼロだと、組織全体の成果もゼロとなりやすい。組織の成果は、「足し算」でなく掛け算の結果であり、運営の仕方がチームとしてのパフォーマンスに大きく影響するので、組織のメンバーを「掛け算」で活性化する体質を組織構造に持たせる。経営側が組織の長にしつこく人材のレベルアップを問う意味を分かってくるまで繰り返し説きます。

 

組織風土の特徴が言動に現れる

 デザインした組織構造が動き出すと、社員の仕事を通じて組織風土を生み出すことになります。その組織風土の良いところが強ければ、組織を構成する働く社員の行動や考え方にプラス要素として現れるので、会社の成長が加速します。

 従って、経営幹部が組織風土の良いところを強化するマネジメントを実践するには、社員の言動や振る舞いから、組織が持つ価値観や前提条件などの実態を炙り出す必要があります。

 炙り出す方法として、

1.会社の組織風土やカルカルチャーについて、社内でよく聞かれ、よく使われる言葉、見られる行動を洗い出す。

2.その言動から会社内で根づいている価値観や行動原理について洗い出す。

3.それらが、経営上プラスに作用しているか、マイナスに作用しているかを経営的に判断する方法です。

 

社員が日常何気なく口にしている会話などから価値観を抽出

 会社内での言動を調べてみるとよくわかります。

 会社で良く聞かれる言葉には、「どうせ最後は・・・」、「また変わるので・・・」、「指示がないから、・・・」、「・・・にメールしたのに・・」などなど。

 組織としての前提には、「上司には意見が言いにくい」、「組織の枠を外れることにメリットを感じない」、「皆が枠や管理に捉われる」、「失敗したら降格になる」、「数字の評価が絶対である」などなど。

 これを洗い出す作業をすると、特別な場合を除いて、ほとんど皆が明示的に使っている言動です。例えば、会社の経営理念や行動規範、会社の歴史から培われたある種の前提などです。

 これはこれで結構です。

 しかし、経営が上手くいっていない場合、ことの本質が社員まで浸透していない。社員に経営層の意図が表層的にしか理解されていない。従って、経営的にマイナスに作動している言動や前提部分を除去・修正するプロセスを経て、組織風土を築いている土台を変えなければ変革できないのです。

 そのためには、社員が抱いている感情や情緒的背景についても検証しなければなりません。社員が自己の主張をストレートに表現しているか、それを受け取る側の雰囲気や態度がどのようなものか、加えてそのような雰囲気や態度が何によって形作られているかも検証し、

 最終的に経営として意図している価値観を言葉によって「見える化」することを薦めます。

 例えば、私の例では、社是や経営理念で目指している社内の人間関係を、後に「湿り気のある人間関係」と表現しました。詳細は省略しますが、この雰囲気がある組織風土を会社全体で築きたいと表現すれば、会社内で大事にされている人間関係や価値観を一言で表していることになります。

 

捨てること、捨てないこと

 それらをもとに会社の価値観を検証して、何を捨て、何を残すかを議論するのです。

 組織風土の良いところを残し、経営にマイナス影響を及ぼしているところを炙り出し、経営に変革をもたらすことになります。

 蛇足ですが、幹部研修の在り方とも関係していると考えます。多くの幹部社員が研修に積極的でないのは、研修で上記のような本質的なところに触れる機会が少ないからです。

 単に知識を植え付けるのでなく、会社を根底から変える議論を通して、自ら変革の当事者となる意識改革(マインドセット)の機会を研修で与えるべきではないでしょうか。

 本日は、成長する会社の幹部社員の行動と企業風土について述べました。参考になれば幸いです。

 

 

第274回 経営者のタイプ

Posted on 2018-03-01

 経営者にもいろいろなタイプがあります。

 タイプの背景が、本人の性格によるものかどうか学問的なことは分かりません。しかし、自分なりに整理してみると面白いタイプ分類になりました。

 それが経営行動や経営判断に影響していることが多いので、経営者本人も自己認識すると経営上おおいにプラスになるのではないかと考えます。

 

1.オープン(開放的)か否か

 開放的でどんな状況、どんな課題でも社員などからの相談にのれる、経営者としての考え方を常に開放的に説き、そこから現場の意見を汲み上げるような方法をとるタイプです。これは、営業的センスが高い活発な経営者に見られる場合が多いです。

 既存の考え方にとらわれず、常に新しい良いものを取り入れ、新たな人間関係の樹立も得意、また、自分の事業分野のことのみならず、他の業界や分野、文化、教育、芸術などにも興味を持ち幅広い人脈を作ることが得意で、会社の急成長のきっかけを早く掴むタイプです。

 

2.チャレンジング(挑戦的)なマインドを持っているか否か

 創造力、クリエイティヴィティーに関係します。現在の状況には満足しない。常に、危機感を覚え、それを克服すべく新機軸に挑戦するタイプです。

 常に、走り続ける。ベンチャー企業であろうが大企業であろうが、会社の規模には関係なく、経営者として常に新機軸を施策に織り込みながら会社を引っ張るのが得意です。

 自社の資源との兼ね合いで、挑戦のタイミングを間違えると、経営上大変なことになるので、牽制的役割を担う機能も必要となります。経営者自身、補佐役のアドバイスを受け入れる度量が問われることになります。

 

3.トレランス(耐性)があるか否か

 耐性が高く、いろいろな事態が発生してもそれに対して一定の情緒レベルを維持でき、問題や課題を自分で解決しようとする。短期間の結果の善し悪しに一喜一憂しない、我慢強いタイプです。

 環境の変化にも表層的なことは度外視する。あまりネガティヴに考え過ぎないことを条件に、事の本質を把握して慌てないタイプなので政策の一貫性を保て、社員からの信頼を得やすい。

 これの逆のタイプは、しょっちゅう考え方や経営の軸が変わる、他者に批判的で自己中心的、社員からどう見られているかを常に気にする、情緒が若干不安定になりやすいタイプです。

 決めたことも状況次第ですぐ変更する。他方、社内の摩擦を気にし、ある面では協調性を過度に重視するタイプです。

 

4.シンセリティー(誠実さ)があるか否か

 実は、私が経営者として一番重要視しているのは、誠実性です。私は、このタイプを上記の1~3の上位に位置づけています。

 経営施策の約束事の実践に誠実か、社員に対するいろいろなコミットメントに誠実か、結果として、どんなことがあっても「事業計画」の遂行に誠実な対応ができるか否か。といったことにビジネス上の誠実さが象徴的にあらわれます。

 自分に厳しく、計画的で着実に注意深く施策を進めていくタイプで、集団をまとめていくのが得意です。社員や会社の関係者からの信頼を基礎に持つ企業の風土を築いていくので、組織に絶対的な安定感があり、多少の浮き沈みに対しても会社全体の耐性も強くなる傾向がみられます。

 

経営者の修行

 以上、経営者のタイプを勝手に分類しましたが、これを全て満足に備えている経営者はそう沢山いません。

 要は、経営者自身が自分のタイプを認識して、一つのタイプのみでなく他のタイプの良さを吸収する努力をいかにするかです。いわば、経営者の修行の過程と見做せます。

プロの経営者は自己認識の上、自分を磨く努力を人知れずやっています。

 性格に関係するので本質的なところは変わらなくても、本人の行動のパターンは変えられるところがある、との認識をもっているからです。

 ご参考になれば幸いです。

 

リーダーシップ経験の積み重ねこそが決断力を養う

Posted on 2014-10-30

 ある経営者から相談を受けた時に感心したことがあります。アドバイスを受けた後の彼の迅速な決断力でした。決断に至るこのスピードに加えて、今後の戦略展開に於いて彼が正しい決断を出来れば、会社が更に大きく成長するのではないかと楽しみにしている経営者の一人です。

 私が考えるに、決断力が最良のものになるか否かは、その経営者のリーダーシップ経験の培い方と深い関係があるように思えてなりません。すなわち、決断は常に最良でなければ経営者の任務を果たせませんが、そのためには、日常の経営職の仕事の中で本人がどのようにリーダーシップを発揮しているかの経験態様と高い相関関係があると思えるからです。

 本日は、経営者が最良のリーダーシップを発揮するために普段の仕事の中で何に留意すべきかを述べ、結果として最良の決断力が発揮できるようアドバイスいたします。

 

1.事実の把握

 まず常に現実、現場をきちっと把握していなければなりません。

 忙しさ、物理的な距離とは関係なく、工場などの現場で起きている現実を常に明確に把握すること、その上で判断をすること、これがあらゆるリーダーシップの始点です。特に、間違った事実情報を基にした経営判断は悲劇を生みます。

 多少語弊がありますが、誤ったと思えるアメリカの大統領の決断の例です。大統領は自国の大義名分を貫くために、中東のある国と新たな戦争を始める決断をしましたが、その判断のベースとなった材料が、本当に事実を正確に反映していたか大きな議論になったことをご記憶かと思います。新聞報道などを通じて戦争開始の前提となる事実に国民が疑念を抱いたころから、大統領に対する信頼が失せ、彼のリーダーシップに陰りをきたすことになったのは、他山の石とすべき例です。

 

2.皆が納得する目標設定

 次に、目指す目標に善なるものが感じられるか否かです。

 先ほど述べたアメリカの決断の例でもしかりです。戦争を始めるに値する大義があったか否かが問われました。

 企業の場合では経営者の哲学や理念が会社の目標に反映されるケースが多いです。従って、会社が何のために生存するかの大義が重要です。社会の中で善と思われる生存領域で会社が生きているかです。会社の目標や考え方を誰が聞いても「そうだね。」と映る善なる目標が必要です。そうでないとリーダーシップを継続して発揮できなくなると考えます。

 1939年9月1日に第二次世界大戦が勃発し、ドイツがポーランドに突然侵攻、これに対抗して、すぐイギリスもフランスもドイツに宣戦布告をしました。特に、イギリスのチャ-チル首相の演説は国民の心をとらえたと言われています。彼は、前任のチェンバレン氏の取っていたドイツに対する姿勢と違い、ヒットラーと対峙して自由を守るべしとの明確な姿勢を持っており、それを言葉に発していました。チャーチル首相のこの演説にイギリス国民は、「その通りだ。」と大義を感じ、強制でなく自由のために自らが団結して戦ったのは歴史が語ってくれます。善なる大義で共感を得るのがリーダーシップの発揮にいかに大事なことかを如実に物語っています。

 

3.語り続ける

 次に、社員も含めて皆が、その目標に共感し賛同してくれなければなりません。そのためには、目標を実現するための全体のストーリーを語る力が不可欠です。一度や二度では社員に通じません。何回も何回も、少し言葉を代え、少し新しいことを付け加えながら、語ることです。

 前出のチャーチルは、いろいろな場所で自国民に対して語ることを忘れていませんでした。語ることの積み重ねが功を奏した部分もあり、このリーダーの下で対ドイツの戦いを遂行しようとの国民の賛同を得ることに成功していったのではないでしょうか。

 

4.リーダーとして、それなりの実績を造る

 社員の共感を得て、「その通りだ。俺も実践しよう。」と本気で彼らの行動につなげてもらわねばなりません。これには、リーダー自身がそれなりの実績を造らねばなりません。リーダーが示した目標が「実現できるのだ。」ということを、実績をもって示すことです。実績をつくるためには本人の能力がもちろん必要です。しかし、本人一人で努力するのでなく、経営者という立場上、支えてくれる人々の協力を得てはじめて実績造りに繋がることを忘れてはなりません。

 このために経営にあたる早い段階で、支えてくれる主要な遂行ポジションを適材で固めてはいかがでしょう。どのポジションが目標を実現するために重要なのかを判断し、そこに信頼のおける人物を配置することです。配置に迷いが出て一番重要なポジションのアサインにブレが出ると脇が甘くなり、その結果、リーダーが実績を出すのに遅れを生じ、社員からの信頼を勝ち取る時期も遅くなる失敗例をよく見てきました。こうならないように社員の協力を仰ぎながら、早い段階で経営者としてそれなりの実績をつくることがリーダーシップにつながります。

 

5.「場」を造り、任せる

 ある程度リーダーの実績が出ると、それに従う社員が力を発揮できる「場」を提供しなければなりません。「場」を提供して、彼らに任せることで、経営者の指示を誠実に実践すれば、「自分も上手く出来るのだ。」という自信をつけさせることで、業容発展のスピ-ドがつき、リーダーシップが地に足が着いたものになっていきます。

 

6.「分身」の育成

 しかも、これを組織として実践するには、経営者の「分身」を沢山育成できるかにかかっています。

 この頃になると、いろいろな「場」を通じた教育研修の重要さが増してきます。分身の育成で組織の広がりを持った展開が出来るようになれば、会社の成長スピードが増していきます。結果、本人のリーダーシップが増大したことになります。

 リーダーシップ経験の積み重ねがあっても、正しい決断に失敗することがあります。しかし、そうでない場合と比較し、リーダーシップ経験の積み重ねがある方が適切な経営決断につながるとすれば、日常のマネジメントの中でリーダーシップを意識しながら経験を積み重ねる意義がすこぶる大きいと考えます。

 

「変革」のためにどのようなリーダーシップを発揮していますか?(3)

Posted on 2012-11-29

前回からの続きです。

多様なキャリアディベロップメントへの対応

 社員の多様性にいかに対応するかが今後の「変革」にとって重要です。経営者やリーダーは、このことを発想しておかなければなりません。

 私が経営を任されていた時代でも、社員の価値観や要望が多様化していました。しかし現在は、さらにその速度が増してきているのではないでしょうか。

 例えば、アルバイト層の会社への入社動機です。以前はほとんどのアルバイト社員がある限られた目的を持って入社したと推測されるのに、最近は、必ずしもこの前提が当たっていないかもしれません。

 だとするとそのような人には「十把一絡げ」的な対応をすると感謝されないアンマッチとなることが多くなります。人事施策はこの状況に追いついていかなければなりません。

 複雑なことですが、顧客のサービス導線が多様化するのと軌を一にしていると理解した方が得策です。人が財産である限り、経営上の出口のみでなく、入口のことへの対応が遅れるわけにはいきません。

 他方、入社するアルバイト層へも世の中の状況を理解させるような指導をすべきです。今がどういう時代になっているかの客観的傾向を洞察してもらうことです。

 まず、高度成長の右肩上がりの時代はあまり期待できないことです。右肩上がりの成長の過程でいろいろなことが解決したこともあるかもしれませんが、今は、自己のキャリアディベロップメントは右肩上がりを前提にしないことが得策です。

 さらに、仕事の内容が専門細分化する傾向にますます拍車がかかっていくことを認識することがプロになるための生き方であることを彼らに学んでもらう必要があります。つまり彼らに、自己の専門分野に他の領域から他の知識を持った人が参入してくる競争リスクを最初から抱えていることを前提にした契約をさせるということです。

 より専門性の高い人に自分が代替されるのは当然のことと理解させ、理論など普遍性のあることを仕事の中で学んで、自分のプロレベルを上げていかざるを得ない仕事観を彼らが持つよう普段から指導することも「変革」のためのリーダーの仕事の一つです。

心を動かすメッセージの伝え方

 変革のためリーダーシップの発揮でいろいろなタイプの経営者がいますが、Why(理由)からHow(手法)へ、さらに、What(何を)の順に考え、行動する人が多いと言われています。Why(何故)からの発想です。

 私も期せずして、この形の発想を重要視して行動に起こしていました。

 「マーケティング・コミュニケーションサービスを提供するNo.1カンパニーになります。なぜならば、・・・」と、社員に具体的な個別の商品をアピールするのでなく、まずこの理由(Why)の「・・・」の部分から情報発信していきました。

 私は、志の内容を経営理念で明確に表現していました。

 理念実現のため戦略絵図と具体的作戦を示し、理解を得ながら組織を束ね、全社員に作戦を浸透させました。Whyを現実にするために、How(実現方法)を述べました。

 What(何を)するかは、あらゆる機会や場を利用して言葉で表現し、幸い、「6つの約束」(社長就任後のコミットメント項目です。詳細は、『これからの課長の仕事』に譲ります)を実現できました。

 経営を取り巻くこの行動原理が人間の脳の構造と関係することを、私は『WHYから始めよ!』(サイモン・シネック著、栗原さつき訳)から知りました。

 脳の外側の新皮質はWhatの部分に相当し、合理的で分析的な思考や言語機能をつかさどるといわれています。脳の内側の大脳辺緑系はWhyとHowに関係し、感情や行動、意思決定機能をつかさどっており、言語をつかさどる機能はないと記載されていますので、Why(理由)、How(手法)、What(何を)の順序で発信することが経営上も大事です。

 コミュニケーション方法として内から外に、つまり最初に相手の意思決定をつかさどる脳の内側の部位に訴えかけ、その後に言語をつかさどる脳の外側の部位に情報を伝えれば、感情による決定が合理的なものになっていく、プロセスを踏んだやり方となるという記載もあります。

 いろいろな会社のメッセージの伝え方を比較してみてください。変革のための社員に心を動かすメッセージの伝え方の参考になると思います。メッセージのWhyの部分で、その会社の理念に共感する顧客もいるかもしれません。

Whyの連鎖で考える

 いろいろな課題が発生してくると、その課題の原因よりもどうしても結果に焦点を当てやすくなります。結果はよく見えて誤魔化しようがありません。

 しかし、この結果は何らかの原因があって初めて出るものです。

 そこでWhyの連鎖で疑問を突き詰めていくと、その原因が少しずつ浮き彫りになります。この原因をベースに課題解決へ進むと、会社にとって生産的な議論ができることになるはずですが、実行を急ぐがために、このプロセスが尻切れトンボ状態になりがちです。素早く課題に反応することと原因をベースにした課題解決は、全く次元の違うものです。Whyの連鎖で変革を志向し、物事を根源から正す方が結果として早く終点に到達すると考えます。

 

「変革」のためにどのようなリーダーシップを発揮していますか?(2)

Posted on 2012-11-22

前回からの続きです。

仮説をたて、とにかく早期に実行

 「仮説をたて、その結論を出して早く実行に移す」習慣を社員に身に着けさせることは大変重要なことです。時間が収益を生むことを実践で徹底することです。

 私の20年間の経営体験から言えば、時間と時限の概念が徹底されないところに、企業の発展は望めません。

 スピードが猛烈に早い時代、「今すぐやる」ことが競争に勝つ方法です。出した結果をできる限りスピードをもって実行に移し、それを検証することです。

 情報が十分集まっていない場合もあるかもしれませんが、その状況下でもとにかく最善の結論を出して走り出すことがポイントです。

 競合各社と競争をしていることを忘れているのではないかと感じる会社に時々遭遇するのは残念です。

 もちろん、人事施策等、後戻りできないことはしっかり考えた上での走り出しが必要ですが、大半の施策は、行動、検証分析のプロセスによってより良いものに修正可能です。スピードが無い限り、競合に先を越され負けるリスクがあることを、リーダーは社内に周知徹底しなければ「変革」につながりません。

 仮説をたて、結論を早くだし、時限を設けて実行し、必要な修正を加える習慣を全社で徹底することが、商売のチャンスを失わないことにつながりますし、アクションに結びつく結論をだす戦略策定の過程で、結論を導く理由や成果が出るメカニズムが以前より明確にもなります。こうすることで、社員が自主性を持った「戦う集団」に少しずつ変わってくるはずです。

 現場に近いところに権限を与えることでスピードと機敏さを大事にし、まず結論を出して進んでいくのはいかがでしょう。

 また、企業が人と組織で動いている限り、中間層を活性化する策を講じることが必要です。活性化と甘えとは相いれない思考です。中間層には過去の成功体験が少ない社員が多いのですが、彼らの姿勢は新しいことを実現したくてウズウズしています。この層に企業変革の牽引車になってもらうのです。特に、影響力のあるトンガリ人間に。

 また、今はデジタルで物が製造できます。誰でもどこでも作れる状態になっていますので、外注や企業内部の組織や体制もデジタル製造の環境変化に対応して、優秀な外部組織を上手く利用するように変革することです。競争条件を働かせて、利益を上げるためにあらゆる資産を利用して、とにかく仮説を早く実行に移し検証する組織にすることが必要です。

「捨てる」ことと「捨てない」ことの峻別

 会社が新しい時代にマッチして成長していくためには、脱皮が不可欠なことは論を俟ちません。ただ、脱皮しても従前と同じ形で現れるのでなく、できれば過去を捨てて違う形で表れてほしいものです。「捨てる」ことは怖いのですが、その決断が必要です。

 「会社の財産だからこれは捨てがたい」という言い分をよく聞きますが、他方で、たくさんの社員がもし退職しているとすれば、「会社の財産」の内容をどう考えればよいのでしょうか。

 会社がここまで成長してきたのは会社の財産たる強みがあるからです。強み、すなわち、「頭の中に潜んでいる知恵」があるからです。社員の心の中にも沢山の「潜んでいる知恵」があるはずです。

 大事な社員を捨てることは「潜んでいる知恵」を一部捨てることにつながる相当な決断です。会社にとって社員と社員を含む組織が一番大事なはずですから、同じ「捨てる」でも、本当の財産は捨てない経営が必要です。それぞれの会社で違う事情があると思いますが、社員が退職する本当の原因がどこに起因するかを、深く考えて必要な修正を加えるのも大事なことです。

 酷なようですが、経営陣やリーダーの鏡が社員だとすると、社員に映る経営陣の姿は原因を探る糸口で、意外に単純な所にあるかもしれません。仮に人材という財産を大事にしているにも拘わらず社員に甘えの構造があるとすれば、リーダーシップをとる側の甘えや不備が鏡である社員に反映しているのかもしれません。将来の発展のために真摯に考える必要があります。