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折々の言葉 / 語り継ぐ経営

第156回 相関と因果の関係に上手く付き合う(1)

Posted on 2015-05-21

 予測するのは、本当に難しいことです。会社内でも相関関係をベースとした予測に基づいて、将来のことをもっともらしく議論したこともありましたが、実際は難しかったと言うのが偽らざる本音です。

 

ソ連の崩壊の予測

 1991年、ソ連があっけなく崩壊しました。私は、相関分析をしたわけではありませんが、これを予測できませんでした。

 西側との冷戦時代を知っており、1960年代に米国と対峙するレベルの力を保持していたソ連が、あっけなく崩壊するとは想像だにしていませんでした。専門家も「絶対に起こらない」と予測していたことが、二十数年前、現実に起きたのです。

 マルクスは、資本主義が成熟すると、そこで崩壊が起こると説明していましたが、逆に本家本元のソ連が突然崩壊してしまったのです。

 

リーマンショックの予測

 2008年のリーマンショックも一般の人からすると突然起きました。リーマンブラザーズの経済破綻に端を発した金融危機です。

 この時も不思議なことに、専門家たる格付け会社が予測した債務担保証券は、向こう25年間でこの証券の払い不能(デフォルト)が発生する確率は低いと予想していたと、事後報道の記事で知りました。現実には不払いが発生し、世界の金融危機の発端となりました。

 予測の失敗は、適切なサンプルに基づいて予測をしなかったからと言われています。すなわち格付け会社は、住宅価格が上昇時していた1980年代のデータに基づいて向こう25年間を予測したようです。予測した時期には実際の住宅価格は下がり気味の状態だったのに、先行きも大丈夫とレポートした当時の予測者は、現実に発生したことをどう説明するのでしょうか。素人目にも如何なものかと思う予測の質です。

 違う状況のサンプルデータに基づいて、局面が全く違う状況を予測した報告書の情報を鵜呑みにして、まだ大丈夫だとの判断・行動をした一般の人がいたとしたら、余りにも可哀そうです。

 

ノイズがあるのは事実だけど・・・

 この批判に対して、予測する際はもっと不確実性を受け入れなければならないと、学者は言うかもしれません。すなわち、過去の住宅価格の状況のみから大胆な予測をするのではなく、データにノイズがあることを知り、現実に発生している今の局面をも包含する様々なアプローチを試みるべきであると。

 その通りです。一つの事象を違う角度から考える必要性を理解し、検証する方法に慎重すぎることはありません。しかし、一般の人にはレポートの背景などほとんど分かりません。唯一分かることは、多くの課題は本来予測困難かもしれないとの単純な認識です。

 我々一般人が世の中の情勢をみても、大半は意味のないノイズの情報ばかりです。そのようなノイズを、企業が大量に、シグナルとして世の中に発していることも理解しなければなりません。発信される情報が沢山あっても、その大半はノイズだとしたら本当は真実が増えているわけではないという単純なことを、我々は理解しなければなりません。

 

 

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コメント1件

 柏 篤雄 | 2015.05.21 22:10

園山社長。有難く拝読致しました。
是非、社員教育をお願いしたいと思います。
宜しくお願い致します。

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