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企業風土(文化)

第152回 「農耕型企業風土」づくりの経営でのマネジメント

Posted on 2015-04-23

 私が主張する「農耕型企業風土」づくりの経営とは、簡単に言えば、「「いろいろな施策で社員を幸せにすると、本人(社員)の心理と脳の特定の働きかけにより社員のモチベーション、創造性、革新性が高まってイノベーションをもたらし、本人と会社を成長に導く。」経営をすることです。

 

「農耕型企業風土」づくりを通じて会社を成長させるこの「フォーミュラ」を分解すると、

1.「対話をする」、「場をつくる」などのいろいろなステップを踏んで社員を幸せにする努力をします。

2.この社員を幸せにするステップが本人の心理と脳の特定の働きかけにより、社員のモチベーション、創造性、革新性を高め、イノベーションをもたらします。

3.このように個々人の社員の心を「わくわく元気」にすることが、チームプレーや人間関係を重視する環境と相まって個人の成長のみならず、組織集団のパワーアップをもたらし会社の成長に繋げていきます。

 となります。

 この経営は私が主張している経営です。詳細は、『これからの課長の仕事』や『これからの社長の仕事』に譲りますが、この経営の中でキーとなるのはマネージャー層のリーダーシップです。

 

 今回は、このリーダーシップ発揮の特色を、キーワードに表現していきます。

 これらのキーワードを毎日意識して仕事の中で実践に移すことが、上手なマネジメントの極意と思います。

・夢を熱っぽく語る

・具体的な方向を時限で指し示す

・チームプレーでの役割を全うする

・仕事の意味を明確にする

・バリュー(価値)を生む

・仕事に自由度を与える

・時間(任期内)の発想を常に持ち、実践にスピード感を

・コンセプチュアル・スキル力と行動力を身に着ける

・経営の遊び、余裕度を持つ

・対話と共感度をつける忍耐力をつける

・情報と言葉の意味を共有する

・賑わいの演出役となる

・育ってもらう「場」を設定する

・個々人の成長曲線を描く

・チャレンジの機会を万人に与える姿勢をもつ

・変化と変革の旗振り役となる

・拡大と絞り込みのタイミングをはかる

・行くか退くかの指示を明確にする

・「計画は達成するもの」との認識をもつ

・道程を時間で示す

・達成した感謝のため祭り(イベント)を催す

 

 キーワードの詳細を、敢て、今回は説明しませんが、 これらのキーワードを見て、その意味することが経営との関連でピーンと来るようになれば、立派なマネジメントが出来る人と保証します。上記の本などをご覧いただければ幸いです。

 

第151回 「農耕型企業風土」づくりを通じた経営構造を考えるにあたり取った思考方法

Posted on 2015-04-16

 今回は、物事の本質のエキスの部分をどう整理してモデル化するかについて、私の実体験を通じて紹介します。

 私は過去に経営を委託されていた会社を、幸いにして優良会社に成長させることが出来ましたが、あるファンドから彼らの意にそぐわないとの理由で、社長職を突然実質解任された経験があります。

 その後、ある会社の社長から「園山の経営」を是非、本に著わしたいとの意向を受けて、初めて畑違いの筆をとることになりました。最初に中堅管理者向けの『これからの課長の仕事』を、直後に、社長職にある人向けに『これからの社長の仕事』を書きました。

 本を書く過程で、私が主張する「農耕型経営風土」づくりを通じて会社を中・長期的に発展させる経営をモデル化し、この経営のフォーミュラを抽出、経営の「公式」を整理することができました。

 今回は、この整理の過程で私がとった実際の方法を披露しながら、物事の本質、エキスをいかにして見つけるかに関して述べ、皆様の参考にしたいと考えます。

 何故なら、過去私が執行した経営を深く考え、体系的に整理した同じ手法が、一般のビジネスマンが物事の課題設定をしたり、それについての本質的な解決策を探る手法に類似した思考をすることになると思うからです。

 

1.キーワード抽出

 経営していた頃、私が手書きをして社員向けに話した講話、研修、戦略などの内容が『折々の記』と題した6冊の本に整理してあります。

 この中から、私が目指す経営に関して重要だと考えるキーワードを沢山抽出して列記しました。例として、対話、聴く、賑わい、感性、行動、自由などなどです。

 

2.キーワードと経営目標間の因果関係図

 次に、経営の目指すビジョンや中期目標と上記のキーワード群との因果関係を推定し、それらを図式として整理しました。この段階では、余りに沢山の因果の関係図が出来て、自分でも迷うくらいの大きな図式となりました。

 

3.図式の整理とモデル化

 更にこの図式を経営するという視点で整理していくと、ある単純な「経営モデル」となりました。

 沢山の事象と関係線の中から、物事(現象)の表面のみならずその裏側に潜む経営要素が表わす構造を単純なものにモデル化しました。私が目指す経営の本質を自分にも「見える化」して経営構造を再現したのです。

 この時、表面の現象だけに拘り整理すると、数字などの結果のみに拘り過ぎ、それを引き起こした原因分析が疎かになることが非常によく分かり、経営に関する枝葉末節を省き、幹のみを抽出することに成功しました。

 

4.影響度の長・短

 このモデルから短期的に因果の影響を及ぼすものと、中・長期的に影響を及ぼすものに区分分けしました。

 それを人間に例えると、骨格部分とそれを動かす内臓部分の一枚の図式に整理できました。内臓を楕円で、骨格と四角で表現し、それらと目標への因果を矢印で表現しました。

 いろいろな因果関係があり複雑で未だ完全とは言えませんが、このような整理が、物事の動態的な因果の流れを明確にし、他のビジネス課題の解決にも十分使える思考方法だと自信を持った次第です。

 

5.フォーミュラ(公式)

 この過程で、私の目指す経営の「フォーミュラ」を考えました。「公式」と呼ぶものです。

 課題解決(目標の達成)に一番大きな影響を及ぼすものを捜していくと、その関係が、経営の本質を凝縮した「フォーミュラ」として整理できたのです。経営の筋の理想形が見えてきたのです。「農耕型経営風土」づくりです。経営に一番大きな影響を及ぼすポイントとなる因子です。

 ファンドの世界ではよくレバレッジという言葉を使います。何かに投資をする時に一番効果的な方法を言います。このレバレッジを見つけました。要するに梃子(テコ)です。何か重いものを持ち上げる時に、梃子の原理を利用して省力するように、目標実現に一番に効く作動支点を見つけることと同じです。

 社員が一生懸命に仕事をすれば会社の成果が上がるといった短絡的なことではなく、実は、その間に企業風土という経営構造全体に大きな影響を及ぼすものが、作動支点になる「フォーミュラ」を見つけることができました。

 

6.モデルの検証作業

 ほぼ概念図の本質が整理できましたが、そのモデルを動かしたら、実際にどうなるかを見る必要があります。現実の経営にフィードバックしなければなりませんが、私の場合幸いなことに、過去の実績とその時に採用した諸施策が『折々の記』に整理されて書かれています。それを年代順に遡っていくと、あたかも現実の経営に適用して検証できることになりました。

 経営記録に照らしてモデルの諸因子の効果を試すことにもなったのです。最初に考えたモデルに修正を及ぼす因子が本当に無いのかを探るプロセスとなりました。

 

 以上、私が経営を整理する時に使った方法を概略述べましたが、この方法はもろもろのビジネス課題を解決するにあって皆様も使えるのではないかと思った次第です。

 

「農耕型企業風土」に根ざした強靭な組織

Posted on 2013-11-28

 私が主張する「農耕型企業風土」づくりの経営は、一旦この企業風土を作り上げると、極めて強固な組織になります。私はこのことを約20年間の経営で実証してきました。詳細は、『これからの課長の仕事』、『これからの社長の仕事』(ネットスクール出版)に譲りますが、今回、その背景を一部述べます。

 

多チャンネル接点を持ち、助け合う補完機能があるから

 まず、私が主張する「農耕型企業風土」に根ざした組織は、全体系が人間の心や集団の中で人間が本来あるべき姿を、仕事環境においてもできる限り実現することを基本とした経営組織です。しかも組織は多数の小さいグループで成り立つことを目指して、グループの長に相当な権限と自由度を託し、本人が一定の枠内でグループを自由にマネジメントできる組織です。

 この組織はミドル・マネジメントを主軸として、多くのグループ間でお互いにチームとして支え合う、助け合うシステム体系で、ほかのグループとのチャンネル接点の入口が多数用意されていますので、どこかの小組織(グループ)に突然何らかの障害が生じたとしても、類似した経営をしている他のグループからの補助・補完により、そのグループが速やかに再生可能となります。

 この補完機能が備わっていることで、全体が非常に強固な組織となります。

 

「リーダー任せ」の落とし穴にはまらないから

アメリカ流のマネジメントにはたくさん学ぶところがあります。

 しかし、このスタイルのマネジメント経営だと、万一、経営リーダー機能が不全になった場合、全組織が多大な影響を被るというネガティブ面のリスクが大きいのではないかと考えます。日本に於いては、私の主張する「農耕型企業風土」づくりの経営のほうが企業の中・長期的な発展には適しているのではないかと確信しています。

 極端な例ですが、リーダーは善で「社員はこのリーダーに従え」的な一元的発想による経営の場合、経営においてリーダーの機能に狂いがで出ると、たとえ法規制や諸制度の保護があったとしても、上述のような自主的補完機能がないために、経営上芳しからざる結果を招くことが多いのです。特に、「資本の論理」を全面に出す資本家的経営リーダーが経営者としてアサインされたときは、このリスクを大いに警戒せざるを得ません。

 社員の知恵が仕組として生かされる「農耕型企業風土」のような経営組織が、先ほどのようなマネジメントには組み込まれていないからです。「農耕型企業風土」に根差した組織では現場の経験の集積が知恵の塊として存在し、これを生かす仕組があるので、万一の場合にも経営リーダー機能の一部をカバーする力があり、この点でも組織を強固にします。

 

効率至上の有害性が少ないから

 人間が作り出すシステムで利益を追求する組織である以上、「効率」を重視するのは当然のことです。経営システムも然りです。しかし、これが行き過ぎると、経営システム全体が一部の特権的リーダー中心の単純化した仕組になりやすい、と私は考えます。

 効率がキーワードであると、この言葉自体に論理的に大義名分があるので、なかなか正面を切って異を唱えるのが難しくなるからです。「効率」をキーワードにどんどん経営が単純化され、いわゆる経営の「遊び」の部分を無くしていくことこそが「良い経営」と株主からは賞讃されることになるかもしれません。

 実は、ここに「落とし穴」が潜んでいます。単純であればあるほど、これが上手く作動している場合は良しとしても、何か経営のリーダーシップに狂いが生じた場合、経営システム全体が作動しなくなるリスクが大となる傾向があります。

 私は経営に故意に「遊び」や「効率を阻害する」仕掛けを組みこませる努力をしました。それらの仕掛けが「人間の心」や「仕事と生きがい」の観点から本来人間という生命体が持っている自然な姿に近いものであると信じ、「遊び」や「効率を度外視した」仕掛けも併存的に組みこませていました。

組織として生きた状態、活性化した状態を永く維持するには、このことが必要不可欠なことだと約20年間の経営で学びました。

 「農耕型企業風土」づくりに根差した組織について、更に詳しくお知りになりたい方は、私が書いたこれからの課長の仕事』、『これからの社長の仕事』(ネットスクール出版)を是非参考にしてください。

 

会議体は適性に運営されていますか?

Posted on 2013-08-15

 経営会議などは本来、社長が会社として一番重要と考えていることから審議、議論すべきです。

 会社全体の顧客開拓、トラブルやクレーム等、顧客に関することがどの企業でも最も重要であるにも拘わらず、これが最後の案件になり下がってしまいがちです。

会議体での重要案件の優先度

 ほとんどの会社では事務局がルーチンで決めている順番に議題が審議されます。また、その部門の関係者は自分の部門の案件の審議にのみに精神が集中し、それが終わると頭の中がほぼ空っぽの状態になり当事者意識が希薄になるのが常です。

 顧客施策の前に自己の部門に関わる議案の審議が終わってしまっていると、顧客施策というどの部門にとっても最も優先すべき重要な議案が会議体参加者の視点からは離れてしてしまい、社長の意図とは別に、議論が通り一遍の方向に展開し易いのです。

 これぞ、社長の意図と会社全体の重要度の判断が全く反映されていない、失敗の部類に属する会議の運営です。皆さまの会社では、経営会議がこのような運営にならないようにご留意ください。顧客にかかわることを第一義に発想してください。私はアドバイスを求められる経営者に常に同じことを言っています。

 ある会社での定例の会議がありました。冒頭、社長が「週末のトラブル」について自ら報告かたがた対応方法の協議についてを最初の議題にあげました。兼ねてから、サービスクオリティーの抜本的改善が必要性であることを分かっていながら対処できなかったところに、またまたトラブルが発生したのです。社長として怒り心頭ですが、それを押さえて対応や改善協議の場となったのは、組織体として大きく前進した証拠です。

 ただ、これが一元的なものに終わらないようにしたいものです。

会議体での共有知をつくるいろいろな努力—「こんな簡単なこと?」

 ある会社の会議に始めて参加した時、会議を行う「場」の配置・レイアウトに大きな違和感を覚えたことがありました。

 この「場」での会議は、議論を通じて会議体参加者からの円満な「共有知」が生まれにくいのではないかと危惧していました。知恵を出し合い、会社の発展のために双方で何かを新たにつくり上げる環境、参加者が違和感なく会議を進めていくことがレイアウト上で表現されていないのです。

 顧客の要望を満足させるには、社員の満足こそ重要であるとの信念を持っていた私としては、社員が参加するこの「場」のレイアウトは如何なものかと考えていました。対立した意見の出し合いで、どちらかと言えば、議論に「勝った、負けた」というおよそ生産的でない形で会議が終了するのではないかとの第一印象を持ったのです。

 いつも机の配置は90度の直角。相手との距離が1.5メートル位のパーソナル・ディスタンスに、机が対峙するように配置されていました。座った時から、双方の心理状態が穏やかでないと推測されます。この心理で議論する限り、議論の進展結果が私には推し量られますます。なお、今は改善されています。

 皆の顔が90度の真正面に見えるのでなく、斜角度、例えば三角形レイアウトに、または、出来たら曲線のレイアウトがサービス業での20年間の経営で実際に学んだストレス緩和のアイデアです。

 私は個人的に庭や住宅のデザインに興味があります。特に、日本の庭園や茶室の曲線美が大好きです。踏み石も含めて、西洋のストレートの並びでなく曲線の配置です。最高の接待をする場である茶室の踏み石や茶室内の曲線の素材が、客に安らぎと心の快適さを抱かせる要因になっているのではないかと考えるからです。

 スペインの建築家のアントニ・ガウディが約100年前に設計した「カサ・ミラ」は、直線部分を全く持たず曲線的にデザインしたとされる建造物で、現在もアパートとして利用されていると聞きますが、これを一度訪問したいと思っています。

 「こんな簡単なことですか?」と、時に質問が返ってきます。でもこのような小さいことの積み上げで経営が成立しているのです。「小事大事」です。

 

それぞれの国にそれぞれの企業風土や企業文化があることを前提に施策を練っていますか?

Posted on 2013-01-31

国による文化(風土)の違いの認識

 2012年2月、著名な指揮者、沼尻典竜氏の演奏会が三鷹でありました。演奏会後のパーテイーで沼尻氏と奥泉光氏(1994年、第110回芥川賞受賞者)との対談があり、その中で沼尻氏からこんな面白い話が出ました。

 「ヨーロッパでは『ラ』のピッチが日本やアメリカより高いのです。だから、最初は音を合わせるのが大変ですが、そこはプロで、すぐ合わせてくれます。」と。音楽の世界ではありますが、国によってこんな文化の違いが現実にあることを、沼尻氏から教わりました。

 また、フランスとドイツではチェロの弦の持ち方が違う(上から押さえるか、下から持ち上げるか)ということも聞いた記憶がありますが、この部分の真実は未確認です。

二次元と三次元

 2012年春、私が主催する「わくわく元気会」傘下のコーチング品質保証コミュニテイー(松下信武氏主催)でも、文化や表現の違いに関する面白い議論がありました。

 「農耕型企業風土」づくりで会社を中・長期的に成長させる方式を分かりやすくするために、『これからの社長の仕事』(ネットスクール出版)の巻末に私が書いた大木のイラストを記載しています。

 このイラストは二次元なのです。

 私としては「成長の流れをもっとリアルに表現するために三次元風にしたかった」と述べたところ、部会の参加者2名(佐々木研一氏、広川正人氏)からは違う意見が出て驚きました。

 お二人とも建築設計や車の設計などの業務に直接・間接携わった経験をお持ちの方で、建築物や車の二次元図を三次元にしてプレゼンテーションされた経験がおありのようです。「日本人には二次元が合っています、浮世絵なども二次元で表現されていますし、日本人はこれらを見慣れています、逆に、イタリア人は、3次元で表現するのが凄く得意で、特に車など二次元の図面を三次元のモデルへ展開するのは、非常に得意です。」と。

 日本人とイタリア人には明確に表現の差があるということを指摘頂きました。

「農耕型企業風土」づくりの経営

 それぞれの国で表現方法の差、文化や風土背景の差が歴然としてあることを事実として認識し、この差を経営の展開の仕方でも活かしていかなければならないのではないでしょうか。

 特に日本では日本の文化や風土に適した経営、「湿り気のある人間関係」を大切にしながら個性を活かしつつチーム力を強化する「農耕型企業風土」づくり(『これからの社長の仕事』に詳述)が大切であるとの私の主張に意を強くした次第で、これを主題としてこのビジネスコラムを書き続けています。