園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

経営の遊び

「無用の用」のエネルギーを意識的に活用していますか?

Posted on 2012-07-12

 「最近、無用の用を意識している会社が少なくなりましたね。」と、現在高齢者の健康サポートを指導している高橋勝君が呟いていました。組織の活性化には、いろいろな人材が必要なのです。

 成果が出て、その人が目立ったとしてもその原因は様々です。目立ちたがり屋の人は、一時的に成果が上がり収入が増えても、もし次の期に給料が下がったら、たとえ複数年の比較では給料が増加していてもモラールをうんと下げる傾向があります。

 何かの時には抜群の働きをする人材—「無用の用」

  会社内には地道な努力家が沢山います。目立たないだけです。いろいろな環境の影響で月次の目標が未達にもなりますので、目立たないところにも社長が心血注いでウォッチすることです。仕事場、飲み会などあらゆる場でウォッチするのです。人についての「無用の用」の気づきがあります。

 およそ有用で役に立つということは大事なことに違いないと思います。 しかし、「浅はかな人間の知恵で推し量られる有用が、本当の有用であるかどうかを考えさせられます。もう一つ上の、“道”(タオ)の立場から見れば、凡俗の輩の 有用などは取るに足らぬこざかしさ、いや愚かさに思えることもあるのです。」との主旨の内容がウィキペディアに記載されているのを見たことがありますが、なるほどと思いました。

 私は、ガチガチでなく多少余裕をもった人事をしていました。

 凡庸な人から見ると「無用の用」と思える人材も非常に大切にしていたのです。一見無用と見える異質な人材の存在もとても大事にしていました。普段は目立たないのに、たくさんの社員を盛り上げるイベントなどでは人が変わったように張り切り、人心をまとめる才能のある社員を、その才能を見込んで元気がなかった東京の営業に地方から転勤してもらったこともあります。効果は抜群でした。

 この様な社員こそ、意外に深い考えや違う視点に基づいて社員の心顧客の心をひきつけてくれるのです。最初は「能力がなさそう」と勝手に距離を置いていた社員も、彼の違った才能に気づきます。最初は「考えていることがズレてる」と顧客から出入りを断られていたその社員も真剣に対応するうちに顧客に受け入れられ「無用の用」的役割を大いに果たし、一緒に何か新しいことを手がけてくれます。時には、全く違う切り口で課題の解決の糸口を見つけてくれたりします。

プライドを傷つけて、マネジメントが上手くいきますか?

 社員個々人のプライドこそ一番重要なことです。

 2012年3月27日のTV番組で、いわゆるホームレスの特番を放映していました。この中に登場するあるホームレスの男性は、「炊き出しの世話にはなりたくない。」と、アルミ缶を集めて現金収入を得て生計を立てていました。「私にもプライドがあります。」と語っていたのが印象的でした。彼のプライドがある限り、きっと立ち直れると感じました。

 プライドについて考えさせられることがあります。能力的にはもうひとつで、頻繁に上司から指導を受けている男がいました。要は、他の社員より覚えが悪いのです。しかし、人一倍の努力家で、他の人の倍の時間をかけて一つのことを習熟する人でした。その仕事をすることにプライドを感じて対応する人で、彼がプライドをもって仕事をしていることを周囲の社員も知っており、応援の手を差し伸べていました。

 このような人をどうマネジメントしていけば良いでしょうか。クビにする選択肢も、最近のマネジメントスタイルではあるかもしれません。強制的に他の部門へ移動させて、自部門から排除することもできるかもしれません。しかしそれで全体最適になるのでしょうか?

 仕事は一生懸命しています。しかも、プライドを持って。プライドに傷をつけた場合、本人のモラールはもちろん、周囲の社員への影響をどう考えるかです。このことが分かる経営者こそ人の上に立つ本当のリーダーに育つと確信します。

組織に遊びの必要性

 組織的にも、あえて組織の遊びという余裕を意識していました。一見無用な組織があることで、何か新しい取り組みを実施する時に、その組織がものすごいパワーを発揮してくれることが多々ありました。

 CRMを中心とした組織の中に、コンテンツの開発部隊を新設したことがあります。一見、事業としての親和性がなさそうに見えましたが、組織にある種の遊びを持たせたのです。サービスの在り方がどのように生活者に受け入れられるかを直接知るための組織の先兵でした。切り口が違うので、新しいことに取り組む時には競合会社と全く違う発想を提供してくれました。