園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

折々の言葉 / 語り継ぐ経営

第287回 ミドルの重要な役割(1)

Posted on 2018-07-05

 最近いろいろなところでミドルマネジメントの役割の重要性に遭遇します。トップリーダーの存在の重要性は論を待ちませんが、それにも増して日本の企業を実質的に動かしているミドルの役割が重要です。

 特に、日本での経営では、変革のキーがミドルマネジメントであると言っても過言ではありません。

 

何故ミドルが変革のリーダーか

 何故でしょうか?

a) 文字通りトップと現場の中間の、自由な位置にいるからです。

 ミドルは、自分が実現したいことを自分の言葉で部下に指示できる立場にいます。このことがどれほど重要なことかは、大きなプロジェクトを動かしてみるとよくわかります。ミドルは、トップと現場をつなぐ自由な位置にいます。

 

b) 現場の情報に一番近い、しかも、マネジメントの立場にいるからです。

 ミドルは現場の地図にも詳しい。日常の状況把握から何かが発生してもほぼ察しがついているので、現場で現実的な対応がとれる。トップの指示は現実を改革したい思いが強すぎるので、時として状況を無視した指示が出やすいが、その意をくみ取って上手く調整できる立場にいます。

 

c) 実質的に動員できる部下が多数いるからです。

人員の動員は大変苦労することです。私は、沢山の人材を擁する企業でのマネジメントの評価の一つに「動員力」を挙げています。指示や指令がなくても「一声かければx人が集まる」状況が、何かを成し遂げる時に如何に重要かを知っているからです。ミドルはこれができる立場にいるのです。

 

d) 社内の政治力を発揮できる立場にいるからです。

 良いか悪いかは別として、公式と非公式の使い分けができる立場にいます。上意も下意も中間でのろ過工程を必要とする場合多い。その時に、ミドルの政治力の作動が益することが現実凄く多いのです。

 

e) 他部門のミドルとの交流を通じて、他の部門の知恵を拝借できるからです。

 何か仕事をするときには、仕事の受け渡しが必要となります。ここで結節点が発生します。この結節点での減価を最小限に食い止め、最終成果物を最善の形で仕上げるためには、他の部門との情報交換が不可欠です。その交換を通じて自部門の仕事を革新する知恵を拝借する機会でもあります。ここことを頻繁に実施しているミドルマネジメントからは、「情報が下りてこない」などの発言を聞くことが少ないのではないでしょうか。

 

以上のことを意識していないミドルが多い企業は、成長速度が鈍いことを目の当たりにすることが多いのです。

 

そもそもミドルマネジメントは何をする仕事かの再認識

  一言で述べれば、日常の業務遂行のために、部下にジョッブをアサインして部下の総動員と他部門の協力を得て、計画した結果をだすことです。すなわち、この仕事は、

a) 目標設定

b) 職務分担

c) 達成支援

d) 仕上げの検証と評価、更に、部下がレベルアップするためのアドバイス

をすることに分解できます。しかも、これらが繋がったサイクルであることが肝心です。

 こう述べるのも、これが出来ていないミドルが実に多いからです。それぞれの分解内容は次の通りです。

a) トップの方針がブレークダウンされ、それをうけて各部門の目標を設定します。

 それは、数字を設定する前に目標(Objective)という、目指す「こと」から始まり、それをやるためのキーになる達成数字を設定しなければなりません。これが曖昧だと、部下に職務の落とし込むときに焦点がボケた形となってしまいます。

 

b) 部下にはいろいろな価値観を持った人がいます。それぞれの目指すことを把握した上で、しかも部門のキーになる数字を達成するため、部下にジョッブをアサインすることになります。

 多くの企業で、ミドルも部下もなんとなく期の初めにスタートして、なんとなくそれで仕事が回っているので、ジョッブのアサインを軽視しがちです。しかし、部下からすると「自分は何を期待されている」のか非常に不安になります。結果として、マネジメントサイクルが上手く回らなくなってしまいます。

 

c) ジョッブがアサインされた部下が一生懸命仕事をしても、上手くいかないことが多い。予期せぬ事態が発生することもある。その場合、上司たるミドルが部下を支援しなければなりません。

 自分でできる支援と他の人の助けを借りることがあると思いますが、どんな方法でも部下への手助けを行うことが肝要です。

 上司と部下との信頼関係はこのようなことを通じて醸成され、マネジメントが上手く回るものと考えるべきです。

 

d) 一定の期間で、部下の仕事の検証をし、それを踏まえて評価することになります。

 この時重要なことは部下の人間を丸ごと評価するのでなく、期初に設定した、部下へアサインしたジョッブが達成されたか否かを中心に評価しなければなりません。ましてや、最初にアサインしていなかった仕事を「お前はやっていない」ことを理由に評価下げするのは、ルール違反です。部下とのヒヤリングを通じて、直接評価の内容と背景、理由を説明する。加えて、更に本人がレベルアップするにはどうするのが良いかなどをアドバイスして、部下の成長を支援する。

 

 以上を一つのマネジメントサイクルとして回していくのが、ミドルマネジメントの仕事です。当たり前に見えても、果たして皆さまがこれを意識して日常のマネジメントをしているかが問われます。

 

 

Related Posts