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リーダーシップ / 折々の言葉

リーダーシップ経験の積み重ねこそが決断力を養う

Posted on 2014-10-30

 ある経営者から相談を受けた時に感心したことがあります。アドバイスを受けた後の彼の迅速な決断力でした。決断に至るこのスピードに加えて、今後の戦略展開に於いて彼が正しい決断を出来れば、会社が更に大きく成長するのではないかと楽しみにしている経営者の一人です。

 私が考えるに、決断力が最良のものになるか否かは、その経営者のリーダーシップ経験の培い方と深い関係があるように思えてなりません。すなわち、決断は常に最良でなければ経営者の任務を果たせませんが、そのためには、日常の経営職の仕事の中で本人がどのようにリーダーシップを発揮しているかの経験態様と高い相関関係があると思えるからです。

 本日は、経営者が最良のリーダーシップを発揮するために普段の仕事の中で何に留意すべきかを述べ、結果として最良の決断力が発揮できるようアドバイスいたします。

 

1.事実の把握

 まず常に現実、現場をきちっと把握していなければなりません。

 忙しさ、物理的な距離とは関係なく、工場などの現場で起きている現実を常に明確に把握すること、その上で判断をすること、これがあらゆるリーダーシップの始点です。特に、間違った事実情報を基にした経営判断は悲劇を生みます。

 多少語弊がありますが、誤ったと思えるアメリカの大統領の決断の例です。大統領は自国の大義名分を貫くために、中東のある国と新たな戦争を始める決断をしましたが、その判断のベースとなった材料が、本当に事実を正確に反映していたか大きな議論になったことをご記憶かと思います。新聞報道などを通じて戦争開始の前提となる事実に国民が疑念を抱いたころから、大統領に対する信頼が失せ、彼のリーダーシップに陰りをきたすことになったのは、他山の石とすべき例です。

 

2.皆が納得する目標設定

 次に、目指す目標に善なるものが感じられるか否かです。

 先ほど述べたアメリカの決断の例でもしかりです。戦争を始めるに値する大義があったか否かが問われました。

 企業の場合では経営者の哲学や理念が会社の目標に反映されるケースが多いです。従って、会社が何のために生存するかの大義が重要です。社会の中で善と思われる生存領域で会社が生きているかです。会社の目標や考え方を誰が聞いても「そうだね。」と映る善なる目標が必要です。そうでないとリーダーシップを継続して発揮できなくなると考えます。

 1939年9月1日に第二次世界大戦が勃発し、ドイツがポーランドに突然侵攻、これに対抗して、すぐイギリスもフランスもドイツに宣戦布告をしました。特に、イギリスのチャ-チル首相の演説は国民の心をとらえたと言われています。彼は、前任のチェンバレン氏の取っていたドイツに対する姿勢と違い、ヒットラーと対峙して自由を守るべしとの明確な姿勢を持っており、それを言葉に発していました。チャーチル首相のこの演説にイギリス国民は、「その通りだ。」と大義を感じ、強制でなく自由のために自らが団結して戦ったのは歴史が語ってくれます。善なる大義で共感を得るのがリーダーシップの発揮にいかに大事なことかを如実に物語っています。

 

3.語り続ける

 次に、社員も含めて皆が、その目標に共感し賛同してくれなければなりません。そのためには、目標を実現するための全体のストーリーを語る力が不可欠です。一度や二度では社員に通じません。何回も何回も、少し言葉を代え、少し新しいことを付け加えながら、語ることです。

 前出のチャーチルは、いろいろな場所で自国民に対して語ることを忘れていませんでした。語ることの積み重ねが功を奏した部分もあり、このリーダーの下で対ドイツの戦いを遂行しようとの国民の賛同を得ることに成功していったのではないでしょうか。

 

4.リーダーとして、それなりの実績を造る

 社員の共感を得て、「その通りだ。俺も実践しよう。」と本気で彼らの行動につなげてもらわねばなりません。これには、リーダー自身がそれなりの実績を造らねばなりません。リーダーが示した目標が「実現できるのだ。」ということを、実績をもって示すことです。実績をつくるためには本人の能力がもちろん必要です。しかし、本人一人で努力するのでなく、経営者という立場上、支えてくれる人々の協力を得てはじめて実績造りに繋がることを忘れてはなりません。

 このために経営にあたる早い段階で、支えてくれる主要な遂行ポジションを適材で固めてはいかがでしょう。どのポジションが目標を実現するために重要なのかを判断し、そこに信頼のおける人物を配置することです。配置に迷いが出て一番重要なポジションのアサインにブレが出ると脇が甘くなり、その結果、リーダーが実績を出すのに遅れを生じ、社員からの信頼を勝ち取る時期も遅くなる失敗例をよく見てきました。こうならないように社員の協力を仰ぎながら、早い段階で経営者としてそれなりの実績をつくることがリーダーシップにつながります。

 

5.「場」を造り、任せる

 ある程度リーダーの実績が出ると、それに従う社員が力を発揮できる「場」を提供しなければなりません。「場」を提供して、彼らに任せることで、経営者の指示を誠実に実践すれば、「自分も上手く出来るのだ。」という自信をつけさせることで、業容発展のスピ-ドがつき、リーダーシップが地に足が着いたものになっていきます。

 

6.「分身」の育成

 しかも、これを組織として実践するには、経営者の「分身」を沢山育成できるかにかかっています。

 この頃になると、いろいろな「場」を通じた教育研修の重要さが増してきます。分身の育成で組織の広がりを持った展開が出来るようになれば、会社の成長スピードが増していきます。結果、本人のリーダーシップが増大したことになります。

 リーダーシップ経験の積み重ねがあっても、正しい決断に失敗することがあります。しかし、そうでない場合と比較し、リーダーシップ経験の積み重ねがある方が適切な経営決断につながるとすれば、日常のマネジメントの中でリーダーシップを意識しながら経験を積み重ねる意義がすこぶる大きいと考えます。

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