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折々の言葉

第185回 今の日本には「農耕型企業風土づくり」の経営が必要とされる(3)

Posted on 2015-12-24

前回の続きです。

 「ソフト面」の部分の基本的で主要な要素は次の通りです。

a) 信頼の土壌づくり

 社員が経営から派生することにも積極的に関心を払い、他方経営層が社員を、社員が同僚や上司を尊重し合う信頼の世界をつくることが第一です。

 信頼できる人にしか自分の仕事上のノウハウを教えないのは人間として一般的なことです。また、経営側が社員全員に考え方や方針を噛み砕いて何回も説明し、彼らの心や魂に訴えかけることで、経営層と社員相互の信頼をベースとした仕事場環境ができます。知識や情報の共有が一層可能となります。知識や情報を共有できることが、次の改善やイノベーションにつながりやすいのです。

 逆に、管理や監視の環境下では社員の自由度が無くなりイノベーションは生まれにくいです。信頼をベースとした自由闊達な環境下からこそ発想の自由が生まれるからです。

 

b) チームワークで強固な組織

 レベルの高いチームワークが重要です。

 私は小グループの店単位の経営を重視していました。構成人数の大小もありましたが、一番効果を発揮したのは、10人前後のグル-プでした。そこにしっかりとマネジメント出来るリーダーを据え置きました。

 この規模では情報の共有にも特段の仕掛けを必要とせず、しかも、グループが上手く作動し沈没しないよう全員が実力以上のクリエイティブなマインドと努力をおしまない雰囲気ができるからです。

 他方、そのチームのまとまりが良すぎて同質化のシグナルもウォッチしていました。時には同質な人材のグループ編成を意図的に破壊して、あえて異質な人材を入れて、一見まとまりの悪いと思えるチームを編成したこともありました。これで安逸から組織の活性化につなげたのです。

 組織は多数の小さいグループで成り立つことを目指してグループの長に相当な権限と自由度を託し、一定の枠内で本人が自由にグループをマネジメントできる組織です。この組織は、全体系が人間の心や集団の中で人間が本来あるべき姿を仕事環境でもできる限り実現することを基本とした経営組織です。

 ミドル・マネジメントを主軸として多くのグループ間でお互いにチームとして支え合う、助け合うシステム体系で、ほかのグループとのチャンネル接点の入口が多数用意されていますので、どこかの小組織(グループ)に突然何らかの障害が生じたとしても、類似した経営をしている他のグループからの補助・補完により、そのグループが速やかに再生可能となります。

 この補完機能が備わっていることで、全体が非常に強固な組織となります。

 

c) 勉強、勉強、また、勉強できる環境

 「構成社員の「知」レベルの総和以上には会社が成長しない」というのが、私の持論です。

 したがって、構成する社員自身が勉強、研修して成長してもらわなければなりません。

 それぞれの社員に発展段階の違いがありますが、各人が自己の「足りない」ことを常に意識してもらわねばなりません。グループに貢献するには、今の自分の知識や情報のレベルでは限界があること、自分が勉強して、知性豊かな人材にならなければグループに貢献できないことを認識してもらわねばなりません。

 リーダーたる上司は、皆がこれを実行できる「時間」と「場」の環境を与えることです。少しでも変化に対応できる知恵を個々人が増やすことにつなげられるからです。

 

d) 語り継ぐ人

 事の背景やあることを成し遂げた心意気などが、マニュアルでは伝わりにくいです。完全に説明できにくいことが多いからです。ここにストーリーの語り部の役割が必要となります。

 私の場合、これを「分身」と思える社員に手伝ってもらいました。一連の失敗や成功の体験を物語として語ることです。単に文字になっていることを読むのでなく、体験した本人が自分の言葉で部下に語ることがどれほど実のある教育・研修になるかを、私は実体験で学びました。

 「分身」を通じて語られるストーリーが彼らの心に残るので、眼に見えない威力を発揮します。この語りは営業マンだったり、部長が困難な局面を乗り越えた経験だったりしますが、聴く人の心に紙芝居的な映像として残ります。

 私自身は約20年の経営の中で、自らの苦難の経営局面を自ら社員に語ることは、ある時までは、約10秒だけでした。

 確か株式公開が出来た後の挨拶で、一言「本日、株式公開が出来ましたが、ここに至るまで過去苦難の局面があったことを忘れないで頂きたい。」と。 私からすれば、資金の工面経験などは、経験させたくない、彼らのマネジメントにとってはあまり役にたたない、もっとマネジメントにとって優先順位の高いことがあるとの思いが強かったからです。

 ところが、ある時、元、オリコの副社長だった田中顧問が、「園山社長、そろそろ昔の苦労した局面ことを知っている社員が少なくなったので、それを語った方が良いですよ。」とのアドバイスを強力に受けました。彼はその時は会社の顧問で、かつて裁判で死闘を演じた男です。「敵ながらあっぱれ」と、それ以前から長く役員を引き受けてもらっていました。

 これは会社の経営を引き受けてから、株式公開、そして上場と邁進し、大分時間がたった頃の2003年頃のことです。アドバイスに沿い、局長クラスの数十名に過去の倒産寸前の苦難の経緯を話したことを覚えています。局長クラスのメンバーが私の「分身」として自らの言葉で自分の部隊の部下にその内容を語り継ぐストーリーテラーの役目を担ってくれたことを記憶しています。さらに私の経営に関する考え方の浸透が増してきたことを覚えています。

 

e) 捲土重来のチャレンジできる制度

 失敗しても捲土重来チャンスを与えることです。

 私の経験を振り返っても沢山の失敗から学びました。特に若い頃、沢山の失敗をしました。上司から怒鳴られた経験もあります。顧客から出入り禁止を食らったこともあります。

 私が経営を引き受けた時には、このような経験がどれほど役にたったのかを思い知り、この趣旨を社内の人事制度に反映させました。

 挑戦して、仮に上手くいかなくても再度チャレンジして捲土重来を期す機会をあたえるものにしました。このことで現場の組織の活性化のみならず、「チャレンジしろよ!!」という私の言葉が偽りなく本気なのだとの評価が定着し、経営への信頼感につながったことを、以後社員から聞きました。社員が安心して仕事が出来たようです。

 

 

第184回 今の日本には「農耕型企業風土づくり」の経営が必要とされる(2)

Posted on 2015-12-17

前回の続きです。

 「農耕型企業風土づくりの経営」は、組織を構成する個々人に自分の仕事はしっかりやりぬくことを要請しますが、決して個々人を他の人と孤立する関係に置くのでなく、むしろチームとして助け合う関係に置きます。一緒に楽しく仕事をするもので、ましてや禁欲的な勤勉さを要求するものではありません。そのような働き方では会社と社員、社員間の信頼関係の醸成が疎外され、結果として社員の勤務期間が長続きしないからです。

 

日常的な運営の主役は現場の社員

 この経営では、企業が目指す戦略や目標がまず設定され、これを効果的に達成するための手段や行動の選択肢を社員に落とし込みますが、同時にその手段を上手く使いながら諸問題を現場で解決するもので、この経営の日常的な主役は、構成する社員そのもの、彼らの主体的なアクションの集合になります。

 経営層が決定した戦略や目的に表現されているある種の思想に、彼らが主体的に共感するには、経営層の常なる努力や熱き思いが必要です。これを何回も説くうちに社員の胸の内に落ちて社員間の連帯感が醸成され、組織が「燃える集団」化するのが理想です。結果として、日常の業務の中での日本的経営の特徴と言われる「改善」や行動の徹底化といった精神的支柱をつくることにつながります。まさに「企業風土づくり」そのものとなるのです。

 本年の12月中旬、大阪でかつての部下の飲み会がありました。30数名参加したとのことです。あいにく所用で参加できなかった私は幹事さんに一言挨拶を託しました。拝見した動画には、感激して言葉を詰まらせるS氏の姿などが映っていました。「企業風土」が「園山イズム」までのレベルに達していた証左を垣間見た感じです。彼らがリーダーとして独り立ちしてくれている姿を拝見したのが何より嬉しかったです。「企業風土」が人材づくりにつながったのです。

 

誇るべき「5S運動」と家族的連帯感

 そもそも日本で近代的な経営を導入しはじめたのは、明治の時代に入ってからです。当時の欧米流の経営を導入して、何とか欧米に追いとこうと、先人が並々ならぬ努力を注いだことには頭が下がります。

 欧米流の良い所を導入しつつも、片方で、日本で特色ある経営スタイル、いわゆる家族的経営スタイルも注目されてきました。これにより運用された5S運動」なども、日本企業の競争力の原動力となったのはご承知の通りです。整理、整頓、清掃、清潔、躾の徹底です。社員の活動の中にある種の家族的連帯感を植え付けることで生産性を向上させる手法です。

 実は、これが上手く作動した背景は当時の日本に終身雇用の制度があったからです。その企業に入社することは、先輩や後輩と一緒に家族として「同じ釜の飯を食う」感覚でその企業の発展に一緒に努力をし、自らもその恩恵を享受するという時代でした。

 

短期志向、数字先行の経営へぶれる

 しかし、第二次世界大戦後、というより1980年代ごろから欧米の経営が株主重視、数字先行型の経営に変貌してから経営がぶれ始めました。日本でもグローバル化の流れに乗る口実の下、1990年代頃には、短期志向、数字先行の経営に傾き始める企業が増えてきました。「5S運動」などに代表された日常の活動の中に改善を見つけ、それを徹底する行為の中で社員間の連帯意識を植え付けようとする余裕もなくなってきました。「短期的に利益を追う、数字目標のみを狙う、一株当たりの利益を上げること」が最優先され、それに直接的に役にたたない活動は非効率、非合理的として排除される傾向が出てきたのです。

 雇用形態も終身雇用から流動性のある雇用環境に大幅に変わりました。誠実に任務を実行していたが、何かの事情で残念ながら会社を去ることになった時、感謝の心を持って会社を去るという姿が無くなったのは残念です。反面、非合理的なことを極端に排除することで、社員の忠誠心を失い、ノウハウは伝承されず、結果として、企業の中・長期的は発展につながらないことが、心ある経営者にはわかってきました。

 

成長し続ける企業の特徴

 私が観察する限り成功をし続けている会社の特徴として、その呼び方はいろいろあるとしても「農耕型企業風土づくりの経営」の要素を備えています。すなわち、戦略や目的を重視することと併せて、社員間の連帯、信頼、チームワークなどを重視している企業が成長を続けているのです。

 他方、株主満足を前面に出し、コストや数字、サプライチェーンや資本効率のみを多くの企業が重視しています。

 勿論、これを無視した経営は成立しません。しかし、もっと卓越した企業になるためには私が言う「内臓部」の活動、社員行動にインパクトを与える「ソフトの面」を重視しなければならないと思います。

 

「ソフト面」の重要さ

 私のビジネスモデルを説明するために、「骨格部」と「内臓部」の関係を体系的に整理していますが、今回はこれを省き、「内臓部」の「ソフト面」のみに焦点を当てることにします。社員の自主的な働きぶりに直結するからです。

 

 

第183回 今の日本には「農耕型企業風土づくり」の経営が必要とされる(1)

Posted on 2015-12-10

 今の日本の経営には、私が主張する「農耕型企業風土づくりの経営」を必要としています。欧米型でなく日本独自の特色を活かした経営スタイルです。今こそこの経営方式を沢山の企業に広めていく必要を感じます。

 何故なら、欧米型の経営、特に株主のみを優先し極端に短期的な数字を追及する経営では、あらゆるところに限界が来ているからです。社員の会社に対する忠誠心は今や過去最も低く、ほとんどの社員が少しの給与差で転職を考えているとの統計資料もあるほどです。すなわち、最も重要な資源たる社員からもそのような経営に対する信頼性が下がってきていることです。

 

今、必要とされる経営スタイル

 私の主張する「農耕型企業風土づくりの経営」の方が、企業の中・長期的成長・発展を図ることが出来ます。この経営では、経営の定石を18に区分けし、これを大枠、経営の「骨格部」と「内臓部」に区分けます。エネルギーロスを少なくし組織を円滑に運営できる「仕組」も当然この中に入っています。

骨格部は、経営の戦略や目的を明確にして社員を一つのベクトルに持っていく仕掛け部分です。

 また、内臓部は、経営の戦略や目的を組織の末端まで浸透させ、社員が一丸となって連帯して活動できるための血液循環作動部分です。

 詳細は後に譲りますが、欧米型は、「骨格部」に力点を置きすぎる経営です。最近の日本でも欧米の影響を受け、残念ながらこの軸に偏る経営を見てきています。「内臓部」にうんと力点を置いた経営は、かつての日本の家族的経営スタイルです。

 

ビジネスモデルの「フォーミュラ」

 骨格部と内臓部の18の「定石」を上手く運用して、「農耕型企業風土づくりの経営」を通じて企業の中・長期的な成長・発展を図れるビジネスモデルの「フォーミュラ」は以下の通りです(参:『これからの課長の仕事』、『これからの社長の仕事』、ネットスクール出版)。

このビジネスモデルで成長するフォーミュラ(公式)

「いろいろな施策で社員を幸せにすると、本人(社員)の心理と脳の特定の働きかけにより社員のモチベーション、創造性、革新が高まってイノベーションをもたらし、本人と会社の成長に導く。」

これが「農耕型企業風土」づくりを通じて会社を成長させる「フォーミュラ」です。

この「フォーミュラ」を分解すると、

1.「対話をする」「場をつくる」などのいろいろなステップを踏んで社員を幸せにする努力をします。

2.この社員を幸せにするステップが本人の心理と脳の特定の働きかけにより、社員のモチベーション、創造性、革新性を高めイノベーションをもたらします。

3.このように個々人の社員の心を「わくわく元気」にすることが、チームプレイや人間関係を重視する環境と相まって個人の成長のみならず、組織集団のパワーアップをもたらし会社の成長につなげていきます。

この「フォーミュラ」の特色は、いろいろな施策や仕掛けを通じて社員の幸せ感を維持する努力が会社の成長につながることを意味しているもので、極論すると、会社の成長が社員を幸せにすることではないことを強調したものです。

 

欧米の短期志向の経営スタイルからの揺り戻し

 私は、過去約20年間の経営を通じて、これらの双方のバランスを貫く経営が重要なことを実証してきました。日本人を中心とした経営組織集団で成功する秘訣とも言えます。同種同文のアジアの地域でも同様な経営が必要と考えますが、個人的にこれは未実施です。

 この経営に「農耕型企業風土づくりの経営」と名前を冠したのは、余りにも欧米型の経営が跋扈し出して、「内臓部」の構成要素である社員のチーム力や働く人々の個性や意欲を軽視した経営に対する揺り戻しを強調し、日本的な経営の良さを敢えて前面に打ち出し、軸を戻すためでした。

 組織の一員として、ビジネスマンである前に皆一人の人間であること、その人間が意欲を持って主体的に何かを成し遂げようとするには、働きやすい特定の環境、私の言葉で言えば、良い「企業風土」なるものが必要であることです。どんな崇高な戦略や目的を経営者が明示しても、これが構成する社員の思想にまで浸透しなければ絵に描いた餅です。社員が連帯して戦略目標達成に向かって活動する姿こそが、まさに生きた経営の醍醐味です。

 「ほんとに楽しく仕事をさせてもらいました。お蔭で、他の会社の良さ悪さが瞬時につかめ、改革の方向がすぐ分かり実行に移せます。沢山学ばせて頂いたお蔭です。」と、かつての社員からの感謝の言葉を聞くにつけ、社交辞令を差し引いても、社員も含めた全員による「農耕型企業風土づくりの経営」の良さを彷彿させてくれる表現だと思っています。

 経営側にいた私こそ感謝の言葉が自然にでるほどの一体感ある会社づくりでした。これほどトップの経営層と一般社員層との距離が短かったのかと、いまさらながら「農耕型企業風土づくりの経営」の良さを痛感し、この良さをもっと広めたい気持ちでいっぱいです。

 

第182回 嘘のような話――こんな上司の下で、部下が仕事をできるのでしょうか?(2)

Posted on 2015-11-26

前回からの続きです。

 

クラブの経営の諸問題とその解決案の趣旨内容のまとめ

 上記と並行して、Y氏はクラブの委員会活動を通じてこのクラブの経営上の諸問題を分析して、それに対する解決案を相当の日数をかけてまとめ上げ、理事会で報告をし、理事各位の意見を集約している最中だったようです。それを理事会で決定して、これまで長年先送りされていた諸課題を順次に解決することで、クラブを将来の安定経営軌道にのせる策を具体化させる矢先でした。

 当然その中に、Web営業施策を自社社員で運営することで、値付けの実質的決定権や営業行為の自主運営も入っておりました。この実行部隊の主たる役割を果たすのに先のS氏などを想定していました。

 

S氏の批判を吹聴する上司のA理事の奇妙な論理

 ところが、採用責任者で、S氏の指導にあたる立場の直属の上司のA理事が突然、S氏のやっていることは「大したことでないことが分かった。N氏などもそう言っている」、「他の給料の安い社員でも対応できる程度だ」などの趣旨を発言し出し、これを他の責任あるポジションの理事に喧伝したと思える節が出てきたのです。

 Y氏には、晴天の霹靂でした。

 そもそもここ2年間、移行のために見える具体的な努力を何もせず、S氏を採用して初めて、現契約でコンサルが実施している業務の内容がプロの眼から明らかになったことを喜ばないといけない立場のこの責任者が、先の発言をしたことに、余りの驚きで当方正直開いた口がふさがりませんでした。

 論理が全く逆だからです。容易な業務なら、何故そんなに高額のコンサルタント料金を2年間も払い続けてきて、それから脱極の具体策を何も講じなかったのかの不作為が問われます。

 むしろ、容易なら移行がしやすいことを、S氏が入社し彼がミッション(仕事)を遂行したことで明確になって嬉しいと、S氏に感謝しなければならない立場の筈です。私が上司ならずとも普通の人はそう思います。

 A理事の発言などを聞くと、「これぐらいの業務なら他の人で十分」、「彼は他の人とのコミュニケーションが良くない」、「報告の内容に深さが無い」などなどの内容でした。S氏を排除するための論理から出発していると思われる内容とのことでした。

 挙句の果てに、事務現場の業務を通じてS氏と一度も現接点を持ったことのない、他の責任あるポジションの理事の方々までも、A理事の評価に口裏を合わせたごとく同じ内容でS氏を批判し、彼の人格を全面否定する内容の報告書を挙げる始末の由。

 ゴルフ場と言わず普通の組織のトップ層が、公文書として社員を個人攻撃する内容の文面を出す恥じらいすら感じない内容を、Y氏は目にしたようです。

 現場の社員を育成し、現場を強くする考えなどみじんも感じられないほどの内容とのことです。その内容のひどさは、Y氏ならずとも、他の会員が読んだら、何かの作為的な意図を感じる内容のようです。

 およそ、新人を正式に雇用したら、上司によるしっかりとしたマネジメントがあるべきなのに、それがないまま、突然、だめ押しする上司や組織などあるのでしょうか。

 N氏をはじめ現場の特定の人からの悪口情報を丸呑みにしたのか、S氏のようなレベルの高い人が入ることで力量がばれるとでも思い、裏で「排除の論理」を操作したのか、A理事が使いにくいと思ったかは一切不明ですが、それにしてもマネジメント側の責任は全く不問とは、働く部下こそが可哀そうです。

 普通の組織では、まず上位の人びとが率先して責任を感じるのですが、こちらはこの常識とは全く逆、全て、「下が悪い」の論理と見受けます。

 

コミュニケーションは双方の責任と努力でグレードアップ

 S氏が入社後のコミュニケーションの良し悪しは、通常本人と上司双方の責任です。

 長年の経営経験があるY氏には、一方だけが全面的に悪いというA氏やN氏の考えが、組織のリーダーとして余りに素人的にしか映らない模様です。 双方の価値観の違いや仕事のやり方に関して意見を戦わせながらそれらを解決するのが、マネジメントのイロハだからです。

 自分がんなに立派な人間かは分かりませんが、もし、このようなことがクラブの経営層に日常的にはびこっているとしたら、今後クラブや会員がどうなるかは自明です。

 そもそも何故、何の目的にS氏を採用したのか?移行が目的ならより大事なことは、コンサルタントからのスムーズな移行が出来る素養を持った人なのかの評価がポイントなのに、それの視点には全く触れず、S氏の人格の全否定の個人攻撃のみ。

 

環境が人を育てる

 そんな環境で人が育つのでしょうか?

 既存の社員のレベル以上の異質な人を入社させないで、どうして組織がレベルアップし、改革等出来るのでしょうか。現状の現場の人より潜在能力が高く異質な能力を持った人が入社しないことには、この組織がだんだんグレードダウンすることにつながる傾向が出ることが多いことが、Y氏には経営経験で分かったようです。

 

解雇通告

 入社から3か月後の10月過ぎに、財務担当のA常勤理事からS氏に解雇通告が出されたと聞きました。これに対して、S氏は解雇の理由が相当でないと考えていると外聞しました。

 このような経営をしていると、会員の不満足度があがることにつながることこそがクラブの根本的な問題であることを、常識人たるS氏は分かっていると推察します。

 S氏は不当解雇としてクラブの経営層に反省を促すという姿勢を見せているのではないでしょうか。働く意思があるので解雇通告後の翌日も出勤して訴えていると聞きます。

 結果として、クラブのWeb営業の自主運営の目標が、また先送りで元の木阿弥状態になりかねません。

 

もし、皆様がこうなったら・・・

 もし皆様が、新しい職場で上司から何の具体的な指導もなく、潜在的な力を見抜く力のない上司や周囲の取り巻きの批判意見のみを汲むような職場環境で、毎日駄目だしされているとしたら、社員として前向きに働くエネルギーが湧くのでしょうか?

 この組織を良くしようとの「志」を持ったS氏のような人を、このような扱いにしてよいのでしょうか?

 嘘のような話ですが、Y氏から聞いた話です。

 皆様がこのような上司にならないために書きました。「志」を削ぐのは簡単です。しかし、「志」を持った人を見つけ、異質性を組織に導入するのは卓越したリーダーシップが必要です。

 蛇足ですが、ある月の理事会の議事録を決議通り記載せず、違う書き方をしていたことにも、Y氏は驚愕しました。

 前月の理事会で、ある月からコンサルタント会社の業務移行をすべく契約解除の通知をする主旨の決定と手順を決めておきながら、何と議事録には、違う記載があったのです。この記載には、議事録を作成する側に今後持っていこうとするストーリーとの矛盾をきたさないように表現を変え、気づかれないうちに議事録を承認させようとしたのではないかとの悪意を感じたと、Y氏は言います。そうであれば、貴重な時間を削り理事会に出席して意見を述べた方々にあまりにも失礼ではないでしょうか。

 当然Y氏は議事録が違うことを指摘しました。それに対して特定の方向に持っていきたい責任あるポジションの理事陣からいろいろ説明がなられても、S氏の個人批判のみで、本件の違う記載とは言々の違う話で、Y氏は全く納得いかなかったとのことです。

 このようのことが公の組織で実際に行われているこの事実も、皆さん他山の石とすべきです。

 組織が破たんをきたすのは、「志」をもった方々が既存の体制や陣容に圧殺されるからです。マネジメントが何たるか、どのような組織が中・長期的な発展につながるかを、本コラムをお読みの皆様、是非お考えいただきたいと思います。

 閑話休題を、お読みいただきありがとうございました。

 

第181回 嘘のような話――こんな上司の下で、部下が仕事をできるのでしょうか?(1)

Posted on 2015-11-19

これは最近どこかで現実に起きたと聞く話です。

まさかと思われる人もいるかと思いますが、未だに、こんな経営をしている団体があることがY氏からの話で分かり、いたたまれない驚きを覚え、今日コラムにあげました。

2回に分けて記載します。

是非、上司たる者、経営者の方々、この団体を良くしようという「志」をもって取り組んだY氏やS氏の話と行動を、他山の石としていただければ幸いです。

 

他力依存と思われるこのゴルフ場

 どこかにあるこのゴルフクラブは、ここ数年資金不足といろいろな不祥事が起き、経営不安の風評が会員間に広まり、驚くべき数の退会者を出すことになりました。

 結果として退会会員の預託金の支払いができず、経営不安に輪をかけました。過去の会員から預託金支払いの裁判を起こされる状況も出てきましたが、退会者の一部に、個別に預託金の支払を免除・猶予してもらい、何とか資金の不足をカバーしてきたようです。

 かかる状況下、営業、特に、Web営業の最も重要な部分を第三者のコンサルタント会社に委託し、価格政策など営業の重要な部分のほとんどを実質的にこのコンサルタントに依存、すなわち、実質的に経営の重要部分は、契約上利益責任を持たない第三者に託したままの他力依存状態になっていたようです。

 集客のためプレー費の値段をどんどん下げ、周辺競合社間では実質的な低価格リーダーとの評価で、沢山のビジターを入れる状態でした。コンサルタント会社には満足する契約の仕立てになっています。しかし、クラブとして利益を出すために、とにかくビジターを入れ込み混雑でプレーに時間がかかるなど、会員の満足度は下がる一方で、この経営に諦めた会員がまた退会する羽目になっていたようです。

 

中期経営計画の骨子の趣旨内容の詰めで将来構想を練ることへの反応薄

 この頃Y氏に、ある人から理事の依頼が来ました。クラブの中期経営計画の策定などの道筋をつけて自主再建をするために、引き受けて欲しいとの依頼に、Y氏は引き受けざるを得ない破目になり、何とか大車輪でクラブのために責任を果たしてきたようです。

 Y氏やほかの会員からの情報によれば、総会での理事の選任もほとんど裏取引のやらせの世界に見え、一般的な意味で公明正大と言える方法ではなかったようですが、本題から逸れるのでこれには今回は触れません。

 早速、Y氏はクラブの委員会活動を通じて中期経営計画の骨子の内容を理事会にあげました。この骨子の摺合せ無くしては、実のある中期計画の策定などに無理があることなど、経営したことがある人なら誰の眼にも明らかですが、以前からそのポジションにいた既存の責任ある理事の肩書を持つ方々の反応が何とも薄い。

 この骨子を詰めましょうと言う新任の理事が若干いても、実質的に経営に深くかかわっている件の理事陣が反応薄というその経営センスを見て、過去の経営不安の根本原因は、理事陣の不作為に負う部分が多いのではなかったのではないかと推察すると同時に、経営の専門家がいないと思えるこのクラブの会員が、会員たる権利が満たされないでいる不満を肌でに感じ、Y氏は何とか軌道修正を図るべく努力をしてきたとのことです。

 

Web営業の自主運営の道筋――システム担当能力のある人物の紹介

 先ほど述べた通り、Web営業全般を第三者のコンサルタント会社に全面委託して既に2年経過。未だに多額の金を支払っている状況でした。

 この事態に対して、Y氏は早期に経営の要の営業行為を自主経営にすべきとの提案と同時に、Web営業を上手く移行するにはシステム経験者が必要と考え、適任者を採用できるよう複数の候補者から絞ってS氏をクラブに紹介をしました。

 Y氏は、数か月前から計画していた海外旅行中だったようですが、旅行先の合間を使って日本にいる友人に採用候補を捜してもらい絞り込み、帰国後面接してS氏をクラブに紹介しました。ゴルフ場での経験は無いとしてもシステムのベテランで、しかも最近のスマホなどの技術にも詳しい男で、横浜から約1時間半かけて通勤してでも、このクラブの自主経営のために努力しようと秘めたる決意をもっていた優秀な男です。

 Y氏がS氏を中心にWeb営業行為の移行の考えを説明すると、責任あるポストの理事陣から予想通りいろいろな反応と反対がありました。

 Y氏は確信していました。このクラブにはシステムを分かる人が必要であると。そこで、そのシステムの理解が深い人を中心としてWeb営業を自主運営に移管する主たる役割を担わせることが適当と考え、この目的でY氏は財務担当で面接責任者のA氏などにS氏を引き合わせました。

 ところで、ここに登場する人物は、Y氏の他、財務担当でゴルフクラブに常駐し採用責任もある理事A氏、実質A氏の指示で動く支配人代行のN氏、A氏の影響下にあるように行動する責任ポジションの役員数人です。

 

正規の雇用の手順――条件の確認

 採用責任者のA理事と正規の面接より前にS氏の年俸も打ち合わせ、S氏の面接を正規のルートで行いました。Y氏は立会人として、面接を見守る立場。A理事は「理事長でなく自分で年俸や採用を決定できる。」と、豪語していたのもこの時期でした。

 奇妙なことが発生したようです。A理事の採用面接を経て採用決定になってから、S氏から「Yさんからの話と条件が違う」とクレームがありました。驚いたY氏が激怒してA氏に電話で確認したところ、A理事が自分で判断したとのこと。

 この分野は引っ張りだこで一般的にはS氏なら1000万円の相場が払われても不思議はないものを、何とか苦しいクラブの台所事情に配慮してもらい年俸x百万円でS氏も納得したのに、A理事がそれより50万円低い金額にしていたことが分かったのです。

 Y氏はメモを取る習慣があり、そのメモを見てもA氏や責任ある理事の方々もこの金額を納得済みであったことは間違いありません。というより責任ある他の理事の方々は、クラブの先行きのためこの採用の重要性を認識が薄かったのではないかとしか思えません。

 そこで、Y氏はA理事と電話で話し、既に組織として採用責任当者がx万円を言い渡しているのであれば、解決策として試用期間の3か月後に当初の約束通りの金額に戻すことで話を軌道に乗せたとのことです。

 ともかく、雇用の重要な条件確認を、採用担当のA理事が失念したのが、以後の諸々のトラブルの原因といえます。

 

S氏の当面のミッション(仕事) 

 S氏の当面のミッション(仕事)は難しいものだと推測されます。

 契約しているコンサルタントが常駐していたので、A理事の判断でシステム担当ということで、常駐のコンサルタントの傍に座り、言葉は悪いのですが彼らのノウハウを盗むというものです。コンサルタントが何をどうしているかを、事前にある程度知る必要があるからです。

 当然のことで、コンサルタントは察知します。契約が無くならないように、ノウハウをブロックしようとするのでしょうが、その環境下でも相手から情報を得るというのがS氏のミッション(仕事)とすることで、Y氏はA理事をはじめ他の責任ある理事陣と確認したこと済でした。

 S氏の精神的プレシャーは相当なものだったと想像します。

 皆さん、想像してもお分かりの通り、採用になったS氏の役割は、極めて微妙です。コンサルタント会社が現場に担当者を置いているので、S氏は自分の立場を明確には言えません。システム担当者として紹介しても、すぐ意図を気づかれます。コンサルタントの近くにいて極秘裏に彼らの営業行為のエッセンスを探るというのが本当の任務ですが、このミッション(仕事)を8月1日から約3か月間与えられ、S氏も忠実にその任務を全うしていました。

 S氏の提出したレポートの内容と会議での報告を聞くと、コンサルタントのやっていること、やっていないことが分かるものでした。Y氏も不用意に事前情報をS氏に与えると、実体を知ることに障害があると考え、事前に情報を一切与えず、S氏自身の情報収集努力に任せていました。3か月間は業務の円滑な移行のための必要な知識を蓄え、その後の考えを頭の中で整理して、コンサルタントへの正式な通知を出した時点から、ご協力いただきながら彼が正式に深くコンサルの業務に切り込むための段取りを踏んだ手順を、Y氏は想定していました。

ところが、・・・。