園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

コミュニケーション

社員を本気で叱り、本気で指導していますか?

Posted on 2012-07-05

経営者の率先垂範

私は「園山征夫の経営」を本気でしていました。

自分ではそう思ったことは一度もありませんが、会社が上場を果たした頃、特に、「親会社の役員陣からは『天皇とかワンマンとか揶揄されています』」と、親しい人から聞かされたことがありました。

この言葉の裏側には、ワンマンでは駄目だという解釈があるかも知れません。しかし、私は、良い意味のワンマンでなければ中小の規模の会社を引っ張っていけないと思います。先ほどのような批判はコンサルティングを専門にしている、経営を知らない人が言う言葉です。先頭を切って「私に続いてきてください」と引っ張っていく人でないと競争には負けてしまいます。また、見よう見まねで社長の真似をしても、「ついていくぞ」と思う部下が沢山いない限り、その会社は沈没してしまいます。

このように社長が率先垂範して事にあたる時、社員からの信頼を深め、方策に共感を抱いてきます。また会社として成果も出てきます。成果が出てきだすと、小さい成功よりも大きな成功を望むようになり、部下への指導も変わってきます。

こうなると、本気で指導するために小さい成功で喜んでいる社員は叱り飛ばす場面も出てきます。沢山の社員を雇用して、その家族も含めた「社員の幸せ」を実現するために重荷を背負って経営していくから当然のことです。従って時には、「冷たい男」と呼ばれるかもしれません。しかし、「小善は大罪に似たり」で、小さい成功を褒めても本人のためにならず、「大罪は非情に似たり」のごとく、責任ある立場の人は時に非情に振舞い本気で社員を叱らねばなりません。

コミュニケーションの「場」で本気で指導

厳しく指導するだけでなく、いろいろな「場」でのコミュニケーションも大事です。

「飲み会」と称する場にはどんどん出ていきます。この様な場は、車座になって皆で語り合い意見を聴き、社長の考え方をじかに伝えることのできる最高の場です。私の場合、最も大きなコミュニケーションの「場」は事業計画発表会第二部の宴会でした。

全国から集まる社員になるべく沢山会い、酒を注ぐ。中には酒を注いでも嬉しそうな顔をしない社員も出てきます。不信感を抱いている社員です。この時を捉えて、「機嫌が悪いな。どうした。もっと飲めよ!」と、彼から本音を引き出す努力をします。ほとんどの場合は本人が自分の努力の無さを棚に上げて、ひねくれた状態で不満を持っているケースなのです。この様な社員とのコミュニケーションの「場」を通じても本気で指導をしていました。

 

嫌われる仕事をする社員の「やる気」をどう高めていますか?

Posted on 2012-06-07

 「仕事に貴賤上下はない」と、いくら言っても、一般的に人が嫌う仕事があるものです。今は「3K」とか言われている仕事がありますが、私が経営を引き受けた当時の1990年頃は、そのような言葉を発する余裕があったかどうか記憶にありません。

 それでも現実に下請け的な立場にある中小の企業では、一般的には人が嫌がる仕事に従事されている社員が多いのではないでしょうか。ほとんどの会社ではこれらの業務が収益源かもしれません。したがって、この人たちの「やる気」が問題です。

人が嫌がる仕事のモチベーション

 私が関係していた会社の最初の頃の主要な収益ソースは、秘書代行業務や他の人が眠っている夜間帯の仕事でした。当時はこれらの業務からの収益比率が90%ぐらいだったと記憶しています。苦情が多い業務、夜間帯の業務という理由から誰もが喜んで引き受ける仕事ではありませんでした。

 私は以後、意識的に会社のビジネスモデルの転換を図っていきましたが、これらの業務が会社の原点であるとの認識を常に持ち、何があっても、これらの業務は大事にしていきました。

 当時この業務に携わっていた方々の顔が今も目に浮かびます。この社員たちが会社の屋台骨を支えてくれました。彼らと熱心に議論したことが、私のノートに記してあります。心から感謝しています。

 秘書代行業務は、秘書を雇用しないでその機能の一部を電話で代行する仕事ですが、顧客との「言った、言わない」のトラブルが発生する業務でした。

 当時は通話の録音機能も限定されていたため、手書きのメモを頼りに対応し「電話したのに何故つながらなかった、適切に対応してもらえなかったので大きな不動産取引が没になった。どうしてくれる。損害賠償だ。」などと、電話口でしつっこく責め立てられるようなこともある仕事で、これに嫌気がさして担当の社員がやめてしまう事態も発生していました。クレームの電話をした人の関係者が会社に押しかけてきたので、私自身も苦渋の対応したことを記憶しています。

 また、夜間の仕事の例として損害保険会社の業務の代行として自動車事故の第一報受付業務などがありました。その時の事故状況を明確に把握・記載しておく必要があります。このような事故の発生は時間を問いません。事故直後の特別な心理状態にある中で、事故の正確な把握のためとはいえ夜間業務の対応者が投げかけた無用な言葉で、事故を起こした人の満足度は一気にさがりクレームにつながりかねません。

 細心の注意を払ってもトラブルに発展する可能性を常に秘めています。電話口の向こうの人に「感性豊かな対応」をするのも結構難しい状況もあります。多少の時給のプラスをしても皆が嫌う仕事で、彼らのモチベーションの維持は大変でした。

 仕事のやりがいを説く経営者の努力と社員のモラール

 このような業務を担っている人々に対してどうモラールを高めるか。私は経営者として考え抜きました。そして「コミュニケーション・サービス」という新しいコンセプトを打ち出したのです。

 これを基に仕事の社会的意義を説くことです。とにかく執念を持って説くことです。「皆さんの仕事はコミュニケーション・サービスを提供してエンドユーザーの顧客満足度を高めることです」と、「単なる『言った、言わない』の伝言ゲームでなく、ビジネス上のコミュニケーション機能を担っている非常に重要な仕事です」。

 さらに、「一年365日、一日24時間ビジネスは眠りません。夜でも人が生活している以上、自動車事故は発生します。誰かがこの重要な仕事を引き受けなければなりません。夜間の予期せぬ事故に遭遇した人に『感性豊かな対応』をすることで、事故を起こした人に安心感を与えることは、社会的にかけがえのない重要な仕事です。できれば『良い対応をしてもらい安心しました』と顧客から感謝の言葉をいただけるように努力をしてください。」と、新しいコンセプトに絡めて彼らの仕事の社会的意義を説きました。

 私が、時には幹部社員の塩森君や石田君が先生となって彼女ら、彼らに説きました。

 心理学も含めてうんと勉強もしました。ちょうどこの頃米国で、顧客満足のマーケテイング上の意義についての議論が盛んになっていたので、書籍を買い込み知識を体系化し、現場視点で顧客満足の重要性を本当に真剣に説きました。また、同時に日本のマーケテイング業界にも顧客満足についてのメッセージを発信しつづけました。

 コンセプトが浸透するにつれ、社員も自分の仕事の社会的意義を理解・納得し、自分の仕事が一段上の段に上ったと認識を持つようになりました。彼らの仕事に対する態度が変化したその瞬間を、私も一緒に体験したのです。

 新しいコンセプトをもとに、人が嫌がる仕事をしている社員に社会的に意義ある仕事をしているプライドを植え付けることに成功したのです。