仕事の仕方
第240回 「考える習慣」を「仕事の仕方」に根付かせる
優秀な社員が少ない会社の生産性が低いのは、ある意味で起きるべくして起きたことです。この場合でも、仕組みの整備などで補完して生産性を一部高めることはできます。
ところが、優秀な人が沢山いても、生産性が結構低い会社をよく見かけます。何故でしょうか?
「仕事の仕方の本質的なところ」を軽んじているからです。
では、何が原因でどのような現象が起きているのでしょうか?
1. 社員は優秀だが、考える習慣が無く「仕事を捌く習慣」が根付いている
「何故忙しい?」でなく、とにかく「忙しい、忙しい」という発言が多い会社に起こりがちの現象です。
仕事量の全体が多すぎるのか、しなくても良い仕事を以前からの習慣でやっているのか、仕事の手順が下手なのか、発言の背景にはいろいろあります。
このような場合、毎日遅くまで残業し、大量の仕事をこなす人が優秀とされる傾向が強い。
あるいは、何かのトラブルや不具合が発生しても、とりあえず丸く収める調整力のある人が評価される。
果たしてこれで良いのでしょうか?
目の前の仕事を対して、如何に早く捌くかに忙殺されてしまっています。明らかに、人や組織に「何故そうなのか」の「本質的なことを考える習慣」が衰え、結果として、組織のダイナミズムが失せる傾向になってしまっています。
2. 社員は優秀だが、調整力が重視される組織になっている
こうなると、「迅速に捌く」ための組織活動に重点を置く形になってしまいます。
関係部署との無用な摩擦を回避する調整力に努力し、キチットぶつかる力が組織から吹っ飛んでしまいます。
本来組織として重要な、本質についての議論が回避されてしまっている。目標に対して価値観を共有し、その実現にむけて意見を出し合い解決策を見出すプロセスが、組織からなくなってしまっています。
3. 先入観を下に早く結論を出し、その方向にぐいぐいと部下を引っ張っていく人が評価される組織や人事になっている
過去の成功体験から、すぐ安易に結論を出してしまう癖がついている。この方法では時に間違った結論になるかもしれないのに、他の人との意見交換を怠り、一気に結論に至る。
このような組織では、何の価値を目指すために仕事をしているのか仕事の意味まで考え抜く習慣がなくなってしまっている。「はい、やります」といわれる通りの人間になってしまう。
すなわち、どんなに優秀な人でも、部下とのコミュニケーションを通じて「考える力」が弱くなっているのです。当然、新たな価値を生むことに考えが湧かなくなる。
このような組織では、逆に結果責任を重くしている傾向があります。部下からすると、上司の判断のみで初めに結論ありきでやった仕事の結果の責任を取らされるので、部下のモラールは下がって当然です。
4. 社員は優秀だが、自部門のみのエキスパート人材になっている
また、このような会社では人の育ち方がいびつになります。
一つの部門のみに長くいるほうが仕事を捌く能力が身に着きやすいので、どうしても同じ組織に居続ける。そのため、会社全体や他の部門の利益には無関心となりがちです。自部門のみに通じるエキスパートで他流試合が出来ない人材になっていることが多いです。
視野を広くして自分のミッションを考え直して、新たな視点で物事を見る癖がなくなる。
自部門のみのエキスパートが組織全体の活性化とレベルアップを完全に止めてしまう。私が組織内のローテーションの必要性を常に説いているのは、これを回避するためでもあります。
5. 社員は優秀だが、先入観ですぐ結論をだす
会社の方向性なども、環境の変化や事実関係の如実な把握から出すのでなく、ある種の「先入観」で出しやすい。
過去もこの方法で上手くいっているので、今度もこの方法で行くことが正解だと結論を導き出し、新たな発想からの議論が湧かなくなる傾向が強い。広くあまねく、良い知恵を自社の経営に生かす姿勢が欠如してしまいます。
総じて言えば、上記の現象が起きないためには、組織全体が「考える習慣」を身に着けることが肝要です。
そのためには、上に述べたことを意識して少しでも改善する努力をしなければならない。しかも、まずマネジメントの上位に位置する方々からやらなければなりません。
皆様の会社ではこのようなことが発生していないことを祈ります。
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