園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

仕事

第206回 今、リーダーに求められている経営の視座(1)

Posted on 2016-06-16

 私は以前から「農耕型企業風土づくりの経営」を主張しています。人間関係も含めた日本の伝統的企業風土の良さを最大限生かすには、この経営が適しているからです。

 この詳細は、『これからの課長の仕事』、『これからの社長の仕事』など私の書いた本に譲りますが、今回は少し別の視点で、この経営の良さに4~5週間かけて触れてみます。

 

アメリカのモチベーション重視経営

 実は、アメリカでも私の主張とほぼ同様な議論があるのを見つけました。

 幸福な職場では社員が最高の仕事を行っている、その環境を整えるには下記のことがポイントであると、モチベーションを専門とする社会心理学者のロン・フリーマン氏が『最高の仕事が出来る幸せな職場』の中で述べています。

 内容的には、私が「農耕型企業風土づくりの経営」で主張している18の「定石」とほぼ同じです。アメリカでも社員のことを最優先して考える経営こそ、会社成長の秘訣であると正当に主張できる証左をこの本でみつけ、私の主張に意を強くしています。

 その一部を紹介します。

・失敗を奨励すること。

 スティーブ・ジョブスはAppleなどで多くの失敗をして、iPhoneを設計しました。グーグルの元CEOのエリック・シュミットは2010年にグーグルウェブの開発を中止した時に「私たちは失敗をたたえる。難しいことに挑戦して成功しなくても、そこから学び、新しいことに活かすことが出来ればよい」と言ったと、この本で紹介しています。

 皆様がご存じの例かもしれませんが、会社内部で失敗自体を奨励しないまでも、批判しない環境の重要性について、私も同じ意見を持ちます。

・業務時間内に遊びを組み入れること。

 人間は幸福の状態を維持するのが下手で、ある状態が続くとそれがすぐ当たり前になる。この順応プロセスを遅らせるために、遊びや散歩などの変化の頻度を多くすることをロン・フリーマン氏は奨励しています。リラックスした時にアイデアが生まれるからです。

 しかも、変化が順応を遅らせるので、熟考するにもまして、あえて本題とは無関係な事に気を紛らわすことも奨励しています。

 私が、経営の中に遊びを持ち込み、イベント、配置転換などで変化を経営上重視していることとほぼ同じ内容です。

・社員同士が親密な関係を築くことを助けること。

 仕事場のコミュニケーションをよくするために、誕生日会、昇進を祝う会などのイベントを薦めています。

・自主性を与え、内発的動機づけを促すこと。

 意思決定の権限を与え、学会やセミナーへの出席を促進する、時には、褒章として旅行切符を手渡す方法などで社員の内面的な動機づけを重んじています。

 まさに現場に最大限の権限を付与し、現場社員が自主的に行動する経営が大事だと、私が主張していることと同じ内容です。社員の自主性はモチベーションに極めて重要なことです。

・効果的なフィードバックを行うこと。

 必要な指摘や指導を、同僚の前で発生の時に行う。

 著者の主張は上記の通りですが、私が述べる「農耕型企業風土づくりの経営」でビジネスを成長させることと同じ主張です。

 私のポイントを、経営の「フォーミュラ(公式)」や「定石」として以下の通り整理しました。

 

「農耕型企業風土づくりの経営」の「フォーミュラ」

 この「フォーミュラ」は、

 「いろいろな経営施策を通じて社員を幸せにすると、本人(社員)の心理と脳の特定の働きかけにより社員のモチベーション、創造性、革新性が高まり、経営のイノベーションに積極的な影響を及ぼし、本人と会社双方の成長を導く」というものです。

 このフォーミュラを分解すると、

1.「対話をする」、「場を作る」、「現場に任せる」などのいろいろな「定石」と私が呼ぶステップを踏んで、経営側が社員を幸せにする努力をすること、

2.社員を幸せにする経営側などの諸々のステップが社員の心理と脳の特定の働きかけにより社員のモチベーション、創造性、革新性を高め、経営にイノベーションをもたらすほどの影響をもたらすこと、

3.社員個々人の心を「わくわく元気」にすることが、チームプレーや人間関係を重視する環境と相俟って、社員個人の成長のみならず組織集団のパワーアップをもたらし会社の成長につなげていく、

ものです。

 この「フォーミュラ」は、いろいろな施策や仕掛けを通じて社員の幸せ感を維持する経営側の努力こそが、会社の成長につながるという流れを、強調しているものです。

 極論すれば、会社の成長こそが社員に幸せをもたらすとの世の中の一般的な主張を、余り積極的に考えないことを強調したものです。

 会社の構成員たる社員の自由闊達な発想と行動力こそが会社成長の原動力であるとの考えに基づいた経営です。

 経営の骨格部と内臓部と私が位置付ける18の「定石」を上手く運用して、「農耕型企業風土づくりの経営」を通じて企業の中・長期的な成長・発展を図ります(参、『これからの課長の仕事』、『これからの社長の仕事』、ネットスクール出版)。

 過去20年の経営体験のみならず、最近若い経営者の経営指導を行う中でも、上記の経営がいかに大事かを、私は私は身をもって体験しています。会社がベンチャー的な経営体であろうが、伝統的な経営体であろうが、この重要性にあまり大きな差異がないと感じています。

 権限を現場に与え、現場のメンバーが自律的に動いてスピードをもって対応する、これを私は20年前から実行してきました。働く目的や意義をビジョンの中に織り込み、これを噛み砕いて伝え、メンバーが腹落ちした段階で、この内容をチームで具体化すべく彼らが自律的に作動する環境を作る。上司の指示待ちでなく、マニュアルから離れ自分の意思と判断で行動する経営環境を作って経営しました。

 

あなたが急ぐその仕事は重要ですか?

Posted on 2013-01-10

新年を迎えるにあたって

 新年あけましておめでとうございます。

 国家の運営は政権が交代して経済や金融に新政権が力点を置いた施策を打ち出していることは、ビジネスに関係する一人として喜ばしい限りです。

 読者の皆さん、新しい年になり気合が入っておられると思います。気合を入れれば入れるほど、ビジネスでは矛盾することを同時にやらなければならないこと、さらに、その時間が限られていることにお悩みかと思います。

 例えば、顧客を増やしたい、顧客に対するサービスを強化したい。しかし、会社の負担が多くなる。社員の満足度を高めたいが、これも会社の負担が一時的に多くなる。それでも、矛盾したことをうまく調整して関係する皆をハッピーにしなければ、経営をしたことにならないのです。

 私は、「三方一両得」と言って、顧客も社員も会社も皆が得をする解を見つけることが必要でと説いています。特に、皆さんのビジネスを実際に推進しているのは社員です。したがって、社員、社員の育成に力点を置いていくのが、皆さんのビジネスを成長・発展させる経営の近道かもしれません。

 皆さん、本年もよいスタートをきってください。

 そのために、まず仕事の仕方について述べることにします。なぜなら、この気持ちで1年を経営してもらいたいからです。ほとんどの仕事には、仕事の目的遂行のために「重要度」「緊急性」の概念が関係しています。

 にもかかわらず、事前にこの二つの概念を意識して仕事を遂行することが少ないのも事実です。緊急度については日常的に意識して判断せざるをえない場合が多いのですが、大半の方々が重要度を明確に意識して仕事をしていないのが現実ではないでしょうか。

仕事の重要度と信頼性の関係

 重要度と緊急性の組み合わせで4つにカテゴリー分けできます。

①事業の目的達成のために重要度が高く、緊急性が高い仕事も理論的には多いのです。

経営上一番重要度が高い仕事として、私は

1.顧客の開拓と

2.顧客との良い関係の維持、

3.社員の働きやすさの環境造りにおいています。

この3点は独立してあるのでなく、統一的に完結する経営姿勢、経営哲学として私は重視しています。

 自社の商品を買ってくれる顧客の具体的な顔を社員と一緒に見たいのです。ニッチな分野の個客とでもいえる人々です。緊急事態が多くて、日常の判断からこの視点が意外に失念されやすいのです。

 仮に、顧客に関わることや重要度が高く緊急度が高い状態が毎日発生しているとしたら、このこと自体がその企業の存続のためにまず問題ではないでしょうか。

皆様の会社、大丈夫ですか?その会社に根源的課題があるか、もう少し早く必要な手を打っていなかったが故に大きな課題に今直面しているケースかもしれません。でも、これを克服しない限り、その企業の継続的発展は厳しいと見ざるを得ません。

重要度が高い仕事は、意外に緊急度が低い場合が多いのです。

 すなわち、会社の将来の発展のために極めて重要な仕事は、「今すぐ実行」という意味での緊急性は少ない仕事であるのが一般的です。例として、人材の強化です。

 これはどの会社にとっても重要な仕事です。しかし、今日緊急にこれを実行できなくても、明日実行することができるのです。健全に時間をかける場合は別として、人材の強化が重要性が高いにもかかわらず、明日、その翌日と一日伸ばしとなり、結局、実行に移さないまま、その年度に積み残し翌年に繰り越されることが多いことに留意すべきです。会社としての大きな機会ロスです。 

重要度が低くて緊急性が低い仕事に属するルーチン的な仕事をしている人には、何か新しいことにチャレンジしなくてもこれで一日が終わってしまうことが問題です。

 これが常態化すると、会社としてはゆゆしきことですが、現実には、いろいろな会社でこれに似た事態が発生しているかもしれません。上司がこのパターンを意識的に排除する経営手段を講じていない場合です。会社が重要視する方向に社員のベクトルを合わせる努力を怠っていると、このような現象が現れます。 

重要度が低いが緊急性の高い仕事は理論的にはありえますが、ビジネス的には意味が薄いパターンです。このパターンで業務を継続的に続けることはまず不可能です。

重要性に力点を置いた仕事のやり方を認識

 重要度と緊急性の4パターン分類で経営上一番問題なのは、ほとんどの仕事が緊急性に引っ張られやすいことです。経営層が計画的に段取りよく仕事をしていれば、本来緊急性に引っ張られる確率が少ないにもかかわらず、経営層の計画性の無さからこのような事態が発生します。

 また、緊急性が高いが故に、会社の中の大騒ぎ事態を救う救世主が現われます。この時点では本源的解決にはなっていないにもかかわらず事態は一応落ち着き、急場を凌ぐことに貢献したその人が評価を高めやすいことになります。

自分の仕事の点検

 皆さんの日常の仕事を一度、この4パターン分類で振り返ってみてください。緊急度の高い仕事が多く発生するのは、本人か上司がこれまで重要度の高い仕事に対応していないことが原因です。他の部門や人々にも大きく影響を及ぼしてしていることを認識すべきです。

 私は、1年間にその会社でなすべきことをリストアップして、その中から重要度の高いものを選択することにしています。逆に、重要度の高くないことには、首を突っ込まないことにして、不要と思うことを捨てています。

 このように重要度を峻別することは、仕事のやりかたの反省にもつながると考えます。ぜひ、このことを「考える」習慣をつけたいものです。