園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

捨てる

「変革」のためにどのようなリーダーシップを発揮していますか?(2)

Posted on 2012-11-22

前回からの続きです。

仮説をたて、とにかく早期に実行

 「仮説をたて、その結論を出して早く実行に移す」習慣を社員に身に着けさせることは大変重要なことです。時間が収益を生むことを実践で徹底することです。

 私の20年間の経営体験から言えば、時間と時限の概念が徹底されないところに、企業の発展は望めません。

 スピードが猛烈に早い時代、「今すぐやる」ことが競争に勝つ方法です。出した結果をできる限りスピードをもって実行に移し、それを検証することです。

 情報が十分集まっていない場合もあるかもしれませんが、その状況下でもとにかく最善の結論を出して走り出すことがポイントです。

 競合各社と競争をしていることを忘れているのではないかと感じる会社に時々遭遇するのは残念です。

 もちろん、人事施策等、後戻りできないことはしっかり考えた上での走り出しが必要ですが、大半の施策は、行動、検証分析のプロセスによってより良いものに修正可能です。スピードが無い限り、競合に先を越され負けるリスクがあることを、リーダーは社内に周知徹底しなければ「変革」につながりません。

 仮説をたて、結論を早くだし、時限を設けて実行し、必要な修正を加える習慣を全社で徹底することが、商売のチャンスを失わないことにつながりますし、アクションに結びつく結論をだす戦略策定の過程で、結論を導く理由や成果が出るメカニズムが以前より明確にもなります。こうすることで、社員が自主性を持った「戦う集団」に少しずつ変わってくるはずです。

 現場に近いところに権限を与えることでスピードと機敏さを大事にし、まず結論を出して進んでいくのはいかがでしょう。

 また、企業が人と組織で動いている限り、中間層を活性化する策を講じることが必要です。活性化と甘えとは相いれない思考です。中間層には過去の成功体験が少ない社員が多いのですが、彼らの姿勢は新しいことを実現したくてウズウズしています。この層に企業変革の牽引車になってもらうのです。特に、影響力のあるトンガリ人間に。

 また、今はデジタルで物が製造できます。誰でもどこでも作れる状態になっていますので、外注や企業内部の組織や体制もデジタル製造の環境変化に対応して、優秀な外部組織を上手く利用するように変革することです。競争条件を働かせて、利益を上げるためにあらゆる資産を利用して、とにかく仮説を早く実行に移し検証する組織にすることが必要です。

「捨てる」ことと「捨てない」ことの峻別

 会社が新しい時代にマッチして成長していくためには、脱皮が不可欠なことは論を俟ちません。ただ、脱皮しても従前と同じ形で現れるのでなく、できれば過去を捨てて違う形で表れてほしいものです。「捨てる」ことは怖いのですが、その決断が必要です。

 「会社の財産だからこれは捨てがたい」という言い分をよく聞きますが、他方で、たくさんの社員がもし退職しているとすれば、「会社の財産」の内容をどう考えればよいのでしょうか。

 会社がここまで成長してきたのは会社の財産たる強みがあるからです。強み、すなわち、「頭の中に潜んでいる知恵」があるからです。社員の心の中にも沢山の「潜んでいる知恵」があるはずです。

 大事な社員を捨てることは「潜んでいる知恵」を一部捨てることにつながる相当な決断です。会社にとって社員と社員を含む組織が一番大事なはずですから、同じ「捨てる」でも、本当の財産は捨てない経営が必要です。それぞれの会社で違う事情があると思いますが、社員が退職する本当の原因がどこに起因するかを、深く考えて必要な修正を加えるのも大事なことです。

 酷なようですが、経営陣やリーダーの鏡が社員だとすると、社員に映る経営陣の姿は原因を探る糸口で、意外に単純な所にあるかもしれません。仮に人材という財産を大事にしているにも拘わらず社員に甘えの構造があるとすれば、リーダーシップをとる側の甘えや不備が鏡である社員に反映しているのかもしれません。将来の発展のために真摯に考える必要があります。