園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

折々の言葉 / 語り継ぐ経営

普通の中小の会社の競争作戦(2)

Posted on 2014-12-25

前回の続きです。

 

5.持たない作戦を展開する

 その当時、No.1の企業は設備、社員のレベル、ノウハウ、資金量等あらゆる面から我々の上との認識を私は抱き、彼らの「持てる力」が羨ましくもありました。「・・・が当方にもあれば・・・」と、はかない夢も抱きました。

 しかし、瀕死の貧乏会社を経営している私からすれば、それは経営上何ともしがたいのです。そこで、この時期発想を逆転させ、徹底して不必要なものは持たないことにしました。土地は持たない、不動産も所有しないなど「持たざる者」のひがみを、弱みから強みにするため「持たない」ことを会社の方針としたのです。

 固定費で会社がおかしくなる企業を近くに見ていたからでもあります。やせ我慢の論理です。固定投資が少ない分、その金を社員の教育に使い、サービスの品質を上げることの一点に集中した作戦を展開しました。当時のあらゆる資金を人材育成とサービスの品質向上に使ったと言っても過言ではありません。社員の意識の改革を図り、会社としても動きが迅速になりました。マーケットの変化に対応しやすく、且つ、顧客の意見に迅速に反応できる体質を作り上げることが出来たのです。

 

6.周辺分野から新規事業を開始する

 会社がある程度大きくなるとどうしても多角化の誘惑にかられましたが、我々はドメインを明確に決めていましたので、この誘惑に大きく負けることがありませんでした。

 ノウハウの無い全くの新規分野で戦うより、勝手を知ったテレマーケティングという既存の事業の周辺領域分野での進出に努力をしました。その結果、会社に大きなリスク負担をかけることにはなりませんでした。ベンチャー経営者の一部は、この落とし穴にはまることが多いのを普段から見ていたので、既存の事業の周辺での多角化を第一義に考えて作戦展開をしました。

 

7.小規模で新規事業を開始する

 そうは言っても、何か新しいことに取り組まなければなりません。そこで失敗代金をあらかじめ事業計画の中に織り込み、その範囲内で、しかも小規模でどんどん新しいことに試行錯誤で取り組みました。

 当たるか当たらないか分からないのが正直な気持ちで、とにかく小規模にスタートさせました。種を撒き成長の様子を見て、上手くいきそうなら、追加の投資を決断する、ダメなら撤退ルールに照らして撤退することで、新規事業が本体の屋台骨に影響しない作戦を展開しました。沢山の企画をチャレンジさせ、PDCAのサイクルを高速で回しながら新規事業を取捨選択していきました。このことで大きなリスクを回避しながら、且つ、新規事業で革新することに成功したのだと考えています。

 

8.一点に集中する 

 一点豪華主義を貫きました。

 人材にかける投資です。採用、訓練、教育等、「ピカいち」の人材を育てることに邁進しました。サービス品質は誇れるものとなり、有り難いことに同一サービスにプレミアムを支払っていただくまでになりました。サービス会社ですから、自社の企画に基づく「プロダクトアウト」的商品をそんなに沢山販売できませんので、「マーケットイン」的な企画力、提案力を磨かざるを得ませんでした。

 その結果、業界最強の企画営業部隊を造れました。しかも、体育会的ではなく、むしろこの真逆で、自由奔放に好きなことに取り組む高いモラールを維持していた営業部隊でした。彼らが、現在もいろいろな分野で大いに活躍しているのが今でも私の誇りです。

 経営者を退くまでの約18年かけて、普通の、若しくは、普通以下の会社を、この分野での実質リーダー企業に育て上げることが出来ました。

 上記に述べた作戦展開と、別の項で述べる「農耕型企業風土づくり」で中・長期的成長を図る私の経営の「公式」に沿い経営したことが、中小の会社を大きく発展させる一端になったものと考えています。ご参考になれば幸いです。

 

 本年1年間、アクセス件数を稼ぐために媚を売ることをせず、ひたすらビジネスマン、起業をされる方々に真摯に経営のヒントをお伝えすることを念頭にして、コラムを書いてきました。お読みいただき本当にありがとうございました。

 来年もよろしくお願いします。

Related Posts

 

Comment





Comment