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折々の言葉 / 語り継ぐ経営

第183回 今の日本には「農耕型企業風土づくり」の経営が必要とされる(1)

Posted on 2015-12-10

 今の日本の経営には、私が主張する「農耕型企業風土づくりの経営」を必要としています。欧米型でなく日本独自の特色を活かした経営スタイルです。今こそこの経営方式を沢山の企業に広めていく必要を感じます。

 何故なら、欧米型の経営、特に株主のみを優先し極端に短期的な数字を追及する経営では、あらゆるところに限界が来ているからです。社員の会社に対する忠誠心は今や過去最も低く、ほとんどの社員が少しの給与差で転職を考えているとの統計資料もあるほどです。すなわち、最も重要な資源たる社員からもそのような経営に対する信頼性が下がってきていることです。

 

今、必要とされる経営スタイル

 私の主張する「農耕型企業風土づくりの経営」の方が、企業の中・長期的成長・発展を図ることが出来ます。この経営では、経営の定石を18に区分けし、これを大枠、経営の「骨格部」と「内臓部」に区分けます。エネルギーロスを少なくし組織を円滑に運営できる「仕組」も当然この中に入っています。

骨格部は、経営の戦略や目的を明確にして社員を一つのベクトルに持っていく仕掛け部分です。

 また、内臓部は、経営の戦略や目的を組織の末端まで浸透させ、社員が一丸となって連帯して活動できるための血液循環作動部分です。

 詳細は後に譲りますが、欧米型は、「骨格部」に力点を置きすぎる経営です。最近の日本でも欧米の影響を受け、残念ながらこの軸に偏る経営を見てきています。「内臓部」にうんと力点を置いた経営は、かつての日本の家族的経営スタイルです。

 

ビジネスモデルの「フォーミュラ」

 骨格部と内臓部の18の「定石」を上手く運用して、「農耕型企業風土づくりの経営」を通じて企業の中・長期的な成長・発展を図れるビジネスモデルの「フォーミュラ」は以下の通りです(参:『これからの課長の仕事』、『これからの社長の仕事』、ネットスクール出版)。

このビジネスモデルで成長するフォーミュラ(公式)

「いろいろな施策で社員を幸せにすると、本人(社員)の心理と脳の特定の働きかけにより社員のモチベーション、創造性、革新が高まってイノベーションをもたらし、本人と会社の成長に導く。」

これが「農耕型企業風土」づくりを通じて会社を成長させる「フォーミュラ」です。

この「フォーミュラ」を分解すると、

1.「対話をする」「場をつくる」などのいろいろなステップを踏んで社員を幸せにする努力をします。

2.この社員を幸せにするステップが本人の心理と脳の特定の働きかけにより、社員のモチベーション、創造性、革新性を高めイノベーションをもたらします。

3.このように個々人の社員の心を「わくわく元気」にすることが、チームプレイや人間関係を重視する環境と相まって個人の成長のみならず、組織集団のパワーアップをもたらし会社の成長につなげていきます。

この「フォーミュラ」の特色は、いろいろな施策や仕掛けを通じて社員の幸せ感を維持する努力が会社の成長につながることを意味しているもので、極論すると、会社の成長が社員を幸せにすることではないことを強調したものです。

 

欧米の短期志向の経営スタイルからの揺り戻し

 私は、過去約20年間の経営を通じて、これらの双方のバランスを貫く経営が重要なことを実証してきました。日本人を中心とした経営組織集団で成功する秘訣とも言えます。同種同文のアジアの地域でも同様な経営が必要と考えますが、個人的にこれは未実施です。

 この経営に「農耕型企業風土づくりの経営」と名前を冠したのは、余りにも欧米型の経営が跋扈し出して、「内臓部」の構成要素である社員のチーム力や働く人々の個性や意欲を軽視した経営に対する揺り戻しを強調し、日本的な経営の良さを敢えて前面に打ち出し、軸を戻すためでした。

 組織の一員として、ビジネスマンである前に皆一人の人間であること、その人間が意欲を持って主体的に何かを成し遂げようとするには、働きやすい特定の環境、私の言葉で言えば、良い「企業風土」なるものが必要であることです。どんな崇高な戦略や目的を経営者が明示しても、これが構成する社員の思想にまで浸透しなければ絵に描いた餅です。社員が連帯して戦略目標達成に向かって活動する姿こそが、まさに生きた経営の醍醐味です。

 「ほんとに楽しく仕事をさせてもらいました。お蔭で、他の会社の良さ悪さが瞬時につかめ、改革の方向がすぐ分かり実行に移せます。沢山学ばせて頂いたお蔭です。」と、かつての社員からの感謝の言葉を聞くにつけ、社交辞令を差し引いても、社員も含めた全員による「農耕型企業風土づくりの経営」の良さを彷彿させてくれる表現だと思っています。

 経営側にいた私こそ感謝の言葉が自然にでるほどの一体感ある会社づくりでした。これほどトップの経営層と一般社員層との距離が短かったのかと、いまさらながら「農耕型企業風土づくりの経営」の良さを痛感し、この良さをもっと広めたい気持ちでいっぱいです。

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