折々の言葉 / 語り継ぐ経営
普通のマネジャーが、優秀で評判の良いマネジャーになるには
最初から優秀との評判を得られるマネジャーは、限られた数しかいません。大多数の人々は、優秀なマネジャーになるためのいろいろな訓練や習慣づけを自らしています。
本日は、普通のマネジャーが、優秀で評判の良いマネジャーに転身するための日常の習慣づけの面から、皆様にヒントを述べます。ご参考になることを祈ります。
1.物事を単純化すること。
まず、複雑に考えないことです。複雑なことでも、意外に単純化したことの中に、エキスの部分が集約されています。
頭脳明晰な人ほど詳細なディテールに時間を使い、物事を複雑化してしまう傾向があります。理論物理学の世界では一分の矛盾もないことが不可欠で、ディテールまで詰めないとまずいでしょう。しかし、こと経営の世界では少し違います。本質は意外に単純な中に現れることを、私は自身の経営体験から知っています。
したがって頭脳明晰な人は、自分が複雑に考えることを好む性癖に早く気づいてそこから抜け出せば、違う世界が開かれます。また、これから優秀になろうとする人は、単純化を心がければ本質の世界が近づいて来ることに気づいてきます。
いずれにしろ、単純化することで本質的なことに時間を費やすことを、習慣化してください。
2.部下にやってもらうこと。
誰にでも、自分のやりたくないことが沢山あるはずです。数十年生きてきた過程で、得意、不得意がある程度明確になってきているからです。
人事考課等マネジャーの職位としてその職務を他の人に代替できないことはありますが、仕事の大部分は他の人に任せることが出来るはずです。一般的に不得意なことには、マネジャーとして極力時間をかけないで、部下にやってもらう方が自らにとっても得策です。かつ、部下も育ちます。
これは職務放棄ではありません。マネジャーとして、もっと大事なことが沢山あるはずです。それに注力するために、不得意なことは割愛し、ある意味で怠慢になって全体の効果を上げることを考えましょう。
職業軍人として名声を博したある将軍が、職業軍人として部下の将校を分類し、「勤勉で有能な将校は細部まで適切に考慮するので優秀な参謀にはなるが、最高責任者としては相応しくない。怠慢で有能な将校こそが最高責任者にふさわしい。」と、言っています。このことが、マネジャーにも当てはまると思います。自ら任せて怠慢になりましょう。
3.自由にやらせること。
マネジャーと部下の双方に必要なことは、誠実さとオープンさです。
私の『これからの課長の仕事』の中でも述べましたが、幼稚園で学んだこと、すなわち、友人として、正直に、信頼を持って、オープンに接することは、ビジネスの上でもたいへん重要なことです。
部下の想像力と創造力を開花させるには、この環境を前提として、本人のもてる能力や性格の部分を最大限稼働させ、それで成果の大半を生み出せるよう、上司として誠実に部下をサポートしなければなりません。トンガリ部分を大事にし、自由に仕事をさせることこそが、部下への最大のサポートの一つです。想像力と創造力を開花させる環境を与え、自由な活動をさせてください。
4.時間に余裕を持つこと。
部下に任せ、自由に仕事をさせると、任せた仕事のフォローは必要ですが、当然時間に余裕が出来るはずです。
その時間の使い方、これが分かれ目です。その時間を、とにかく考えることに使うことです。私はマネジメント上、行動力も大事にしますが、同様に、行動の前に考えることを重視しています。やみくもに行動を起こして、無意味な失敗をしないためです。
思考にじっくり時間を取る習慣にしてください。このことで一歩も二歩も先を読む力を養えます。
5.部下を親身になってケアーすること。
ビジネス上、人ほど大切な資源はありません。したがって、まず、その人間を理解するには、部下という人間の基本的なことを知ることから始まります。部下は自分に関心を持ってもらいたいと、誰でも思っていることです。
職場でその部下のケアーをし、時には背中を押してやるのはマネジャーしかいません。ケアーする、格好よく言えば、部下のよきメンターになることです。花形スポーツ選手が必ずしも良い監督ではないと言われることがあります。現実に、世間でそのようなことも起きていますが、メンターのやり方を知らないことが失敗の一因と考えられます。
部下のケアーにエネルギーを投入してください。方法を学んでください。数分だけでも良いです。毎日親身になって話しかけてください。
6.顧客は誰かを常に問うこと。
顧客は大事です。当然なことです。しかし、全ての顧客が大事だと思ってしまうのは、マネジメント上ある意味で不正解です。20:80の法則を思い起こしてください。この法則をマネジメント上実現するには、20の顧客の見極めが大事です。今の時点では、会社への貢献が少なくても、将来のことを考えて20の対象顧客の中に入れるべき顧客を、今いかに見極めるかです。ここに、経営者やマネジャーの洞察力が効いてきます。
理論や世の中の常識を、単純に鵜呑みにしないことです。「WHY」と常に疑問を持ち、沢山の顧客の中に、数は少ないが優良なものと多数の平凡なもの、一部は粗悪なものが隠れていることを知り、これを見極める力を養わねばなりません。これには、世の中の潮流を洞察した上で現場を知り尽くし、その顧客が将来いかに自社と関係していくのかの適正な判断をしなければなりません。
ご参考になりましたでしょうか。
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