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コミュニケーション / 折々の言葉 / 語り継ぐ経営

第150回 新任マネージャーのコミュニケーション方法

Posted on 2015-04-09

 この春、全国の会社に新任のマネージャーが沢山誕生したことと思います。頑張ってください。本日は、人間関係について新任マネージャーのみなさんの参考になることを述べます。

 私は、以前、コミュニケーションを武器としたビジネスの経営を託されていました。いろいろな試行錯誤を重ねながら経営してきましたが、特に、人と人とのコミュニケーションの方法で気づくことが多くありました。その一部を、これまで三冊の本(『これからの課長の仕事』、『これからの社長の仕事』、『礼節と誠実は最強のリーダーシップです。』)に著わしました。

 その中で、共感の重要性についてふれています。本の内容を一部参照しながら、今回、新任のマネージャーが部下との対人関係を更に良く出来るよう「共感度を上げる」留意点について数点ふれます。コミュニケーション力をつけるためです。

 私の理解では、共感度とは、相手と同じ位置、同じ目線で、何かを感じる度合いのことです。共感度が増すと、「友の憂いに我は泣き、我が喜びに友は舞う」のレベルまで豊かな感性を築くことにつながるかもしれません。

 

1.人は自己中心であることの認識

 人間は、一般的には自分本位です。自分の考え方や行動パターンに類似する人に親近感を覚えます。それでも、ビジネス上での人間関係では、価値観や行動パターンの違う人々と上手く関係を築くことが必要となります。

 仮に上司にアサインされたとすると、部下を上手く導いて成長させる責任があります。皆、頭の中ではそのことを分かっています。しかし、実際の実施段階になると、ほとんどの方々が部下の指導にあたって、ある種の不安とジレンマを感じています。

 

2.愛情と怒りの矛盾

 一つ例を挙げます。部下指導の指導にあたり、共感と怒りとの関係です。

 部下を叱咤激励する部下がいました。部下の育成にあたり本人があまりに熱心なため、時に部下のできないことを、激しい怒りの言葉で責め立てる上司でした。仕事ですから緊張感を持ってやらなければならないのは当然です。従って、上司たる立場上、叱らなければならないこともあるでしょう。

 しかし状況を傍で見ていると、愛情極まったこの上司の怒りと反論したくても反論できない部下の不満が対立して指導自体が空転していることが多くあり、それまで築いた上司と部下との人間関係もぶち壊しになる危険性をはらむ状況となっていました。

 上司は育成の一環で叱っているつもりでも、怒られる部下の立場に立つと微妙な人間関係と映ります。誰にでもこのようなことはありますが、上司の側に共感度豊かな対応が不足しているのです。愛情豊かな上司に限って、それが変じてこのような叱り方をする場面が出てくるのを見ます。愛情の本気度が何かの事情で空転し、おかしいいことになるのです。

 ここで私が気づいたのは、それは人間として致し方ないことだとの考え方をまず持つことでした。

 人間の性(サガ)として、時に愛情が変なぶれ方をし、愛情と対極的位置にある自己中心的な上司の憎悪の姿が、現実にでてしまうこともあるのです。それは子供の育て方にも出てきます。この認識を念頭に部下に接することです。愛情が変じて怒りとなるシーンを出さないように、如何に自己コントロールするかです。上司として配慮すべき重要なことだと学びました。

 もし、このような努力でそれぞれの状況を上手く乗り越えられれば共感度が更に増し、上司と部下の人間関係は、意外にそれ以前よりうんと良くなるかもしれません。

 

3.人間関係と共感度

 日常、知らず知らずの内に共感度豊かな対応を実行している人も多いです。

 しかし、人間同士や家族との関係が疎になった現在、知識や権威が先行しがちです。特にビジネスの世界では、共感的なコミュニケーションを出来ている人が少なくなっているように感じます。すなわち、相手のことを慮る感性が、一般的に衰えているように思われます。人との関係で生きている我々は、人間関係を豊かにする方が生活の中での潤いを増すことになると考えますが如何でしょう。

 

4.感性、感じる心の持ち主

 経営を託されていた会社で、会社再建時に会社経営の骨格を決めました。その一つ、「社是」の中に、「一、行動と感性で、・・・」という文言を入れました。

 あるコミュニケーションビジネスで一番になりたい。更に、この分野で会社が特色を持って生息できるためには、感性豊かな社員の心、発想と行動が無ければ、無理だと思ったからです。社員の感性自体が会社再建と目標の達成のキーだと思ったからです。

 分析する力のある人材は沢山集まります。しかし、一番のポイントは、何かの事象に「ピンと感じる力」だと思います。これこそ会社にとって商売上重要なだけでなく、社員それぞれにとっても、自分のレベルを高め自己実現に近づくためにも極めて重要なことだと考えたのです。人間関係が上手くいくのみならず、ここから新しいビジネス的発想なども生まれることになるからです。

 

5.傾聴する姿勢、括らない

 傾聴ということも重要視していました。特に、新しくマネージャーに登用された人には、とにかく「まず、部下の話を聴きなさい」と、アドバイスしていました。頭でっかちで、相手のことなど無視してとにかく自分の主張をまくしたてる新任マネージャーにしたくなかったからです。共感度の無いマネージャーが以後幹部として成長するかどうかの行く末は、ほぼ見えていると思っていたからです。

 また、部下の話を遮って、「つまり、君の意見は・・・だよね」と話を括ることも戒めました。聴く耳を持てば、話す相手の発信する言葉、そのトーン、表情、目線などの全体から、相手があなたに本当は何を求めているかを実際に感じるはずです。

 実は、このあなたが感じたことが、相手にもすぐ察知されているのです。そのうち部下の警戒心が解け、同じ目線で話ができる良いコミュニケーションの場がつくれることにつながるのです。このような場合、聴くことに専念します。会話の中ですぐ自分の考えを述べることはタブーです。時間がかかっても、まず聴くことです。

 

6.聴く忍耐力

 このように聴くことは、忍耐がいることです。それでも、より良い人間関係を築くには最低限、必要なことです。新任のマネージャーのマネジメントの「イの一番」に、「相手の話を聴き、話を括らないこと」をアドバイスした背景がここにあります。

 部下が何かのトラブルに遭い悩んで相談に来た時に、「あなたの悩みはこうなんだよね。こうしたらいいよ。」と、上司からサラリと言われたら、それで部下の悩みが納得感を持って解決するのでしょうか。

 このような場合、一般的に本人自身がある回答を持って相談に来ています。上司に期待しているのは、解決の回答を前面に出すような話でなく、本人の悩みに共感してもらう何かであるはずです。従って、「そうなのか、だから・・・のことであなたは悩んでいるのだね。」と、穏やかな声の質で相手に寄り添う上司の姿勢が必要となります。頭でっかちな人がやる「それは、・・・だよ。・・・が悪いんだ」と、すぐ白黒つけるような場面を、部下は全く望んでいないことを理解し、感じるべきです。

 新任のマネージャー諸君、参考になったでしょうか。

 

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