園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

アントレプレナー

あなたは本当にアントレプレナーですか?

Posted on 2012-05-31

 最近、これから起業されようとする方々、最近起業された方々にお会いする機会が多くなりました。彼らとの接点で、一部の方に気になることがあります。残念ながらこれでは会社も社員も「わくわく元気」になれないのではないかと危惧します。

「たられば」でない起業家の覚悟と気魄

 「自分は起業するのだ」というアントレプレナー的な精神が欠如していることです。もちろん、起業を支援する側の姿勢にも大きな問題があると思います。

 しかし一部に、起業する本人がやたら頭でっかちの理論先行で、汗を流す姿勢があまりみられない人がいるのです。「会社が立上れば後は何とかなる」と、ベンチャーキャピタルなど人の資金をあてにしたがる傾向もみえます。

 一番重要な顧客開拓も、協力先や他人任せの「たられば」的な机上の計算ばかりです。マクロ経済の指標が連ねられた資料ばかりが目立ちます。その人に、必死になって会社を立ち上げようとするマインドが欠如しているのが気になるところです。

 また、ビジネスプランの中にきらびやかな横文字の単語が沢山出てきます。確かに美しい言葉です。しかし、これに酔いすぎてはいませんか。覚悟や気魄がない限り、本気で助けてくれる人は世の中に少ないと思いますが、本人は気づいていないのが残念です。

 特にアントレプレナーの時代には、きらびやかな言葉にも増して、このことを実現していく力、何があってもそれを克服できる力を飽くことなく蓄え、まずは社員の給与をキチッと払い福利厚生を充実した状態にするため、自らが汗を流してもらいたいのです。

貪欲なアントレプレナー的な気概の持ち主の例

 2012年2月、著名な指揮者、沼尻竜典氏のコンサートの後に行われた奥泉光氏(1994年、第110回芥川賞受賞者)との対談の中で、沼尻氏の「私はフリーターです。頼まれれば断らずどこへでも行きます。ただし、顧客に媚びることはしません。」という言葉が印象的でした。

 こんなに著名な演奏家でも自分の軸をブラさない範囲内で、貪欲なアントレプレナー的精神を持ち続けているのが印象的でした。顧客を大事にし、貪欲に顧客に対応し続けない限りおって顧客から見放され、自己のポジション・アップができなくなることを一番良くご存じではないかと感じ入りました。若い経営者は見習ってもらいたいくらいものです。小金を稼げるようになったからと調子にのらないように。

「農耕型企業風土」づくりで会社を中期的に成長させる選択

 本気でチャレンジしているアントレプレナー的な経営者を、なんとか指導していきたいとの私の思いで、「わくわく元気会」を発足させ活動を開始しました。また、経営者が早く会社を成長させ世の中で大きな存在意義を果たせるようになってもらいたいとの思いから、このコラムでも実際の場面に則して、経営者の心構えなどのヒント出しをすることで指導をしています。

 起業をした後、会社の成長・発展を実現するための経営ルートにはいろいろな道があると思います。それらの中で、自分の経営実体験を通じて、「農耕型企業風土」づくり(参、『これからの課長の仕事』、『これからの社長の仕事』)を通じて会社の中期的成長を図る経営ルートを、私は選択されるよう推奨しています。

 起業家の一番のサポーターは社員です。

 この社員とともに一致団結して会社の成長を目指していく方法です。経営者が自己の知識と知恵をもとに会社を運営できると最初は自信を持っていても、所詮そのエネルギーには限界がでてきます。少し会社の規模が大きくなると、突然いろいろな問題、課題が噴出してきますが、この時に会社の成長路線が揺るがないのは、最大のサポーターたる社員、一緒に汗を流して努力してきた社員の存在と彼らとの信頼関係があるからです。

 「農耕型企業風土」づくりを通じて企業を成長・発展させる「フォーミュラ」も、経営者と社員との信頼を築くための各種方策を本の中で明示しましたので、ご参照ください。

 まず、エンジンをいきなりふかすのでなく、助走運転のステップを踏むことを推奨しています。この間に何をするかです。起業家は自分の「夢」や方向性を具体的に示し、賛同を得て、まず社員と一緒に実績をつくることです。実績をつくるということは、顧客を持つことです。企業であれ個人であれ、優良な顧客を獲得するという実績をどうやって早く示せるかで、一緒に仕事をする社員の信頼度の大きさとベクトルの結集力が変わってきます。

 このように、「社員の幸せ」と「顧客の願望」を少しでも実現することを念頭に置いて、色々な施策をステップを踏んで打ち出すヒントを示唆しました。

 冒頭、「たられば」的な発想を戒めたのは、この理由からです。是非、真の意味でアントレプレナー的気迫と信念を持って経営してください。