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ミッション

第222回 顧客に学び、現地・現場で対応する

Posted on 2016-10-13

 日本の大手の企業では、本社部門で「計画」を策定し、それが「現場」が実行されたかどうかをウォッチする「管理」中心の経営が行われているところが多いです。

 基本方針は別として「私、企画する人、あなた、やる人」という発想に大いに疑問を感じ、私は新しい経営方法を主張しています。「農耕型企業風土づくりの経営」スタイルです。これは、顧客の要望などをじっくり観察した上で購買に至る仮説を立てる、その仮説に想定できない変化が発生することに備えて、計画の管理でなく「現地・現場」で柔軟に対応する経営発想を持ち込むものです。私が標榜している「三現主義」、すなわち、「顧客第一主義」、「現地現場主義」、「対話による解決」の第一、第二番目に関係することです。

 過去のピラミッド型組織に見られた「本社の計画企画中心型」から「顧客と現地・現場中心型」への発想と組織の在り方に転換を伴うものです。

 

1.経営スピードのメリット

 このメリットはまず、現地・現場の社員が顧客に対応することで、いろいろなことを観察(オブザベーション)ができ、生きた情報を収集できることです。本社中心の場合、この部分を軽視しがちになります。

 現場で収集した情報を基にして、顧客がどうやったら喜ぶか、評価してくれるかを洞察でき、施策の方向付け(オリエンテーション)につなげることができます。地に足のついた洞察力を発揮できます。「農耕型企業風土づくりの経営」スタイルでは社員が自立している組織なので、本社や上司の指示を待たなくても自分や自分でコントロールできる組織内で決断(デシジョン)できる。すぐ適正な行動(アクション)に移せます。

 「現地・現場」に最大限の裁量を与えて、スピード感をもって仕事に取り組むことを要請する体制で、経営にスピード感をもたらすメリットがあります。

 

2.自立、自律型の人材と風土

 このためには、前提として「自分事」として捉える自立型、自律型の社員で構成されていなければなりません。すべてを「自分事」として自分が率先して受け止め、対応する風土が必要です。

 そのような風土では、魚市場を豊洲に移転する件で、東京都庁で起きたと報道されるような事態は全く起こりえません。大きな予算を伴う決断を、誰が何時、どこでしたのか分からないなどという不可解なことは発生する余地がない。「自分がやりました。・・・の判断基準で」と、手を上げる人がすぐ出てくるはず。その結果の評価は別としても、事実関係が数週間経ても判明しないなど、都庁という組織としてありえない。すべて「他人事」の姿勢が蔓延する組織や風土とは大違いです。

 

3.失敗の経験コストの組み込み

 組織として「主体的に動く」社員を作る努力が不可欠です。

 社員が自主的に行動できるようになるために彼らに経験を積ませること。

 すなわち、失敗の経験コストを組織の仕組みにビルトインさせる。多少の失敗代も織り込み済みとする。彼らが顧客に対する鋭い観察眼をもって考え、行動できるよう現場の社員を中心に据えて発想する。その過程で、万一失敗してもその失敗から学ばせる組織とすることです。

 従って、現場のリーダーの役目も「自主的に動く」社員が「自主的に動ける環境」を整備することに主眼を置くことになります。「管理」ではありません。

 

4.「ミッション」のおろし方

 「現地・現場」が主体的に動くには、その部門への「ミッション」へのおろし方が明確でなければなりません。

 これを事業の計画策定時で言えば、部門のメンバーへの「ミッション」のおろし方に関係してきます。

 -何のために(Why)、

 -どんな理由でその仕事(Job)をするか,

 -どんな成果(What)を目指す、期待するのか、

 -結果をどう評価するか(Valuation)を明確にし、

 -そのうえで部下にやるべき方法(How)は任せるためです。

 このおろし方が下手なために不要な混乱をきたしている組織、現場のモラールが維持されていない組織を見るのは残念です。

 

5.現地・現場のサポート方法

 「現地・現場」のサポートも重要です。組織によって違いがあると思いますが、人材の供給に加えて、一つはインテリジェンスの供与です。「現地・現場」の仕事に役立つインテリジェンスの武器を本社は提供しなければならない。

 「ミッション」の遂行を強力にサポートする影の主役が「情報」です。しかも単なるデータ(インフォメーション)でなく、現地・現場の判断と行動に結び付くインテリジェンスです。現場が顧客を知り、その顧客に役立つ情報は何か、どうやって顧客に自分の会社を向いてもらえるか、どのボールにするかの選択と投げ方、タイミングに工夫が必要です。現場の情報と会社全体の情報を織り交ぜることを目指します。ましてや本社からの一律な情報の提供では、現地・現場は良いボールが来てありがたいとは思わない。

 以上のことが作動すると、顧客の反応を観察しながら自立して動きながら考え行動する社員と組織ができる。組織が一段と活性化し経営のスピードが増すことにつながります。