園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

全体崩壊

第281回 経営戦略策定での基本考慮事項

Posted on 2018-05-03

 ビジネスにおいて、日常の業務の大半は予測可能です。いろいろなミスが生じても、原因さえ特定できれば修復可能なことが多い。修復の程度も測定可能です。

 ところが戦略、特に一定期間の長い戦略では、環境の変化、競合の進出も含めて多くの事象がランダムに発生し、しかも予測不能なことが多い。それまでの延長線上で事象が動く確率はかなり低いです。

 戦略を策定してみるとよく分かりますが、事象の構造を予測するのが極めて難しいです。

 

戦略策定の基本任務

 それでは何を目指して戦略を策定すればよいのでしょうか。

 私は1) 可能な限り予測ミスによる失敗を最小化し、且つ、2) リスクを考慮しながらチャレンジして、利益を最大化する作戦を考えることを戦略策定の基本任務と心得ています。

 

予測のミス

 まず、予測ミスを最小化する。

 変化が確実に起きる事象は、戦略展開の上で絶対に外せない。非常に重要なことです。

 日本で少子高齢化が起きている、更にこれが進むことは確実です。この事象を自社のビジネスとの関係でどう捉えるかは極めて重要です。このように確実性の高い事象は他にも沢山あり、しかも戦略に大きな影響を及ぼすので、予測から失念するミスは犯さないこと。

 誰でも、そんなミスを犯すはずがないと思っています。しかし、現実に戦略を策定してみると、動態変化の当たり前のことが当たり前なるがゆえに意外に無視され、結果、戦略全体の建付けに問題が発生し、やり直しになることが多いのです。

 少子高齢化の傾向と違い、蓋然性は高いが、その事象の発生自体を現状ではコントロールできないことも多いです。

 この場合も、その事象が発生したらどう対応するかの戦略を考えておくことも予測のミスを犯さない部類に入ります。

 具体的な例として、見えない競合会社が、もし自社の強みたるxxの領域に進出してきたらどうするかという対策を練っておく、これは予測の中に当然いれておかなければなりません。

 

リスクを取り、チャレンジする

 更に、戦略策定時には、一定のリスクをとり利益を最大化するにはどうするかを常に頭に入れておきます。

 利益を最大化するにあたり、既存のビジネスを強靭化する、また、特定の新規事業に挑戦することに焦点を当てることになります。

 それが上手く展開すれば、大きなメリットを受ける。しかし、失敗するリスクもある。

 ここにリスクとは危険のことではありません。事象の変動が不確実なことですが、いずれにしろ、事業リスクが発生します。

 リスクにより予期せぬ失敗をすることも計算に入れなければなりません。しかも、連携する戦略群の中でどれかの戦略が失敗しても全体が崩壊しない戦略を築くことが肝要です。成長の可能性と失敗して一部が崩れても全体が崩壊しない戦略を狙うことです。

 まず企業として最小限生き残ることを考えなければならないからです。

 リスク自体は企業の進化に不可欠なことです。マクロ経済的に考えると、個々の企業が破たんの可能性を持っていること自体も、進化にとって欠かせないことです。生物が死滅し別の生物に置き換えられることで世の中全体が進歩するからです。

 新規事業への投資も、ある種企業の進化の過程です。会社が進化発展するために、安定軌道だけではなく挑戦のリスクもとる。

 しかし戦略を策定するうえで、忘れてならないことは、戦略全体が崩壊すれば、それまで改善や効率化の努力をいくらやっていても、崩壊のリスクによってみんな無意味になることです。従って、戦略ではまずもって全体崩壊のリスクを抑えるボトムを絶対考えておかなければなりません。

 

全体崩壊しないために、いろいろな失敗から学ぶ

 どうすれば全体が崩壊しない戦略が策定できるのでしょうか。

 頭の中でいろいろなシミュレーションをする、案件によりベンチスケールの実験をすることは当然のことですが、過去の失敗事例を活かす、そこから学ぶことです。

 ビジネスの分野とは違う安全性の分野の例です。飛行機の墜落などの事故データを思い描いてください。残念な失敗の事実から学んでいます。将来の飛行が少しでも安全になる仕組みを組み込んでいます。不謹慎な言い方ですが、どれかの飛行機に不具合が発生しても、他の顧客は巻き添えにならない。ある種、互いが独立して同時に崩壊しない仕組みです。分野は違いますが、このような戦略です。

 また、我々は過去に、津波への対応で沢山の失敗をしてきました。今後も発生する確率は極めて高い。こんなに科学技術が発展しても予測は難しい。しかし、過去の失敗からは学ぶことはできます。

 波のパワーと高さが決定的に問題ですが、逃げる時間的猶予はある程度あります。人間が早く到達できる高台をつくる、逃げ道をつくることで、少なくとも生命の安全は対応できる部分が多い。一部は被害を被っても、全体(人間)が壊れない仕組みです。

 「どうしてこんな全体が壊れやすい戦略を作ってしまったのだ!」と、叱責されないために、競合会社も含めた失敗の事例からも学びます。

 ビジネスの世界では、これを事例として開示しているところは多くはありません。したがって、いろいろなところからの情報に頼るしかありませんが、努力次第で入手可能なものも多いです。

 是非、全体が崩壊しない戦略の策定に、皆さん努力して下さい。

 

 

 

RSS Feed  Tags:, , ,
Posted in 折々の言葉, 語り継ぐ経営 | Comments Closed