園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

因縁

「運が悪い人」を採用していませんか?

Posted on 2012-08-23

なぜ、運が悪いのか?

 以前、雑誌「プレジデント」の今井道子副編集長と話す機会がありました。その際、私が嶋口充輝先生(慶応義塾大学名誉教授、公益法人日本マーケティング協会理事長)から聞いた、原因と結果をつなぐ「因縁」についてお話したところ、彼女からは藤井聡京都大学院工学研究科教授の、「解明!運がない人は、なぜ運がないのか」(雑誌「プレジデント」、2011.8.15号)の記事写しを頂きました。

 この記事の中で藤井教授は「『姑息なヤツ』は潜在意識の配慮範囲が狭い」と書かれています。そこに記載されている「認知的焦点化理論」によれば、運が悪い人は認知の焦点が他人より自分へ、社会の将来より現在へ向いて狭まっていくと読めます。逆に「運が良い人は、相手の利益を考え裏切ることもない。一緒にいると得なので誰もがその人と一緒にいたくなる」ので、真実の友人やビジネスパートナーができやすいようです。

採用面接時の一つの軸

 私は、採用面接時に留意していたことがあります。面接に来られる人の中で、履歴書に倒産した会社ばかりが列記されている人には注意していました。人事部門にも、よほどの事がない限りこのような人を採用しないように指示していました。

 倒産しそうな会社を選択する本人の判断力の悪さと同時に、本人がその会社にネガティブな運を運ぶ何等かの作用をしたのではないかと思うからです。いろいろな事情説明があっても、本人の認識の焦点がどんどん「自分」「現在」に狭く固まっていき、周囲が一緒に仕事をしたくなくなる傾向のある人かもしれないと思うからです。

 このような人には共通なパターンがみられ、不公平を受け入れることができない人のように思えます。

 不公平は神が引き起こしたわけでもなく、ただ起きただけであると認識することが大事です。そもそも人間は公平でない世界に生きているので、やみくもに不公平の原因を論じ、事実を受け入れないその人の姿勢が気になるものです。

 さらにそのような人の思考回路は、毎回ほぼ同じで変化しません。運の良い人は、自分の置かれた状況が運で左右されることを知っていて、環境の変化に対応して素早く作戦展開をしていますが、運の悪い人は何回も失敗しているにもかかわらず「自分はうまくやったのに・・・」と同じ作戦展開をしがちで、思考回路を変えようとしません。反省が見られないのです。

 運の悪い人は「自分がこんなに一生懸命努力してきたのに・・・」と置かれた状況からなかなか逃げられず、損切りできません。自分がこれまで「投資」をしたので捨てられないのです。ここでいう「投資」とは、時間や金銭、あるいは、愛情や献身的努力かもしれませんが、不運を捨て去るには損が小さいうちに何かを捨てて諦めるべきなのです。

運命の人との出会い

 誰でも一生のうちに数回、運命の人に出会います。それをいかにつかむかで以後の運が開けるか否かが決まります。移民としてアメリカのシンシナティーに来たProcter氏とGamble氏が運命的出会いをして石鹸売りとろうそく売りの商売を成功させ、その後P&Gの発展の礎を作ったことは有名です。

 私にとっては、CSK(現SCSK)の創業者で、会長であった故大川功氏との出会いが「運命の人との出会い」といえる重要な出来事になりました。彼との出会い以降、私のビジネスマンとしての人生が成功裏に展開(詳細は「これからの課長の仕事」および「これからの社長の仕事」)したのです。

大きな仕事をするために

 藤井教授の記事の通り、「運が悪い人」は、良い「因縁」をもたらさないようにも思います。本人の認識が自分に向かうので、その人の周囲に人が集まりにくい。他人を助けてチームで大きな仕事を成就し、皆でワイワイ騒ぎ喜ぶこともないのではないでしょうか。周囲の皆の将来を考えて何かの行動を起こす考えが少ないので、将来の絵姿を一緒に作り上げるチャンスにも恵まれない、というように、「因縁」の回転が何か変な所に引っ張られてしまっている感じがします。

 私の主張する「農耕型企業風土」づくりで重視している「対話」、「湿り気のある関係」づくりなどは組織や集団に「良い運」を引きこむ一つの方法だと考えています。

 

「因縁」づくりの努力をしていますか?—嶋口充輝先生の挨拶より—

Posted on 2012-05-10

2012年2月29日に東京で行われた私の「出版を祝う会」で、嶋口先生(前法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授、慶応義塾大学名誉教授、公益法人日本マーケッテイング協会理事長)ご挨拶をいただきました。とてもありがたく拝聴しましたが、皆さんのご参考にもなると思いご紹介させていただきます。

社員を大切にした、人中心の経営

「園山さん、おめでとうございます。そして、園山ファミリー、といいますか、園山ステューデントといいますか、素晴らしい皆さま、本日は本当におめでとうございます。

私はベルシステム24で園山さんが社長をしておられたころにお目にかかって、その時、「よくここまで園山さんが若い人たちと一緒にやるな!」、と不思議に思っていましたが、この度書かれた新しい、素晴らしい本を拝見して「なるほど!」と分かって、また本日ここにきて再び「ああ、あの時と同じだ!」とそう強く思いました。

園山さんの素晴らしさは誰もが知るところかと思いますが、私も園山さんとのお話を通じていろいろと勉強させていただいてきました。そしてまた、今回出版された「これからの社長の仕事」の中身を読ませていただいて、「そうか、そうか、なるほど」とひとつひとつ納得しながら勉強させていただきました。

園山さんの思想は、農耕型企業風土をつくる、そのためのフォーミュラがあって、社員を一番大切にして人を中心に経営をしていく。そして18の定石」をしっかりやっていけば、みんな良い会社になるというものですが、まさにその通りだと思っています。

私が少し前にベルシステム24に出社させていただいていたころ、感じていたことが二つあります。一つは、業績がどうしてこんなにいいのだろう、といつも不思議に思っていました。もう一つは、その業績のよさの根源は社員の喜々とした姿にあって、それは園山イズムに裏打ちされているのだということを強く思っていました。そして今回、本を拝見して改めて「なるほど」と思った次第です。

 「社員を大切にする」、という園山さんの考えと同じようなことを、だいぶ前にもう亡くなったある経営者から聞いたことがあります。経営の世界では「人・物・金・ノウハウ」という言い方をしますが、その方がおっしゃるには「嶋口さん、違うんですよ『人物が金(きん)』と読むんですよ。そしてさらには『人物がノウハウ』なんですよ。」と。

園山さんの本を読んで、改めてその考えを、まさに「その通りだ」と思った次第です。今日、ここにお集まりの皆さんは、まさに園山さんに育てられ、その影響を受けた方ばかりだと思いますが、とても素晴らしいです。

天台宗、山田恵諦さんの「因縁」について

天台宗のトップ、山田恵諦さんという方がいらっしゃいましたが、この方が「因果と因縁」という話をしておられ、これが私にとって大変興味深い話でした。今回、園山さんの本を読んで、改めてこの「因縁」というコンセプトがまさに園山イズムのベースなのだと感じました。

どういうことかと申しますと、園山さんはアメリカに留学された経験があり、非常にアメリカ的な教育を受け、合理的な考え方もお持ちでいらっしゃいます。アメリカの経営の考え方は、どちらかというと「因果」の考え方-原因があって結果が生まれるという、ストレートな答えを反映した経営をしています。つまり、よい製品をつくれば売れる、優秀な人がいれば会社が成長するのである、といった考え方です。

それは、基本的には正しいことなのですが、山田さんのいう「因縁」とは少し違って、原因は一つでも、実際には全く違う結果になる、というものです。具体的には、たとえば葉っぱが枯れて木から落ちる、すると地面に届く。万有引力があるのでそうなると、「因果」という考え方ではそういうことになりますが実際にはいつもそうはいかない、そこに一陣の風が吹いたとすると、その風によって葉っぱは全く違う方向にいってしまう。

「縁」のかかわりによって、結果をまったく違うものにしてしまう。因果社会というよりも因縁社会だと、山田恵諦さんはそういう言い方をされていました。

人間中心の「因縁」づくり

園山さんの著書を読んでみると、まさに因縁づくりを、人を中心にしてやっていらっしゃるな、とそう思いました。よい縁があれば、よいサービスやよい商品があれば、会社が成長するのだということがはっきりわかる。園山さんはそれを把握した上で経営をしてこられたのだな、と思いました。

園山さんは、何かまた新しい事業をするのではないかと期待しています。ぜひ素晴らしい経営をなさっていただきたい。そしてまた素晴らしい人生の後輩をサポートしていただきたいと思っています。どうぞますますお元気で。本日はおめでとうございます。

嶋口先生の鋭い観察力に感服しながら、ご挨拶に聞き入りました。後日、先生からご自身の著書、「顧客満足型マーケテイングの構図」(有斐閣)を送って頂きましたが、その本のP190に山田恵諦師の「因縁」のことが書いてある旨の先生のメモが、挟んでありました。

「善因善果」となるような縁をつくりたいと考えて経営をしてきましたが、縁、関係性によって「善因悪果」もあり「悪因善果」ともなりうることに、先生の著書を拝見して改めて気づきました。

「祝う会」に集まったメンバーを見ながら、「会社を『わくわく元気』に変革きたのも『人間中心』にした『因縁』づくりの経営が成功したからかもしれない」と思った次第です。