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折々の言葉 / 語り継ぐ経営

大切なことを見極める努力

Posted on 2015-03-12

 3月2日、かつて一緒に仕事をした仲間が、福岡の地で「園山を囲む会」を盛大に催してくれました。深更まで皆で飲み語り、本当に楽しいひと時でした。

 この会の締めの私の「社長講話(?)」の内容を一部踏まえて、本日は私が大切にしている思考と行動パターンについてふれます。

 

1.集中して本質に近づく

 私は最近、物事に集中することを心がけています。

 以前は、「あらゆることが大事」と「何でもかんでも」口をはさんでいたため、エネルギーの分散でいろいろな失敗をすることもありました。

 しかし最近は、周辺の甘い言葉にも同じなくなりました。大切なことを見極め、それに集中することで、少し全うな生き方が出来るようになったと思っています。 集中するために、考える、考え抜くことを訓練しているのです。

 若い経営者にアドバイスを求められると、必ず言うことにしているのが、「しっかり考えてみなさい。」です。彼らが事業展開を多角化したいと相談にくる時にも、「何に着手するか、戦略の選択を誤るなよ。しっかり考え抜きなさい。」と助言しています。格好良いこと、やりやすいことなどに目が向き、戦略の選択を誤ることで事業機会の時間的ロスを少しでも回避させるためです。

 事業の発展のために、本当にやりたいこと、やらなければならないこと、すなわち本質に、作戦展開を絞ることが出来るように習慣づけするためです。

 

2.ノイズの除去

 この時に気をつけなければならないのは、周辺から入ってくる沢山の情報の中に潜むノイズです。私は、何かのノイズに左右されない生き方、たとえ孤高であっても、心の中ではプライドを持って豊かに生きることを旨として努力しています。

 情報の中のノイズについて、私は次の例をよく出します。

 海外に長期出張して帰宅すると、溜まった新聞を日付の逆の順に読むことにしています。多くの場合、意味がない記事が何と多いことかと、唖然とします。その刹那には価値が高い情報だと思っていても、実は以後に修正を余儀なくされる情報や自分にとっては無価値なもの、つまり「ノイズ」が多いのです。

 考えてみると、世の中の大半の情報が、実は誰かが誰かのためにした、ある種の操作情報かもしれません。ましてや自分のやりたいこと、やらねばならないこととは無関係なものが多いもので、自分の思考の軸の観点からすると、ノイズです。 それらの情報洪水の中から本質的なものを捜す努力をしなければなりません。

 難しそうに聞こえるかもしれませんが、誰もが、これをやっているつもりだと思います。ただ、トコトン「選ぶ」ことをやっていないだけです。情報の内容を疑ってかかるという正当な思考や行動をしていないということです。

 

3.捨てる=選ぶこと

 上に記載した、「選ぶ」ことは、その裏返しとして、何かを「捨てる」こととなります。

 限られた時間内で「あれもこれも」選択できないのが、一般の人の実態です。そこで、良さそうなことがあっても、更に良いことに絞るクセをつけなければなりません。

 このために、私が努力してやっていることは、頭の中で案件の自己採点をやることで案件の取捨選択の具体的評価方法です。

 まず自分に取って重要な軸を、次のa)~d)と勝手に決めています。

 a) 自分の主義に則しているか

 b) それをやることで、これまでの友人を多く失うことにならないか

 c) そのことを本当に継続して出来るか

 d) 金銭以外の物も含めてどんなベネフィットが自分にあるか、の4点。

 上から30点、25点、25点、20点とこれまた勝手に配点し、100点のうち何点になるかを瞬時に計算しています。

 これを、私が事業を経営する経営者で新規事業に着手したい時と仮定すると、

 a) 経営理念に則しているか

 b) それをやることで、従前の顧客を大量に失うことにならないか

 c) それを誠実に継続し続けられるか

 d) ベネフィット、利益を生む事業となるか、となり、同様な配点で計算することとなります。

 具体的な案件に直面した時、日を変えて評価していくのです。日によって配点がぶれる項目も現実には出てきますが、どこかで配点が落ち着きます。その時が判断の時点と、そこで最終評価します。

 私にとってさらに大事なことは、ある総合点数、90点以下の候補は全て捨てることです。下手な譲歩はしません。

 実際やってみるとすぐ分かりますが、この方法でやると、冒頭に述べた「あらゆることが大事」、「何でもかんでも」の呪縛から抜け出せます。経営者として焦る気持ちの整理にもなります。ほとんど90点以下の捨てる運命になり、本質的なことしか選択できないはずです。

 少し蛇足ですが、これに関して最近ある人からレビューを頼まれた「ふるさとの活性化」の企画案の中の附録として掲載されていたものを、真似たくない例として挙げさせていただきます。企画案を作成した方事態は非常に熱心で、企画案自体はリファインされてきたのが嬉しい限りです。

 ところが、附録として企画案に添付されていたある町の「ふるさと活性化方針」の内容には驚きました。役所が作成したものと思われます。

 あまりに教科書的というか、「あらゆることが大事」と住民全員を満足させようとしたのか真偽は不明ですが、結果としてどの住民も満足させられない施策の網羅に成り下がっていると、私には映ります。役所の立場上、仕方の無い部分があるにしても、あまりに「捨てる」こと、本質的なことに「絞る」ことが欠落している内容で、現実にはこの街からふるさとが活性化するには厳しいものに映るからです。

 

4.捨てる=選ぶことの私の体験

 「捨てる=選ぶ」プロセスの例として、私が実践した経営戦略策定の方法が参考になると幸いです。

 ある会社の経営を託された当初、サービスの価値を高めるため、サービス基準の設定や社員間のチームワークづくりなど会社として大切にしたい価値観を設定し、これを基盤としながら将来の魅力的なビジョンを掲げ、この実現に向けて毎期の年度計画を策定していくことにしました。ある程度の会社ならどの会社でもする方法です。

 しかし、これだけではサービスで差異化を図るという会社が、目指す価値を実行し社会に表明する意味はあっても、戦略の本質目標にはならないことを、私は知っていました。

 ビジョン自体は魅力的のものではあっても、その性格上、具体性に欠けており、これのみでは戦略の本質目標として社員全員を引っ張っていくには無理がありからです。他方、毎年の年度計画は数字という具体性はありますが、今度は社員にとって内容に魅力が乏しいものとなってしまいます。

 そこで、当時両方のことを考慮してやったことは、社員全員に魅力的で、かつ具体性があり、しかも測定可能な大きなものを目標に据えることにしました。

 「5年以内に、上場」というものでした。他のことは大半捨てて、この目標を本質的な戦略目標として、背水の陣を敷いて会社の作戦を展開することにしたのです。すなわち、考えて考えて、絞る、「捨てる」ことから選択した戦略目標でした。そしてそれは、会社の大きな発展につながりました。

 皆様の思考と行動のパターンの中で、捨てる=選ぶというプロセスを経て本質に近づくことに関して私の体験も含めて述べましたが、参考になれば幸いです。

 

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