折々の言葉 / 経営 / 語り継ぐ経営
第154回 事業発展の経営手法(2)
前回の続きです。
(II)黒字だが、更にその額と幅を大きくしたい会社では
大多数の中小の会社は、少ない利益、多分5%位の利益率しか計上していません。それでも事業を継続しています。利益が少なくても、財務管理をしっかりすれば一応会社が回るからです。
しかし、経営者たる者、これで満足するわけにはいきません。
1.「一点集中」
事業を始めた時、ビジョンや、やり遂げたい目標があったはずです。
これを実現するには、「あれもこれも大事」という発想を捨てることです。私は、「一点集中」と言っていました。限られた人、物、金、ノウハウの各種経営資源を一点に集中投資をして勝負に挑むことです。
「一点集中」には、結構度胸が必要です。しかし、賭けではありません。論理的な思考が不可欠です。この時重要なことは、ビジョンや目標を実現するために経営尺度を持ち、それに照らして判断することです。事業の内容によってその尺度に違いがありますが、私は、経営資源たる各種のインプットを利用した結果として、将来得られるはずのアウトプットたる「限界利益」を重要な尺度の一つとしていました。
今やっている事業の限界利益(率)より多くの限界利益を上げると予想できる事業や商品順に、優秀な人材と資金を投入する努力をしていました。ただ、将来沢山の限界利益を上げるはずの事業でも、環境の変化次第で予期せぬ展開になりうることを想定し、「撤退ルール」を事前に決めて、ダラダラと人とカネを投資するリスクを回避する努力もしていました。
2.「質」を重視の作戦転換
量的なことも重要ですが、この頃からは、質の問題を真剣に取り組まなければなりません。会社の発展段階により顧客の内容も変化します。ある程度の商いの量となると、購入の担当者もあなたの会社の魅力のみでは押せない事情も出てきます。このため、会議などで、こと品質面で他のメンバーからネガティブな意見が出てこないように、質、クオリティ面に最大限の配慮が必要となる頃です。価格差はまだしも、品質面での議論には購入先を切り替えさせる議論に大義名分がありそうだからです。
この段階で質の面を徹底的に充実してから、一段上の量的拡大を図ることです。
3.商売方法に新機軸
既存の商売のやり方に疑問を呈して、やり方を変革することです。
今の商売のやり方は、もう峠を過ぎた商売のやり方かもしれません。世の中には新しい道具が沢山出てきています。しかも、多数の顧客の支持を受けたものも見られます。
会社が伸びる時には、必ず何かを変えています。変える要素として何を選ぶかは、その会社により違いますが、他の業種や業界を参考にして、商売のやり方に何か新機軸を取り入れるのが大きく伸びる一つの方法です。
4.商品の種を試行
新しい商品開発を手掛けることです。儲けている商品の寿命も考えなければなりません。儲けている時こそが意外に危険な時期です。忍び寄るリスクの話題は、儲けている事業部の批判に聞こえてしまい、なかなか持ち出しにくい雰囲気が出てくるからです。しかし、競合相手が出てきます。儲けている商品であればこそ、競合もその分野を狙います。
多少黒字化した今の段階で、次の商品の準備をすべきです。ほとんどの商品が成熟したマーケットで競争をしていますから、その商品がすぐに売れるようになるとは限りません。そこで試行錯誤の連続です。そのために、早い段階で複数の商品をトライして、上手くいきそうな商品(限界利益が大きくなりそうな商品)に絞り込むプロセスが必要です。
参考になりましたでしょうか。
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