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人材育成 / 折々の言葉

本物の人間力

Posted on 2012-11-01

 私は沢山の本物の人物に恵まれました。

 一般的な言葉で言う「著名な人」ではありませんが、市井の中に本物の人物がたくさんいることを体験しました。ある会社の経営を託され、その経営に尽力する過程でたくさんの人と出会い観察する機会が多かったことが幸いしたかもしれません。

「真金不鍍」

 本物は「真金不鍍」と言われる通り錆びません。

 しかし本物と偽物の区別は結構難しく、個別の現象を一定期間累積して見るしかありません。

 義務ではないのに人が集まる、その人から人が離れない、人が指導を乞ってくる、このような人に出会いました。

 他の言葉で言い表せば、対価や役職を要求せず相手を扶助する精神があり共感性が豊かで、厳しさの中にも優しさがあり、誠実で約束を破らない肝が据わっている人と、表現できるかもしれません。

集団を引っ張る力

 私が経営を託されていた会社の福岡の支店に、清水和仁君という人がいました。今も他の会社で活躍・チャレンジしています。

 彼の集団を引っ張る力は他の追随を許さないほど力強いもので、多くの人との接点、つながりを大事にしていました。おまけに、彼の業務能力も抜群でした。

 集団に不利なカードが回ってきた時の対処法や、並行的に複数のことに同時に対応して集団のリスクを分散することも常に考え、最後は自ら集団のリスクを取る用意がある人で、根は楽観的で魅力的な男でした。

 その一方で集団が調子に乗りすぎずないように引き際をわきまえ、どこかで集団のツキが落ちることを前提に、早めにゲームを切り上げる判断力もわきまえている男でした。

顧客の声を聴く力

 また消費者の声を会社としてどう活かしていくかに、彼ほど熱心な人物はいませんでした。

 企業活動の中でまずその企業が顧客に何を約束するか、この約束履行に対して誠心誠意、心から実行する意思がまず顧客に見え、かつ伝わることが肝心です。

 私の言う「サービスデザイン」と関係してきます。

 形のみが整備されていても、この意思と実践力が顧客に見えない時には、顧客対応の仕組みが形骸化してしまいます。」これを回避するために顧客訪問などを通じて会社の約束事を守ろうとする清水君の誠心誠意な行動には、本当に頭が下がりました。

 約束の履行に対する反応として、顧客からいろいろな意見が会社に寄せられます。手紙、電話、メール、ソーシャルメディアなど、方法はいろいろあります。問題は、この顧客の声(Voice of Customer)を吸い上げる努力にかかる知恵とエネルギーを惜しまず、顧客の声の表面だけでなく、言葉の背後に潜むインサイトをどう掴むかです。

 経営者であった時、私はこの視点を一番大事にしていました。

 分析手法もいろいろありますが、ポイントは顧客にどう喜んでもらえるかという視点で顧客を観察することです。清水君はそれを一番わかり実践していた人の一人で、非常に優れていました。

 彼はインサイトを何とか見つけたいと、顧客と日常的に接点を持っている人々を通じて、彼らが顧客との接点で「一番嬉しかった」ことを口頭や紙面に述べてもらう「場」を持つことを頻繁に実践していました。顧客に喜んでもらった個別事象から、さらに顧客に喜んでもらう知恵の塊、インサイトを現場の社員から発掘し、ファン層も含む顧客の口コミなどの醸成、拡大で顧客と一緒にさらに良いものを創るためです。

幹部を育成する場所

 福岡にあったこの支店を、私は次の経営幹部を育成する「場」と位置づけしていました。明示的ではありませんが、次の幹部候補の人材はこの支店の長を経験させることにしていました。

 それは、清水君などが中心となって石城君、鶴田さん、丸山さん、河津さん、角田くんなどあげたらキリがありませんがこの支店が、集団の状態を効果的に特定の目的に引っ張り仕事を遂行する能力を組織として持っており、会社全体の良き企業風土を伝承していると認識していたからです。この支店には清水君のような人物が沢山いるので、どんな幹部候補者が赴任してきても、良い経験と企業風土を体験し、確実に成長してくれるからです。

人間力の評価

 人を評価するのに人事考課という制度があります。

 この制度は会社の目的、目標を踏まえて、個人の目標の遂行度に対する上司の評価として客観的に数字に表れるものと、主観的だが数字や度数に換算し直したものの構成要素を総合集計するのが一般的です。

 人を評価するのに、人事的には給与の上下と連動させるために、その総合点で評価するのが一般的ですが、私は、評価項目の個別の内容を見ることも重視していました。

 個別の内容を業務遂行のスキル力、構想を練る力、人間力などに分けて評点づけがなされるとすれば、先ほどの清水君の例では、彼の人間力が最上位に位置付けられる人物でした。人生と同様、組織としていろいろな難局があろうとも、彼はその人間力で、集団を無手自在に良い方向に引っ張ってくれる人物の一人です。

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