園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

「農耕型企業風土」づくり / 折々の言葉

第162回 日本人の精神性(4)

Posted on 2015-07-02

 先週のつづきです。

 

4.以心伝心

 最後に、相手のことを以心伝心で分かる精神性を日本人は備えています。このことは、日本人が「違い」に敏感であることと裏腹の関係です。

 他の人と一緒でないと安心しない、ちょっとした違和感を俊敏に察知する性癖を持っていることです。

 

島国の単一民族

 この背景は、島国の中で単一民族として生きてきたからではないでしょうか。ヨーロッパ、特に東欧諸国に比して日本は大きな民族問題を抱えていません。

 ウクライナで民族問題が発生していますが、ガリツィア地方は複雑なはずです。神聖ローマ帝国が有名無実化しドイツの領邦国家が分裂状態になった頃、オーストリア・ハプスブルグ家の力も衰え、ポーランドはロシア、プロイセン、オーストリアに分割され、現在のウクライナ、ガリツィア地方は一旦オーストリア領となってしまいました。更にこのガリツィア地方は、第二次世界大戦後、ソ連領ウクライナと統合された経緯があることを世界史で勉強して知りました。ウクライナという一つの国としてまとめられても、そこに住む民族のことを考えると非常に複雑です。

 日本でもアイヌや琉球など、民族の問題がないとは言えません。特に最近の安全保障・防衛問題から端を発した、政府の沖縄の人々に対する余りに鈍感な対応を見るに、日本でもその問題から民族問題に発展する危険性を十分孕んでいます。金銭で片づける問題では無く、沖縄(琉球)の人の心の問題なのに、政府の交渉の視点が何となくずれているように思うのは私だけでしょうか。

 

「違い」に敏感な認識と以心伝心

 ヨーロッパ、特に、中東、東欧州の民族問題、すなわち、征服民族、被征服民族の間に潜む厳しい環境と、日本の置かれた状況は全く違うレベルだと認識しています。

 宗教との絡みで、ヨーロッパでは民族問題が多種多様な課題を産んでいますが、日本は、ほぼ単一民族であることが、日本人が「違い」を認識することには敏感ですが、それに対処することの不得手さにつながっているように思います。多種多様な民族間で生きていけば、民族間の違いを認識しながら一緒に生きていく術を自然に会得します。自己の考え方、信条、宗教などと、周囲の人々のそれとの違いを認識しつつ、尊重する行動が自然と身につくはずです。

 「違い」の認識には敏感であるが故に、我々は相手の考えていることを、言葉を介さないで分かる精神性、すなわち以心伝心の心を備えています。ヨーロッパなどに住むと、自分の考えていることを言葉に発して伝えないと相手には分からないと言われます。「違い」があるので、言葉でそれを表現するのが当たり前ということです。

 逆に我々は、沢山の言葉を発して説明されるのに違和感を覚える時もあるほどです。この精神性が、グローバル社会の中で違う評価を受けたとしても、我々の根底には言葉を発しないで「通じる」何かをもっているのかもしれません。「違い」を敏感に認識しはしますが、行動につながらない性癖を持ちながらも、「以心伝心」が出来る優れた精神性を持ち合わせているのではないでしょうか。

 

 以上、日本人の精神性の特徴として、和の心、神道という道徳観、「すみません」と水に流す心、以心伝心の4点について、ヨーロッパ旅行中コラムで述べさせていただきました。

 

Related Posts

 

Comment





Comment