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折々の言葉 / 語り継ぐ経営

第256回 戦略の策定の大前提—環境認識(10)

Posted on 2017-09-28

前回からの続きです。

 

6) 戦略の実行可能性―戦略を絵に描いた餅としない認識が不可欠です

 これまで環境の変化の分析の重要性を、一般的に把握できるマクロの環境の変化について説いてきました。

 それを基にして戦略を策定するにあたり特に留意すべきことを数点述べます。

 

a) 戦略に実行性を担保する

 まず、戦略の実行可能性を常に意識し、皆で実践できる戦略にしなければならないことです。

 そのためには、

i) 「変革に社員が乗り遅れたら、今の生活は保障できない」という危機感を社員に持たせることです。戦略が妥当なものであれば、経営として当然なすべきことです。これなくして大きな変革を伴う戦略は実行できません。

ii) 同時に、現場に数字と施策の戦略が落とされた時、「なるほど、自分がその方向で仕事に努力すれば、会社も成長して、自分のポジションも給料もあがるのだ。」と、社員個々人への腹落ちと納得感がある戦略とすることが肝要です。

私流には、「個人の目標と会社の目標の一致」する価値部分を増やすことです。

 社員の心理的エネルギーが会社の成長を引っ張る大きな力であることを忘れないでください。

 私自身も経験しました。社員のエネルギーが結集した時の会社全体のパワーと戦略遂行のスピード感は凄いものです。「社長一人の機関車より沢山の幹部を巻き込んだ機関車の量が多いほど会社の経営スピードが増す」と、私が強調するのは、この背景があるからです。

 たたき上げの経営者は、自信過剰になりこの部分で失敗し、戦略が実行性に乏しいものになっているケースをよく見るので、ご留意ください。

 

iii) 社員個々人がリーダーとしての資質を備え、常に変革を志向する組織文化を醸成させることです。

 そのためにまず各部門のリーダーに、自分たちが戦略実行の主導役である意識付けをしなければなりません。意識付けにはいろいろな方法がありますが、一番効果的な方法は、戦略策定のメンバーに加え、その後、ある部門を徹底的に任せて、経営体験させることです。

 この際、留意すべきは、社長の介入の頻度をとにかく抑えることです。事業計画の重要項目と数字のセットの握りが成立したなら、その部門運営にはできるだけ社長が口を挟まないことです。

 この方法で自立、自律した沢山の社員が自ら判断し速やかに実行に移す組織文化を作る必要があります。

 

b) 戦略の実践課程でぶつかる大きな曲がり角に留意する 

 いろいろな会社の経営をアドバイスしていて気付くのは、既存の仕組み自体が会社組織の大きな根っことなり跋扈し会社全体を縛っていることです。

 この根っこが時代の動きにマッチしたものに変容可能であれば結構ですが、そうでない時は、問題が結構大変です。既存の根っこが新しい戦略の実行を組織として運用面から阻むことになるからです。

 仕組みは会社内のデータベースの持ち方、人材の評価方法、会議体での発言権等組織体の運営などいろいろなところに影響を及ぼしているので、その中での革新を目指す戦略の実行は結構大変です。時に荒療治も必要になるかもしれません。

 一つの方法として、別組織として、そこで変革の芽を育て伸ばし、ある段階になったら、その組織を既存の会社内に一気に戻し、以前の仕組みを素早く取り替える方法もあることをお忘れなく。

 

c) 戦略から戦術への繋ぎで差がでる

 戦略を毎期の計画に落とし込む繋ぎの部分で、一貫性を貫いた施策かが問われます。また、戦略を繰り返し具体的に説き、毎期の重点施策について、何故それに決定したかという背景をしっかり説かなければなりません。 

 この部分は経営者として最もエネルギーを注ぐ部分であります。

 それなるが故に、これを努力しない経営者とそれを実行できる経営者の戦略展開の顕著な差を残念ながら見ることになります。

 努力しない場合の結果は、経営者本人も社員も「一体何のための戦略策定だったのか?」の疑問と後悔を残すのみで、戦略がいわゆる絵に描いた餅に終わるケースです。

 原因は一つ。トップの情熱不足、情熱を言葉に表す力不足、上下の信頼不足に起因することが多いです。社員の心理的エネルギーの結集に失敗することにつながるからです。

 経営者の皆さん、是非、自らの労が、追って社員の笑顔に転化することをお忘れなく。

 以上、ご参考になれば幸いです。

 

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