園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

カストマーエクスペリエンス

第234回 消費者行動の変化

Posted on 2017-01-19

 デジタル技術の進歩と相まって、商品やサービスを利用する顧客自身の考え方や行動も変化してきています。

 そこで今の時代の消費者の行動にどう対応していくかは、どの会社にとっても悩みの種です。企業のブランドやロイヤルティーなどの構築の仕方が大きな影響を受けてきています。

 これまでのマーケティングの常識的方法をどう修正していくか?消費者の行動の変化を見ていきます。

 

1.自分の価値観に基づく判断・選択をする

 消費者は過去、どちらかと言えば価格の相対比較で製品やサービスを判断・選択してきました。今でも一部の消費者はこれに依存した判断や行動をしているかもしれませんが、全体の趨勢としては商品やサービスが自分の価値観に照らした質(クオリティ)を満たしているかが、消費者の選択のキーになってきています。

 いろいろな販売統計資料を見て驚きます。我々が日常目にするブランド名の商品でなく無名の商品が、はるかに販売上位に来ている。単に私がその名前を知らないというより、明らかに消費者の価値観に照らして彼らの質(クオリティ)を満たすことに専念している開発商品が上位に来ているのです。

 

2.彼らの価値観は、体験で感動することで大きな影響を受ける

 消費者は、「快適」で「楽しい経験」、通称、カストマーエクスペリエンスをうることを求めるようになってきています。経験からの感動を求め、これを選択基準に置いています。従って、企業が提供する商品やサービスには快適性、面白さがなければ、顧客に選択されません。

 となると、今やマーケティングの主導権は完全に顧客にあるといっても過言ではありません。私が『勝ち続ける会社の「事業計画」のつくり方』の中で、企業が成長・拡大する戦略の一つに「顧客第一主義」を位置づけるのはこのためです。

 

3.身近な記事情報、友人などの意見を尊重する

 今の消費者は、自分が信頼する身近な記事情報や友人の意見を入れて消費者行動を起こすことが多い。ブランド名より、いろいろなレビュー情報から質(クオリティ)の良し悪しを自分なりに評価しています。その結果、ブランド自体が消費者にとっての「品質のシグナル」としての役割を今や失いつつあるといっても過言ではないのかもしれません。

 情報量が多くなった中で、消費者が情報処理をするは大変だという意見もあります。しかし、彼らがほとんど問題なく対応できているのは、信頼できるレビュー情報や友人からの情報を基に、賢く自分自身で判断・選択しているからです。

 

4.ブランドのスイッチを簡単にする

 消費者はそれまでのブランド体験を参考にして、新たな商品を選択する傾向がこれまでありました。それは質(クオリティ)の根拠を、手っ取り早く過去のパターンに置いていたからです。

 ところが今は、デジタル化の恩恵を受けて、その気になれば質(クオリティ)の良い情報がほとんど無料で手に入る時代です。過去の体験パターンを全くゼロクリアして、毎回一から最善の選択をすることができる時代です。

 企業から観ると、顧客のブランドスイッチ、中期的な関係性の維持が気になるかもしれませんが、これが現実です。しかも、この行為に消費者がうしろめたさを感じることは全くありません。

 

5.押しつけがましい売り込みや宣伝を嫌がる

 今や、消費者は企業のマーケターを内心ではほとんど信用していません。ましてや、押しつけがましい売り込み方法、宣伝媒体の内容を嫌がり、そのような方法をとる会社からは顧客が離反しかねない時代になってきています。

 彼らは上記の1~4の消費行動の実践を反映する企業風土を持った会社と付き合いたい心理が働くようです。また、1~4への消費者の行動依存度が高くなればなるほど、企業のマーケターからの情報の必要性が低くなるという面白い現象が、今の時代に発生してきています。

 企業経営にとっては、このような消費者の行動変化に則した対応が不可欠となります。「顧客第一主義の本質」を一度考え直してみるよい時期かもしれません。