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デジタル化

第286回 今後の事業視点

Posted on 2018-06-14

人口動態の影響

 日本の空き地が増え続けています。

 先般中国地方で起きた犯人の脱走事件との関連で、象徴的な映像が目に入ったことを記憶している方もいると思います。犯人が隠れているかもしれない家屋を警察官が捜索する家の大半が空き家と思われわれるものばかりでした。これが現実です。

 平成25年の統計では、空き家は820万戸で5年前より63万戸(8.3%)増加。空き家率は13.5%と過去最高のようです。これが2033年にはなんと2,167万戸になるという。すなわち、30.4%となり、自分の家の両隣の一つが空き家となる勘定です。これも現実です。

 何が原因でしょうか。人口の絶対的減少、首都圏の一極集中、少子高齢化がもたらした結果です。

 人口は2015年に1.27億人だったのが、2045年には、1億人と30年間で約3、000万人が減少することになります。一極集中の首都圏でも、人口が2020年の3,569万人から2040年には3,231万人と338万人減少すると予測されています。

 加えて、2015年には65才以上が26.7%(私が生まれた6年後の1951年には5%レベルでした)だったのが、2035年には33.6%と3人に一人が高齢者になると予測されているほどです。

 即ち、働き手が減って高齢者が増えることになり、国家的には社会保険費用負担の増加等が生じますが、個別企業では商品が売れなくなります。売れる商品の仕様が変わってきます。

 皆さん、事業視点で如何に対応しますか。

 

第一に、価値を売ることです。 

 成熟期のこの時代には、価値を判断基準に置く人が増えてきます。しかも、「自分にとっての価値」を求めています。

 誰でも持っているコモディティ的商品には目を向けなくなりました。そのよい例が住宅です。

 日本の住宅は、量産化し量的充足を目指してきました。しかし、人口の減少で新たな需要がなかなか期待できない。加えて、コモディティ化してしまいました。今やコモディティ化した普通の住宅が、車と同じ値段で買える時代になってしまいました。

 人々は他の家との差異化した、何らかの価値を住宅に求めてきています。その証拠に古くても何か訴えるものを持っている住宅は、適正な価格がつくと聞きます。

 同時に、人々はきずなや共感を求めてきています。他人との面倒な関係を避けたがる若者が、イベント等に参加して熱狂を楽しむ光景を見ます。彼らはその場に一緒にいることで他の人と自分の価値観を共有し、自分の立ち位置を確認しているのです。それほど自分の価値観を大事にしています。

 もちろん価値を売るには演出も大事です。良く出される例ですが、ディズニーランドは既存設備のリニューアルで価値を上げ、上手い演出で集客に成功しています。総人口が減る中で、商品に愛着を抱かせるなどの価値と演出で沢山の人々を引き付けて励行している例です。

 価値を売る企業が生き残れるのです。

 

第二に、商品や企業の信頼を売ることです。 

 リーダーや企業の中には謙虚な姿勢がなく、「ナルシシズム」(うぬぼれや自己陶酔)を前面に出した経営をしている人を見ます。

 しかし、それでは上手くいかない。最近では、スポーツの世界での不祥事が、ある大学の謙虚さの欠如した経営組織自体の問題に波及し、大学の信頼性を損なう例をみました。

 また、既成概念に対する挑戦、逆境や拒絶反応に立ち向かう意思の強さならまだしも、出世や 我が身を第一に考える人と映る経営者仲間もいます.

 しかし、そのような企業や組織も、長続きした例をあまり見たことがありません。

 リーダーや組織は「正直であれ」と私は常に説いています。部下との信頼関係を築くための部下への「思いやり」もリーダーの資質です。謙虚さと誠実さと適正な距離感を持った経営が企業の信頼構築に大事なのです。

 なお、デジタル時代においては、自社の信用の源泉として情報の管理が出発点であることは論を待ちません。正確で、鮮度が高く、証拠に立脚した情報であることが、信頼を売る企業として不可欠です。

 

第三に、デジタルデータとの連携を図ることです。 

 技術進歩のお陰で、今やモノや状況が情報と同列に置かれ、一つと捉えることができるようになりました。コト自体も特定の時点、場所、地域での自分と1:1のイベントとして捉えられ、そのイベントの満足を売るサービスを提供する企業しか選ばれなくなります。本当の意味での顧客主導になりつつあります。

 商品が選ばれるには、限られた人口の中から、人々を「集客」する多層なコンテンツが重要です。事業視点としてコンテンツの質と量を劇的に増やす、愛着を抱き、信頼を増すために、多種のコンテンツ群を多層的にプラットフォーム化してオープンな利用を通じて促し、結果として情報の価値を高めることを、企業は目指す事業視点が求められます。

 従って、経営自体がデジタル化と連携した推進を目指さない限り、パラダイムシフトの中で競争に生き残れなくなりました。

 この意味で、デジタルデータとの連携が売れる商品を作るために不可欠となってきます。

 これが時代の潮流です。

 

第234回 消費者行動の変化

Posted on 2017-01-19

 デジタル技術の進歩と相まって、商品やサービスを利用する顧客自身の考え方や行動も変化してきています。

 そこで今の時代の消費者の行動にどう対応していくかは、どの会社にとっても悩みの種です。企業のブランドやロイヤルティーなどの構築の仕方が大きな影響を受けてきています。

 これまでのマーケティングの常識的方法をどう修正していくか?消費者の行動の変化を見ていきます。

 

1.自分の価値観に基づく判断・選択をする

 消費者は過去、どちらかと言えば価格の相対比較で製品やサービスを判断・選択してきました。今でも一部の消費者はこれに依存した判断や行動をしているかもしれませんが、全体の趨勢としては商品やサービスが自分の価値観に照らした質(クオリティ)を満たしているかが、消費者の選択のキーになってきています。

 いろいろな販売統計資料を見て驚きます。我々が日常目にするブランド名の商品でなく無名の商品が、はるかに販売上位に来ている。単に私がその名前を知らないというより、明らかに消費者の価値観に照らして彼らの質(クオリティ)を満たすことに専念している開発商品が上位に来ているのです。

 

2.彼らの価値観は、体験で感動することで大きな影響を受ける

 消費者は、「快適」で「楽しい経験」、通称、カストマーエクスペリエンスをうることを求めるようになってきています。経験からの感動を求め、これを選択基準に置いています。従って、企業が提供する商品やサービスには快適性、面白さがなければ、顧客に選択されません。

 となると、今やマーケティングの主導権は完全に顧客にあるといっても過言ではありません。私が『勝ち続ける会社の「事業計画」のつくり方』の中で、企業が成長・拡大する戦略の一つに「顧客第一主義」を位置づけるのはこのためです。

 

3.身近な記事情報、友人などの意見を尊重する

 今の消費者は、自分が信頼する身近な記事情報や友人の意見を入れて消費者行動を起こすことが多い。ブランド名より、いろいろなレビュー情報から質(クオリティ)の良し悪しを自分なりに評価しています。その結果、ブランド自体が消費者にとっての「品質のシグナル」としての役割を今や失いつつあるといっても過言ではないのかもしれません。

 情報量が多くなった中で、消費者が情報処理をするは大変だという意見もあります。しかし、彼らがほとんど問題なく対応できているのは、信頼できるレビュー情報や友人からの情報を基に、賢く自分自身で判断・選択しているからです。

 

4.ブランドのスイッチを簡単にする

 消費者はそれまでのブランド体験を参考にして、新たな商品を選択する傾向がこれまでありました。それは質(クオリティ)の根拠を、手っ取り早く過去のパターンに置いていたからです。

 ところが今は、デジタル化の恩恵を受けて、その気になれば質(クオリティ)の良い情報がほとんど無料で手に入る時代です。過去の体験パターンを全くゼロクリアして、毎回一から最善の選択をすることができる時代です。

 企業から観ると、顧客のブランドスイッチ、中期的な関係性の維持が気になるかもしれませんが、これが現実です。しかも、この行為に消費者がうしろめたさを感じることは全くありません。

 

5.押しつけがましい売り込みや宣伝を嫌がる

 今や、消費者は企業のマーケターを内心ではほとんど信用していません。ましてや、押しつけがましい売り込み方法、宣伝媒体の内容を嫌がり、そのような方法をとる会社からは顧客が離反しかねない時代になってきています。

 彼らは上記の1~4の消費行動の実践を反映する企業風土を持った会社と付き合いたい心理が働くようです。また、1~4への消費者の行動依存度が高くなればなるほど、企業のマーケターからの情報の必要性が低くなるという面白い現象が、今の時代に発生してきています。

 企業経営にとっては、このような消費者の行動変化に則した対応が不可欠となります。「顧客第一主義の本質」を一度考え直してみるよい時期かもしれません。