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マインド

第290回 リーダー意識(2)

Posted on 2018-07-26

 前回の続きです。

 それでは,目指す「リーダー人材」になるには具体的にどういうマインドを持ったら良いのでしょうか。

 

協業のマインド

 協業の発想を重視します。

 まず取引先とともに成長する視点です。そういう取引先を選ばねばなりません。

 買う側と売る側の交渉で気を付けねばならないことがあります。購入側が仕入側の立場も尊重しなければ、長い付き合いはできなくなります。急場で助けてもらえなくなるからです。

 また社内では、目標(Objectives)達成に向けて隣の部門と一緒に協力する視点を重視します。会社の最終目標に向けて各部門が自分の仕事をしてから、バトンを次の部門に受け渡す。それぞれが目標(Objectives)も持っています。両者が協力してそれぞれの部門目標を一緒に達成することのマインドが肝要です。

 これらは、私が言う「三方一両得」の発想で、皆がそれ相応に利益の分配、最悪は、損失の分配にあずかる発想です。

 

長所を見るマインド

 さらに、上に立つ人は、部下の長所を見る癖を持つことです。

 人間誰でも自分本位で発想しやすいものです。どうしても「自分はしっかり仕事をしている」のに、「部下が仕事をしないので」計画が未達だと、部下を責めやすくなるものです。

 はたして、この発想で皆が得をする、マインドを積極化する展開になるでしょうか。

 部下の短所のみ見るとその部下に安心して仕事を任せられなくなります。いつも心配することになります。

 部下も思い切り仕事にエネルギーを投入できません。いつ怒られるかわからないので戦々恐々としたマインドです。安心できないので、仕事の効率など上がるはずもありません。

 この結果は、最終的にはあたかも「ブーメラン」のようにその上司に帰ってきます。

 この場合、上司も部下も会社も誰も得をしていない「三方一両損」の最悪のパターンとなります。

 

「一人結果責任」のマインド

 最終結果はリーダー一人の責任になります。

 リーダーが「自分は一生懸命仕事をしているのに、部下が・・・」というような発想では、事業の運営サイクルはほとんど例外なく、負のスパイラルにはいります。

 こうならないためには、その責任者が、結果は自分一人の責任であるという基本的認識をもって仕事をすることが重要なのです。

 前の項で述べた通り、部下の長所をどう褒めるかという発想に切り替えることです。たまには、部下を本気で怒らなければならないことがありますが、そこにかける比率をうんと低くすることです。

 

戦略を「思考する」マインド

 私は、「考える」、一人で考えることを非常に大事にしています。

 経営者の指導でも、ことあるごとにこのことを言っています。

 私が提唱する「農耕型企業風土」づくりのキーとして、個人が自立してこそチームをレベルアップできることを強調している項があります。「最初に、適切に、仕事をする」を個々人で考えることの事例です。何をどうしたら全体の目的を達成することにつながるのかをチームの一人として真剣に考えることです。

 これを慶応義塾の創設者、福沢諭吉先生は「独立自尊」と表現されたかもしれません。「一身独立して、一国独立す」とも言われています。横並び的発想や群れることを排して、自立を促しています。

 一人でじっくり戦略を考えることで、人間は成長するのではないでしょうか。

 一人だからじっくり考えるとも言えますが、考えて、考えて人間ははじめて独り立ちすると思います。リーダーは「Whyで発想する」習慣を持つと、考える習慣がつきます。

 

事業展開の中での「仕掛け」のマインド

 中・長期的に成長・発展し「勝ち続ける会社」になるには、「仕掛け」、「仕組み」が必要です。

 このことを『これからの課長の仕事』と『これからの社長の仕事』で書きました。また、事業計画や経営戦略の教科書的に、『勝ち続ける会社の事業計画のつくり方』の本でもふれました。

 しかも、「人間臭い」仕掛け、仕組が今必要です。なぜなら、「乾ききった人間関係」に飽き飽きし、もっと「湿り気のある関係」に、皆が重要性と魅力を感じているからです。

 入社3年目の社員をしっかりフォローするために、新人を「里子」とみなして「里親」を、また2年目の社員に、「里兄、里姉」の役目を与えるバーチャル家族の共同体を会社の中に作った社長もいます。

 私は、重要な「仕掛け」の一つとして収穫祭を兼ねたイベントをやっていました。役員が社員、家族や取引先をイベントに招待して、徹底的に楽しんでもらう仕掛けです。

 集まる人々の醸し出す雰囲気や人間集団の出会いを通じて、会社との一体感を醸成するのに役立ちました。

 ある会社で「金曜しゃべろう会」を実践し始めました。一週間の終わりの金曜日の夕方、会社内のバールームに社員が三々五々集まり、ビールでも飲みながら、自部門の自慢話を披露したり、仕事の進捗を皆に開示したり、普段接点の薄い部門の人からの意見を聞いて自部門の知恵としたりと、目的はそれぞれ多種多様ですが、自由に裃なしの普段着で喋る「場」を提供するものです。これも仕掛けの一つです。

 

社員の発想を柔軟にするマインド

 企業には飽くなき「知の探究と知の深化」が要求されます。

 知の探究のために、常に新しいことに取り組まなければなりません。即ち、知の幅です。

 また知の深化のためには、自社の得意とするところを深堀しなければなりません。これまた、新しい商品や開発事業に触手を伸ばすことに関係します。

 このためにはいろいろな方法があると思います。一つは、社員に常にこの発想を持たせる仕掛けを仕組みの中に入れることです。毎週、毎月の社員からの報告に、「どんな新しい取組をしたか?」を入れて、そこを議論することです。

 米国の3Mで採用をしているといわれる方法は、日頃アサインされた業務以外に、ある一定の自分の業務時間を使ってもよいというものです。その時間を新しいことを開発するアイデア醸成のために全社員が使うとすれば、どれだけ新機軸につながっているか想像してみてください。

 この事例のように、新しいことに触手を伸ばさなければならない危機感を全社員と共有し、アイデアを出してもらい、それに本気で取り組む仕掛けを仕事に組み込む。そのような企業風土をつくる。その企業風土を醸成しようとするリーダーとしてのマインドがここに試されことになります。

 

第289回 リーダー意識(1)

Posted on 2018-07-19

社会に何を築いていくかの根本的マインド

 「儲かる会社」、「儲かる事業」などという表現をよく耳にします。

 会社としての最大の目的が、たくさんの顧客を発掘して、結果として利益を上げることだとすれば、「儲かる」ことは当然の表現です。会社を支える株主を考えれば、所期の利益を上げ、「儲ける」のはリーダーとして最小限必要なことで「勝ち続ける」ことがポイントです。

 しかしながら、これだけで十分でしょうか?

 リーダーには、もっと大事なことを目的の一つにして欲しいと私は考えます。

 その会社が社会のために業界の中でどんな新しい橋頭堡を築いたか、築いていこうとしているかが大事なことではないでしょうか。

 どのリーダーにも物語、ある種の野望があります。この野望が単にリーダーの私利私欲でなく、世の中を変革して新しい何かを築いていくことになれば、これくらい幸いなことはありません。

 長いスパンで考えると、結局はこのことがその会社の価値を決めることになるのではないでしょうか。

 

リーダー人材づくり

 社会のために何を築くのかの内容は、リーダーの野望やその事業が置かれた業界や業種によって違いがあります。

 私は、いろいろな過程を経て、「人つくり」で社会に橋頭堡を作るのも大きな責務と考えています。しかも、本人自身を高めつつも、集団のことに配慮し、人の心に情熱と安心感を抱かせることができるリーダーたる「人つくり」です。

 このような「人つくり」こそ、今の時代に必要だと確信しています。

 私個人はHow-toにたけた「人つくり」ではなく、社会に何かを残す上記のような「リーダーになれる人材つくり」こそが、一番の社会貢献になるものと考えています。

 多少コストがかかってもこのような「人つくり」に重要なターゲットを置き、これで会社の社会的価値づけをしようと考えていましたが、今もこのスタンスに変わりありません。

 ここで私が目指す「リーダー人材」になるには、具体的にどういうマインドを持ったら良いのでしょうか。

 

顧客密着を徹底するマインド

 モノやサービスが売れない限り、会社は成長しません。

 私が事業で常に発想しているのは、自社の商品やサービスが本当に顧客に受け入れられているのかを常に振り返ることです。

 売れないのはあくまで現象で、顧客に受け入れられていない時にはその背景があるからだという根本的認識が不可欠です。

 顧客の要望を、いろいろなチャンネルやメディアやイベントを通じて把握することから始まります。汗をかく地道な仕事になります。

 顧客の声を聴き続けると、「顧客に受け入れられているはず」という社内の力がある部門や特定の人の一言で全てを通してしまっていることが、意外に会社の成長を大きく妨げていることを猛省する機会になります。

 

社員集団の知恵を生かすマインド

 同様に、自分の会社が社員にどう映っているのかを、経営側として常に気にしている視点目標を大事にしています。

 これは社員に媚を売ることを言っているのではありません。

 経営陣、社員、取引先などの共同体組織がたまたま会社という形態をとって、社員を雇用しているという理解から発想しているからです。

 会社の内容が社員によく映ることは、彼らの脳の回転を積極的にし、彼らのマインドが活性化することにつながります。全員で協力して会社をさらによくしていこうという発想につながります。これが結果として、顧客に受け入れられることにつながるのです。

 やることでマイナスはありませんが、特段大金をかけて「社員満足度xx調査」などする必要性なども本来ありません。社員への映り方の把握のために、有益な情報は社内のそこら中に沢山落ちているからです。上司と社員の「1:1の対話」こそを、常に心がけているかがポイントになります。

 経営施策が社員にどう受け入れられるか、どう映っているかを出発点とし、集団の知恵で創意工夫をこらし「PDCA」を回して、自社の商品やサービスを買う側、利用する側の視点で、皆で改善することにつなげていきます。

 商品やサービスの開発も、顧客の要望をどうくみ取り、自社が顧客と一緒に、いかに繁栄していくかの社員の視点を基本とします。

 

何に差異化を置くかのマインド

 さらに、差異化をどうするかを重視するのも当然のことです。この発想がある限り、「景気の波が・・・」と他のことを理由にする議論から少し距離を置けることになります。

 景気の悪い時期をプラスに利用できる発想もでてきます。

 皆が苦しいこの時期、自社も苦しい。

 しかし、逆手に取ってその期間に自社の差異化に時間とエネルギーを費やせば、競合より相対的メリットが多く出せます。

 そのような期間に革新的なことに取り組む機会です。例えば、競合に先駆けて顧客をサポートする革新的体制をどう作るかなど、景気が悪いその時期にこそ取り掛かれる。このことがどれだけの大きな差異化になるのか、実は、その時より後になって分かることなのです。

 

 

第280回 マインドの問題

Posted on 2018-04-26

 ビジネスマンの世界で「結果を重視せよ!」という指示が飛ぶのをよく見ます。しかし、経営上それが本当に得かを考えてみた上のことでしょうか?

 確かに「結果は行動で決まる」という経営の考え方もあります。これを強調するあまり、特定の人物の行動パターンを見習えといったやり方を押し付けるなど、極端な経営者も稀にいます。

 

マインドセットが行動に影響する

 しかし、それでは上手くいかないケースを沢山の経営者が体験してきています。何故でしょうか?

 結果には行動でなく、社員のマインドセットが大きく影響することが原因です。

 私もこのことを、経営上体験してきました。

 疲弊しきった社員の心に結果のみ押し付けても上手くいかない。むしろ、行動に反映できない心の部分に何か問題が潜んでいる、このことを経営側が分かって社員に手を差し伸べる手段を講ずるほうが行動に影響を及ぼし、経営上はるかに良い結果につながることを、学びました。

 社員のマインドを変えない限り、事象が一瞬良くなったとしても、マインドが定まっていないので行動パターンは一般的には長続きしない。カンフル的措置で一瞬経営回復したように見えても、中期的には成長軌道に乗らない会社を多く見るのはこれが一因です。

 戦略の妥当性などを除けば、経営が上手くいかないのは大半社員のマインドが原因です。マインドの持ち方が正常にセットされていない社員で構成されているからです。その背景にはいろいろな事情や壁があります。

 職場の人間関係などの壁もこの一例です。行動の変化を双方に指導しても効果がでない。良くなったようにカモフラージュして双方一時避難する。双方のマインドの部分に原因があるので、行動より更に深いところで人間関係がギクシャクしているので、解決しません。

 双方の一方的な思いの部分を変えてもらわない限り、カモフラージュが剥がれ心理的対立が残ったままになり、組織の効果的運営に支障をきたすことになります。

 

マインドセット—心の持ちよう

 ここにマインドセットとは、心の持ちようです。「志」、「信条」、物事をどう観るかの「捉え方」、「視点」ということ、人や周囲との関りでの人間関係、直面する課題、環境、チャンス、責任などをどう捉えるかの心の姿勢です。

 従って、本来は個人の問題です。

 ところが、集団で仕事をする、集団で何かを追求する場合、個々人のマインドが上手くセットされていないと集団がまず機能しない。同じ目標に向かって一致団結してその目標を達成しようとするマインドが少ないと、たとえ優秀な社員を揃えても、組織としてのエネルギーが高揚されません。

 

入り口の重要性

 ビジネスマンのマインドを形成するためには、ビジネスマンとしての入り口が大切です。

 入社時の研修は、たとえ上手くなくてもとにかく自社で対応する。自社の社員の中で鏡と見做す人が運営すべきことを、私が主張するのは、入り口のところで良いマインドをセットさせるためです。

 ビジネスの世界で一番重要なことは社員が最初に入社した時の環境、最初の上司です。新しい世界に入った時の第一印象が、ビジネスマンとしてのマインド形成の入り口です。

 従って、会社内のピカ一の人を上司として当てる。マインドのレベルが低い人は絶対に充てない方針を貫いています。

 

自分事の視点で捉えるマインドをセットする

 マインドのセットで最初に重要なことは、人の働く環境、直面している問題を、自分事の視点で捉えられる姿勢を植え付けることです。

 研修などでビジネスマンに最初に基本的なことは教え込む。咀嚼した段階で評論家風でなく自分事として捉えるマインドを植え付ける。知識を植え付けるステージから物事を真剣に自分事として捉え、その課題をどう解決するかのマインドをワークショップなどの体験を通じて会得させる事が肝要です。

 

組織を経営できるため周囲の環境を察知して対応するマインドをセットする

 次に、「自分のために」を優先するのでなく、集団の成果につなげるにはどうするかの視点を身に着けさせることが重要です。組織を経営するには必要不可欠なマインドです。

 私は、経営のために必要なマインドをセットさせる一環で、会社のマネジメント方法にグループ制を薦めています。組織を小グループに分けて、一定の範囲内で本人に経営を任せマネジメントさせる方法です。グループをまとめて経営する体験から、自分の立ち位置と周囲の目標との関係を考えることにより、経営にとって必要なマインドセットの仕方を学ばせるためです。

 自分のグループのことのみを考え、自分のグループのための利益のみを考えるマインドでは、追って行き詰ることを、グループ経営の体験で学びます。

 修正するための術も身に付いてきます。隣の部門や相手のニーズ、目的、課題にしっかりと目を向け、自分の仕事が相手に与える結果を想定し、隣の部門にも役に立つように自ら努力する術です。

 例えば、全社のコスト削減の指示が出たとします。これに対して自グループのことのみ考慮した策を講じたとすると、他のグループや会社の事業全体のエキスの部分に損害を与えることにもなりえない。部門の機能は皆つながっているからです。結果、全社の人的資源の一律カットのところまで行きついたとしたら、自分のグループは生き残れたとしても会社全体がおかしくなり、自グループの存在も危うくなります。当然、皆が損をすることも分かります。

 相手の仕事を知らないと組織の経営できなくなる、互いに相手の仕事内容を知ることでそれぞれが相手の仕事と自分の仕事のつながりをよく理解できるようになり、全体効果を上げるために、自分に何ができるかを考える習慣がグループ制下で芽生え、セットされていきます。

 逆に、壁の厚い組織では、これが出来ていません。隣の部門がどのような仕事をして、今何に困っているかを知ろうとしません。これでは組織全体は効率的に回るはずもありません。自分のグループのことだけを考えて、結局自分が損をすることになります。マインドが関係します。

 詳細は省きますが、私自身この弊害を除去するために、「農耕型企業風土つくり」の経営と称して、この経営手法を提唱しています。この経営を進めると、隣の部門の苦痛を肌感覚で察し、必要なタイミングで隣の部門に手を差し伸べる互助のマインドが醸成されます。結果、組織の経営にも役立ちます。

 債権回収の仕事で実績を上げる社員が相手が何に困っているのかを察知し、それをサポートする姿勢と具体策を通じて自社の債権の早期回収に成功するパターンとよく似ています。

 

マインドセットで変わること

 最初の入り口で、良いマインドをセットする。経営的マインドをセットさせる。このような社員の塊が増えると、マネジメントのやり方さえ軌道に乗せれば、管理をしなくてもよい職場になりやすいです。マインドセットが変わると社員がおのずと行動を起こすようになるので、「行動を変えろ」と指示する必要はなくなります。こういう社風の職場をつくると企業の成長が早いのではないでしょうか。