園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

定石、理念、変化、対話、場

センターの社員をやる気にさせる(2)

Posted on 2014-10-23

前回の続きです。

 

4.定石18 力量を発揮する「場」をつくる

 社員は皆、自分の実力をどこかで発揮したいと思っています。そのためには具体的な「場」が必要です。

 長と名のつく人が、前回述べた対話で部下を知ることになったとしても、部下が自己の力を発揮できる「場」を提供してあげなければ部下の喜びは半分です。しかし、この「場」が意外に少ないことを長たる人は認識すべきです。

 組織内でのフォーマルな「場」は期の始めや中間期の組織編成でかなり決まってしまいます。しかし、その制限の中でも長たる人は部下の力量を発揮させるあらゆる工夫をしなければならない立場にいます。従って、日常定められた「場」のみならず、インフォーマルな「場」でも結構ですのでとにかく「場」を用意してください。この「場」で周囲が意外と思う力量を発揮する人も出てきて、その人を見る周囲の眼も変わってきます。それがきっかけで、チームとして仕事のやり方が変わってくることがあります。

 小さなことですが、これらの積み重ねで初めてマネジメントが上手くなることにつながるのです。このことを理解しながら、長は部下が踊る「場」づくりに邁進すると、センター改善のきっかけが見えてきます。

 

5.定石7 喜びも苦しみも分かち合う「湿り気のある関係」をつくる

 センターの社員は大半がチームで仕事をしています。入社して一人前になるために、チームの上司から沢山の指導を受けます。自分の実力はチームの力を借りて初めて発揮できるようになります。

 また、長は指導した部下が成長していく姿を見て嬉しく思います。逆に指導した社員が自分のグループから抜かれていくと思う心理が蔓延しているとしたら、そのセンターは、本当の意味で助けあうチーム環境がまだ出来ていない証左です。

 改善は可能です。長たる者は、私が本の中で紹介した「湿り気のある関係」を造る努力をされることを薦めます。最初は孤軍奮闘です。しかし、このことに賛同する同志が増えることで、センターのいろいろな改革に勢いが増してきます。同じ船に乗っている感覚を社員が肌で感じるようになってきます。センターのみならず会社全体にとっても、中・長期的な利益の増大に不可欠な定石だと考えます。

 

6.入り口をしっかりすること

 当たり前のこととして、私の経営の定石の中には明示していませんが、人の採用の入り口をしっかりすることです。以後の社内教育研修で成長できる伸びしろも、人によって違いがあります。出来れば伸びしろが大きい人を採用したいものです。しっかりした人材、会社の事業内容に即した人材を入口の採用のところで見極めることです。

 人事採用にピカ一の担当者を置くのも方法です。最初の接点を持つのは、社長ではありません。採用される候補者が会社と最初のフェーストゥーフェースの接点を持つ相手は採用担当者です。採用担当者が会社のイメージを植え付けることになるのです。

 

7.定石7 社員の個性を大事にする

 社員個々人の個性を把握して、彼らが育つ環境をつくり指導することです。

 人により個性に特徴があります。学生時代の体験やその人の就業経験などから皆、違う個性を持っています。その個性は、その人が育つスタイルにも反映します。人事を担当する人に聞くと良く分かりますが、行動型や考え込む型などいろいろな人がいます。私が経営していた時も、その社員の型の特徴を把握しながら人事配置や担当を決めていました。

 この特徴を把握して、その部下が一番ヤル気を起こすスタイルを上司は用意してやるべきです。行動型の社員には、とにかく彼の欲することをすぐにもチャレンジできる出番の環境を与えることです。考え込む型の社員には、彼が考える時間と材料を沢山与えると、彼のモーチベーションが上がります。また、一つのことを集中して考え込むほどではないが、周囲や全体の観察をしないと真剣に仕事に着手しないタイプの社員もいます。このような社員には、全体像を明示して、彼が興味を覚える切り口分野での環境を用意し指導することを薦めます。このように個性を伸ばし、それを発揮させる「場」を用意するにも前回の3で述べた通り、「対話をする」という忍耐強い努力がスタートです。

 以上、ご参考になったでしょうか。

 

センターの社員をやる気にさせる(1)

Posted on 2014-10-16

 先般、ある会社のコールセンターの視察に行きました。センターの改善が主たる目的です。このセンターを改善するには、いろいろなことが必要であることが分かりました。予想通りその中で、まず現場の長の立場の人に留意してもらいたいことが鮮明に浮き彫りになりました。良く考えてみると、これらのほとんどは私が『これからの社長の仕事』の中で「農耕型企業風土造りで企業を中・長期的に発展」させるための「経営定石」に包含されていることでした。

人の上に立つ人には、共通して会得していなければならないマネジメントのイロハがあることを物語っています。

 本日は、現場の「やる気」を引き出すために、センターの長たる人がやるべきことの一部を、経営の定石との関連で述べさせていただきます。なを、定石の番号は私が本の中で付番したものです。

 

1.定石4 経営理念を明確に打ち出す

 現場の長はトップ経営者ではありません。しかし、沢山の社員の上司という立場にいます。そのセンターが何を目指しているのかを、彼の立場で現場集団に明確に示さなければなりません。

 すなわち、現場の長は目指す目標を定め、現場の社員に分かりやすい言葉で、その内容を説明開示しなければなりません。これは当たり前のことに思えますが、意外とこの最初の所が不明瞭になっていることが多いのです。特に、急成長したセンターなど、理念の整理が追いついていないところで起きやすいことです。

 目指す目標が明確に打ち出せていないと、現場の社員はそれぞれ自分が何を目指したら会社から評価されるのか、上司が自分に何を期待しているのかが分かりません。結果として、上司の指示と部下の行動に大きなズレが生じて施策が後手に回り、センターのモラール向上が期待できないことになります。

 

2.定石15 意識を変える

 長たる者は、現場に変化をもたらし、現場の社員の意識を変えることをすべきです。これはあらゆる組織に関して言えることだと考えます。現場のセンターでも、小さい規模が急激に大きくなった場合、社員や現場の責任者の意識がセンターサイズの拡大に追いついていけない現象が発生することがあります。特に、意識を変えるべき立場の長自身が変化に追いついていない場合は、事態が深刻です。詳細は省きますが、他の解決策を同時並行的に推進しないと混乱の解決に時間がかかりすぎることを付記しておきます。

 長も社員も毎日ルーチンの同じような仕事をしていると、一見みえる場合が多いのですが、実は顧客の要望は日々変わってきて、革新を求めていることに気づいていないのです。そのことに気づくのが遅れて、センター全体がマンネリ状態で走っていることによく出くわします。このようなセンターでは、意識を変えるきっかけづくりより、当面の顧客の要望対応に追われて混乱をきたし、社員からいろいろな不協和音が聞こえてくる事態になります。

 上から下までの意識を変えるきっかけが必要となりますが、一番の責任は長と名のつく人にあります。上記に記載した通り明確なセンター目標の明示を前提として、成果を上げた社員を褒めて認めてあげる、部下の仕事の内容を少し変えて、本人がより上位の仕事を要請されるようになったとの意識を持たせるのも方法です。いずれにしろ、単なる言葉のみでなく具体的な業務を通じて意識改革を図らねばなりません。

 

3.定石8 対話をする

 対話をすることは相手の考え方をしっかり把握することに通じます。一人一人の部下の特徴、強みを知らない限り、更に上位の仕事を任せる具体的イメージが長たる人に湧きません。

 上手く運営されていないセンターの最大の特徴は、上司が部下のことを意外に知らないことです。風評などで知ったつもりになっていることが多いのです。これでは、それぞれの社員が本当は何を目指して仕事をしているのか分からないので、センターの舵を取るのが難しくなってきます。

 対話には時間がかかり、しかも聞くことの忍耐も必要とします。上司が部下個人の心の中にまで入り込むことは戒めなければなりませんが、まず、その人を「知ること」です。個性も違います。何を褒めたらその人の琴線に触れるかも個人によって違います。

 まず、対話を通じて「知ること」で、長たる人に、部下をどのような指導をしたら良いかのヒントが湧いてきます。