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折々の言葉 / 政治と国民

第171回 多極化時代の世界とアメリカの現状から学ぶこと(1)

Posted on 2015-09-10

 国際政治学者サミュエル・P・ハンティントン氏の『文明の衝突』が1996年に著わされ、二年後に日本で翻訳され広く読まれました。私もその翻訳内容に衝撃を受けた一人です。

 この政治学者は、冷戦後の文明間の衝突についてコソボ戦争などを分析し、これから世界で起きる紛争は、イデオロギーではなく、「文明の違い」に原因があると、述べていました。その主張を少割り引いて考えても、今の世界の不安定な情勢、アメリカの力の失墜の状況を考えてみると、彼の主張の本質を良く理解できます。

 

ブロック化

 私が高校生のころ、留学生としてアメリカにいた1960年―61年頃は冷戦時代でした。世界が民主主義国家、共産主義国家、第三世界のブロックに分かれていましたが、今は、西欧、中華、日本、ロシア正教会、イスラム、ヒンズー、ラテンアメリカ、アフリカの8つくらいの文明同士のブロックに分けられていると、先の本に記載されています。

 その中で西欧は傾向として衰えつつある文明で、政治的・経済的、軍事的影響力は低下しています。

 大半の西欧諸国では、人口の頭打ち、社会保障費の負担の増加により政府の巨大な債務が累増しており、経済成長率も鈍化し、国力が相対的に衰えてきている現象が出ています。

 他方、中華やイスラムの影響力が増して来ています。中華やイスラムの影響は、そのやり方や正当性は別にして、大きく増して来ています。20世紀末から221世紀初頭に入り、若年層が増えた一部のイスラム教国が、隣接の人口が少ない集団に軍事的な圧迫感を与えています。このため異文明間の接点における境界線での戦争が頻発しているのが現実です。

 文明の異なる国家やグループ間で紛争がおきると、政治的な背景も絡めて同じ文明、若しくは、政治的に近い他の国家が支援に回る傾向が強いので、紛争がエスカレートしやすくなってきています。東欧の一部や中央アジアで発生している諸紛争が、この現象です。人々がアイデンティーを求めて文明のブロックでまとまりやすいのです。この時、文明と宗教が入り交じり、宗教と短絡的に結びつく危険を孕み、状況が複雑な内容を呈してきています。

 

アメリカの一極支配の終わり

 文明同士のブロック化が進み、アメリカの一極支配の時代は終わりました。複雑な多極の時代に入りました。すなわち、EU、日本、中国インド、ロシア、アメリカがそれぞれの地域の極になり、諸国の力が分散し、もつれ合う奇妙なバランス状態が続いています。

 何故このようになってしまったのでしょうか。

 アメリカなどの中核国家の力が相対的に弱まったことが大きな原因ではないでしょうか。この背景などを理解するため、アメリカの状況を説明しながら日本が学ぶべきと思われることについて数回に渡りふれてみます。

 

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コメント1件

 蛭田 | 2015.09.11 11:46

だからこそ今後アジアにおける日本の役割はおおきのではないかと思います。私達日本人もアジア諸国について学ぶ必要がありますね。

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