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折々の言葉 / 政治と国民

第177回 多極化時代の世界とアメリカの現状から学ぶこと(7)

Posted on 2015-10-22

前回の続きです。

 

ギリシャの轍を踏まないこと

 ところで、所得格差が拡大しないように我々がいくら頑張っても、日本の財政が破たんしたのでは、元も子もありません。ここで、ギリシャを例に挙げながら、日本の財政がどうなっているのかを俯瞰してみます。

 アメリカの財政が厳しいという内容を、このコラムの中で述べました。実は、それよりも大変な国があります。よく話題に上るギリシャです。日本の現状を語るのに参考になりますので、少し、横道にそれますが話題とします。

 今回のコラムのために、ギリシャのことを調べてみました。

 端的に言えば、かつてアメリカでやったと同じカネのばら撒きが、ギリシャで起きました。沢山増刷したこのカネを国有企業に導入しすぎたのが、ギリシャの財政破たんの始まりのようです。

 すなわち、1974年、それまでの軍事政権から選挙で社会主義政権へ移行したのは良かったのですが、ここで政権は労働者主権を標榜しすぎて、市場にカネをばらまく政策をとりました。

この時期、ヨーロッパ各国がある意味でヨーロッパの起源たるギリシャを何とか仲間に入れたいと積極的にギリシャを口説き、1981年、ギリシャはEUの前身のECに正式に加盟しました。

 このような連盟に加盟すると、インフラ等各種投資に沢山の補助金が出るとのことです。高速道路などは、自国の負担は1/3くらいで、残りは連盟が補助してくれるとの話も聞きました。ギリシャに入るこの補助金を財源として、その金を国営企業づくりに利用したようです。選挙の票の見返りに国営企業の職とポジションを斡旋するという安易な政治をやり、結局、新聞でよく記事になる通り、4~5人に1人が公務員がとなることになったようです。

 2001年にユーロ圏に入りますが、1ユーロが300ドラクマ以上となり、国民の通貨感覚が麻痺してしまったと、ある本に記載されていました。国が大インフレとなり、金銭感覚がマヒして国民の消費グセもついてしまったようです。

 ユーロ加盟でギリシャの信用が増大し、外国からの資金が流入(この背景にヨーロッパ、特にドイツの銀行がいろいろな儲け話に関係し、資金流入に積極的に動いたとの噂も耳にします)し、庶民に貸付(かなり外貨で貸し付け)し、政府は大量の国債を発行したとのことです。

 これ以後に起きることは当然の帰結です。

 2010年に財政危機が表面化し、2011-12年頃から国民の生活が激変したと言われます。国民の大多数の給与、年金がダウンし、新税制導入で、企業倒産、雇用の解雇の嵐となったことが新聞報道で記憶に新しいと思います。

 この危機を、EUからの特別支援で一時的に何とか乗り切ったように見えました。

 しかし、2015年、EU内部もギリシャに対して強硬路線をとるようになりました。結局、ギリシャの新首相もぎりぎりの線で交渉を妥結させ、返済期限4か月の延長で合意し、国の破産宣告がなくなりました。これまで以上に国民に緊縮財政を強いることとなりますが、25才で65%が失業中であるにも拘わらず、自分の不利益には「ノー」で、3Kの仕事などは違法滞在の外国人にやらせるこの国民を、何度も選挙を繰り返し選ばれる、時の政権が納得させられるかはなはだ疑問で、財政破たんの問題の先送りとしか、私には見えません。

 

日本の金融政策のトリック

 ギリシャのケースは極端としても、日本の財政赤字も放置できないほどだと言われます。特に経常収入で経常支出を賄うプライマリーバランスが問題です。アメリカが財政赤字を縮小するために軍事予算を減らすなど、いろいろとやっていますが、日本ではどうすれば良いのでしょうか。

 日本の借金は、1000兆円です。毎年の収入、すなわち、GDP(安倍首相が最近600兆円を目指すと言っています)の2年超であるという事実です。

 この財政を立て直すべく側面援助で黒田日銀総裁が行った「異次元の金融緩和」策は、デフレからの脱却と称していました。日銀が2年間で市場に供給する通貨の量を2倍に増やし、2%(最近この時期が曖昧になってきました)の消費者物価上昇率を達成するというものです。

 しかし、これには、誰が考えてもすぐ分かるトリックが潜んでいます。

 政府の財政赤字を日銀が穴埋めすることに他ならないものだからです。カネを市場に供給するかに見えて、実はそこで還流した金を日銀が引き受けている方式です。国の借金を国の一部の日銀が引き受けている構図です。

 またこの策は、株高がずっと続き、税金の増加と国民の消費増加で財政赤字が軽減するというストーリーです。しかし、国債市場が危機に瀕している日本で、これが上手くいくわけがないとの見方もあります。

 国内の成長企業が多くなるほど、投資資金が国債から株式などに向かい、国債市場が有力な買い手を失うことにもなるとの皮肉な議論もあります。こうなると公的年金の債券離れが生じて、国債の金利高騰への影響が無視できないほどになります。

 後述する通り、歳出の半分近くを国債で賄う恒常的な赤字体質と少子高齢化に悩む日本の場合、将来の財政が好転する展望が描きにくい状態です。ある日突然ギリシャのようにならないと誰が断言できるのでしょうか。

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