園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

折々の言葉 / 政治と国民

第178回 多極化時代の世界とアメリカの現状から学ぶこと(8)

Posted on 2015-10-29

以下、前回の続きです。

 

日本の財政状態の図式

 先述の通り、日本国家の借金が1000兆円を越えており、明らかに財政が危機状態にあります。GDP比率230%ということは2年超分の借金があるということになります。

 平成25年度の国の一般会計予算は歳出が92兆円、歳入が47兆円(内、税金と印紙税収入は43兆円。これに国有財産の売却などを合計して47兆円)ですから、45兆円が不足しています。

 この予算案は単位が大きすぎて身近に感じません。そこでこれを個人の家計の収入と支出に引き直して説明した記事が、以前日経新聞に出ていたのを思い出して、これを一部修正の上数字をあてはめて説明してみます。

 

年収470万円の家計で支出が920万円 

 夫の収入(税収)が430万円、妻のパート収入(国有財産の売却など)などの副収入が40万円で、合計収入が470万円の家計です。そんなに裕福で無い若者の家計を想定したら良いでしょうか。

 この家計、支出面が大変です。

 おじいちゃんの医療費など(社会保障費関連)が270万円、郷里への仕送り(地方交付税)が180万円、防犯(防衛費)に50万円、教育費(文教費)に56万円、家の修理(公共事業費)に58万円、その他いろいろも合計すると、支出が合計でなんと920万円にもなります。

 すなわち、450万円が家計赤字で不足の状態の家計です。

 

赤字国債と借金

 この不足分450万円を、新たな借金(国債発行)をしてまかなっていますが、このうち、220万円が過去のローン(国債)の返済(償還と金利)に充当されている状態です。借金とその返済という自転車操業状態の火の車の家計が、今の日本です。 このように、日本は家計の支出の半分を借金で工面している異常な状態です。

 夫の収入も増えない中、おじいちゃんの医療費や郷里への仕送りは増えていく状態です。

 結果として、ローンの残高(国債の残高)は、年収470万円の家計で1億円(年収の20倍強)になり家計の首が回らないといった状態です。

 同じ話を国家レベルに戻しますと、92兆円の財政の約半分、45兆円の不足を国債(借金)でまかなっているのが現状です。借金である以上、返済期日(満期)が来たら返済しなければなりません。このための「国債費」が平成25年度の場合、22兆円、すなわち、45兆円の内、22兆円が国債の償還費(約11兆円)と国債の利子(約10兆円)の返済のために充当されている現状です。

 日本は、1970年代以前からこのパターンでしたが、赤字の規模が当時はうんと低かったと思います。結果として、借金(国債の残高)、ローンの残高が家計レベルにすると1億円になった状態です。

 今のところ、家計の金融資産は、過去の遺産相続か何かで約1.1億円あるのでしばらく安心という意見を吐く人もいます。しかし、こんなことを信用して良いのでしょうか。金融資産はいつでも目減りしてしまいます。

 

目減りしやすい金融資産

 資産側から見ると、確かに、日本の家計の金融資産は、約1100兆円あるとの統計資料があります。金融資産が国の借金1000兆円を上まっているので、これまで日本政府発行の国債を国内で消化出来ました。しかし、この幅が減少傾向のようです。高齢化社会を迎えて、金融資産を取り崩すリタイア人口が増えてくるからです。また、金融資産の中身としてアメリカ国債も相当の比率を占めていると言われます。

 負債側の方を見ると、日本政府発行の国債の購入者は95%位が国内消化です。すなわち、国内の保険会社や金融機関の購入で、海外が8.4%(以前は5%)マイノリティなのが日本の特徴です。従って、「海外の投資家の売りにあわないから、日本の国債が暴落しないのだ。」と、言われています。日本がギリシャなどとの大きな違いを述べる人々が、よく使う言葉です。

 理論経済学で学んだとおり、国債の価格は長期金利と連動しています。金利iが下がれば国債の価格Pが上がります。国債の人気が高いときは入札で金利が安くなりますが、その国の信用度が下がると国債価格が下がり、金利iが上がり、国債の発行政府,日本は資金繰りが困難になり国債の利払いができなくなります。

 このようにある日突然、日本の国債が暴落するかもしれないリスクは無いと誰が保証できるのでしょうか。遂には借金が返済できなくなり、いわゆる財政破綻となるリスクです。

 

Related Posts

 

Comment





Comment