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折々の言葉 / 政治と国民

第180回 多極化時代の世界とアメリカの現状から学ぶこと(10)

Posted on 2015-11-12

前回の続きです。

 

日本の文明を維持するために

 この項の最後に、過去繁栄した国が何故衰えたかについて少し考えて見ます。誇れる日本の文明を維持していくためです。

 地中海の覇者、ベネチアは、大昔ほど栄えていないのが事実です。この共和国が何故衰退したのでしょうか。

 

技術進歩でリードする

 800年頃東ローマ帝国の自治領として誕生し、地中海の覇者として隆盛していましたが、1796年ナにポレオンにより滅ぼされ、1100年の歴史に幕を下ろしました。ベネチア共和国滅亡の原因は何かです。

 一つは、技術革新への対応の遅れが指摘されています。

 当時の軍船は漕ぎ手が奴隷などの人的エネルギーでしたが、15世紀にポルトガルが帆船を開発しました。

 また、大航海時代に入り地勢学的に重要性が低下したことも原因です。カイロが東方貿易の主流になり、拠点はポルトガルのリスボン等大西洋に面した港湾都市になりました。ベネチアは地中海という内海の中心でしかなくなりました。このことで、人々の通商意欲が衰退してしまいました。

 幸いなことに、日本はシーレーンの問題はあるとしても、地政学的にベネチアほど大きな弱さは発生していません。 しかし、技術進歩をリードする力が一つの文明を守っていくのに如何に重要かを、この国の歴史から学べるところだと思います。

 また、カルタゴは地中海の南側のアフリカ大陸北岸(今のチュニジア共和国あたり)で紀元前10世紀ごろまで海洋国家として長く栄えていたことを、我々も世界史で学びました。この北側に栄えたもう一つの都市国家ローマがあり、常に意識する存在でした。

 

経済至上主義にかたより過ぎず、政治や文化などの充実

 カルタゴの滅亡の原因です。

 カルタゴは豊富な農産物と造船技術で交易を発展させた経済国家でした。富の獲得に血眼になり、政治的、文化的、倫理的な進歩が遅れました。経済至上主義を貫いていたのです。

 勿論軍備も備えていました。海軍は自国民でしたが、陸軍は大半が傭兵で、戦時にこの傭兵に依存していました。傭兵の目的は金銭で、自国のための意識が薄かったのです。他人依存の状態と言ってよいでしょう。日本の安全保障問題とも関係します。

 カルタゴは経済的、軍事的に対立国のローマに脅威を抱かせ存在であったことが特徴的です。そのように力をつけている隣国を滅亡させるべしとの世論をローマ市民は持ち、戦争の機運が高まり第三次ポエニ戦争が開戦になりました。この二つの国は、三回のポエニ戦争で130年以上戦争し、最終的にカルタゴが世界史から消滅してしまいました。

 今や、軍事では国の文明を維持できない時代になっています。隣国との外交関係を重視しなければならないのは当然としても、経済至上主義ではなく、国家としての政治的、文化的、倫理的な進歩の重要性をカルタゴの衰退から学びます。我々は教育を通じて、今後の日本を支える傑出した人材を育成していかなければなりません。

 この教育は、私などが受けた画一で同一的なものでなく、新しい日本をつくる心意気を推し進める非画一的で創造性豊かな人物をつくるものが望まれます。過去の価値観や制度が意味を失いつつある現在では、全く別の新しい教育概念や制度を導入しなければならないと思います。

 以上、多極化時代の世界で日本がどう生き延びていくかに関して、約2か月かけて述べさせていただきました。

 

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