園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

折々の言葉

会いたくない人

Posted on 2014-02-20

 先週、ある会社の社長との話の中で、印象に残る人物が話題となりました。その話から、偶然、腹黒い人について触れる展開となりました。そもそもあまり聞きたくない話だとは思いますが、ご参考まで。

 私は、これまで本当に腹黒い人にお会いしています。最後の最後まで見抜けませんでした。一見紳士風。話も知的センスにあふれており、何となく引きこまれる。次にお会いしても同様。また次も表面は隠蔽し、さも善人ぶるその人に騙される。何回か繰り返すうちに、彼の腹黒さが少し分かる。しかし、その頃には、その人の権謀術数の展開通りにストーリーが進み、根こそぎとられてしまう。しかし、本人は何もなかった振りをして、次の週も顔を合わせる。

このようなことが、皆様できますか?まさに、腹黒の極地です。みなさんの周囲にもいるかもしれません。架空の話ではありません。今でも世の中に、こういう人がいることを知るだけでも、少しはリスクヘッジになるかもしれません。

 スケールの違いがありますが、歴史書で権謀術数に長けた腹黒い人物を読んだことがあります。あまり周囲からは尊敬されない人物かもしれませんが、これも度が極端に標準から逸脱しているので、物語や映画の材料に適しているかもしれません。

 中国、「三国志」に登場する魏の国の曹操。読まれたことがあると思いますが、多数の人民を殺戮。しかし、何も反省しない人物。それどころか、「自分が人に背くことがあっても、人に背かれることはない」と豪語する人物。人を陥れる腹黒さの代表選手です。

 「三国志」から漢の時代に入り、皆様ご存じの劉邦。彼こそ最高の腹黒さを持った男だと思います。歴史書の通りだとすれば、なにしろ自分が助かるためには自分の息子でも簡単に犠牲にするほどの男です。他方項羽は劉邦ほど腹黒さ無いように描かれています。他人の不幸が見過ごせない男。劉邦ほどの腹黒さが足りないのです。あの広い中国の天下を取れなかった原因の一つかもしれません。

 曹操や劉備のような人にもし仕えるとすると、どうしたらよいか?通常の仕え方では無理です。距離を置きたい、会いたくない人ですね。

 実に嫌なことですが、現実の世界でも、スケールを落としてこのようなことが起きているかもしれません。ある種のやり方で仕える振舞いをする。このような上司がスイスイと昇進する姿を見ることがありませんか?悲惨ですが、現実です。しかし、そのスケールで、その振る舞いでは、長続きをするかは疑問です。ましてや、天下取りは無理かも。

 

 

男性と女性の違い

Posted on 2014-02-13

 私は長い間、コミュニケーション-正確には、ダイアログ(対話)に関係するビジネスに携わっていましたが、その間、男性と女性の考え方や感じ方、コミュニケーションの取り方の明確な違いを見てきました。

 一言でいうと、男性は必要なこと以外は余りしゃべらない。これに対して女性は、必要なことの判断軸が男性よりはるかに広く、なんでも話題の中に取り入れてしゃべる傾向が強いということです。この意味で、男性と女性とは違うことを痛感しています。

 この違いはどこからきているのでしょうか。

 ある学者は、大昔に何万年も続いた洞窟での生活と関係あると説いています。洞窟の中で生活していた頃の両者の役割が基になり、脳の中にそれが組み込まれているのではないかと言う主張です。学術的なことは別としても、私もおそらくそうではないかと思います。想像するに、命懸けで洞窟の外に出て獲物を獲ってくる役割、洞窟の周辺の危険を気にしながら子供を世話して、食事をつくり、洞窟内で一緒に暮らす集団の平穏と健康を保つ生活維持の役割等を、双方が分担して果たしていたのではないかと思うからです。一般的なイメージですが、前者を男性が、後者を女性が、役割として担っていたのではないでしょうか。

 女性はとにかくおしゃべりを通じて人間関係を樹立していくために、一日数万回コミュニケーションや言葉を発しているようです。一日のうちに数千語の単語をしゃべり、これの数倍の顔の表情や頭の動きなどのボディーランゲージ、言葉にならない声や音を数千回発しているそうです。対して男性は、せいぜいその三分の一ほどと言われています。

 女性のコミュニケーションは、遠まわしで回りくどい婉曲話法をとります。女性は洞窟の巣を守るために対立や不和を避けて平穏無事を目指したからですが、男性のそれは直截的話法です。しかも、この言葉を介したコミュニケーションに関連して、身体接触を通じた会話を楽しむのも、女性は男性の4~6倍とのことです。皮膚の感受性がすこぶる高いのです。

 仕事の中で部門間の相互援助の必要性をいち早く察知するのも、女性のほうがはるかに早い。隣の部門にヘルプが必要か、誰かが悩んでいるのではないか、誰かの意見にその人が傷ついていないか等の察知能力に関しては、女性の精巧な感覚能力には男性はかないません。私の言う「農耕型企業風土」づくりにおいて、女性の果たす役割が大きくなることになります。

 洞窟で集団生活をする中で、周囲のわずかな雰囲気の変化を察知することは、自分の子供を守り、結果として家族を守るために必要不可欠だったからかもしれません。また、女性の周辺視野が男性よりはるかに広いのも、洞窟の周辺の敵をいち早く見つける必要があるからです。他方、男性は遠方のものを見分ける視点に優れています。これも遠方の獲物を探すために身に付いたものと思われます。長期的視野で物を捉える仕事には向いているかもしれません。

 日常の仕事の進め方において、この違いを理解して、かつ、性差の特徴を活かしながらマネジメント努力をする必要があります。そういう私も、このことを分かりながらも、普段の生活で「もっと、話を聞いて」と言う家内の要請に答えられているか自信がありません。

 

「おもてなし」のマネジメントコンセプト

Posted on 2014-02-06

 東京オリンピックの招致成功以来、「おもてなし」という言葉がいろいろな場所で使われています。ある時は本来の意味通り、ある時は少し皮肉っぽく使われているようです。

 それはさておき、この言葉-本来の意味では-私が好きな言葉の一つです。

 西洋流に言えば、ホスピタリティーとなるのでしょうか?でも、少し違和感があり、やはり「おもてなし」という響きの方が私にはすんなり入ります。

 「思いやり」、「もてなす」ことを前面に出す考えで、相手を利する行為、しかも、それが努力してというより、自然にそうなるという感じで、本来、日本人が大切にしてきた生活習慣の一部です。単なる利他主義的行為とは、少し考え方が違うのではないかと思います。

 「相手のためを思う自然な行為」だとすると、マネジメント的には科学的な説明がつかない部分が相当あります。また、自社を利して、成果のみを求める成果主義的考え方とも相容れません。したがって、この意味での西洋流の発想でマネジメントすることとは、少し趣を異にするマネジメント手法ではないでしょうか。

 この発想のマネジメントをしていくには、「もてなす」考え方を経営理念や行動指針など、社員の現場での具体的行動を、すべてこの考え方で一貫させていくことが不可欠です。お互いに助け合い、相手に利する発想をもとに、Win-Winの関係を作ることを会社の隅々まで徹底することになります。

 日本には、特定の旅館やホテルだけでなく、企業経営の中にこの考えを取り入れた会社があります。会社を良くしていくために、相手、即ち、顧客や取引先を第一に利する。その結果として、自分の会社や社員も、さらに利益の分配にあずかることのできる理念をもった会社です。私は、そのような会社をもっと見たいと思っています。

 短期的な利益や物的な豊かさより、会社の持続的な発展を目指す。キーは人に置き、人への投資、人への教育や指導を怠らない考えの会社は、私の主張する「農耕型企業風土」づくりの考えと一致しています。組織は人と人の集合体であることを念頭に置き、人の持つ「人間らしさ」を大切にしていくマネジメントです。このような会社では、満足した社員が、必ずや顧客が満足するサービスで「おもてなし」すると、私は確信しています。

 

グローバル人材へのステップ

Posted on 2014-01-23

 ビジネスマンが国際的な場でリーダーとしての力を発揮するには、まず最低限、法務、経理、語学、IT、マーケィングの知識が必要とされます。経営者として多くの判断を適正にするには当然のことです。知識の深さは別として、これらの知識が経営判断を全体として助けてくれたことは、私の経験でも疑いの余地がありません。

 しかし、これらは最低限必要。むしろ、幅広い教養や人間としての深みが、グローバル人材として要求されるのではないでしょうか。言語の違い、文化や風土の違い、民族、また、歴史の違いを明確に理解しながら現地の社員などとより良いコミュニケーションを取らない限り、ビジネスを円滑に展開することができません。

ビジネスマン自身が、自らどのようレベルアップに留意したら良いかを考えます。

 

Phase 1

学部か修士を卒業して30才くらいまでを想定しています。

 この期間は、自分で基礎的なことを習熟する期間です。従って、与えられたことをキチッと遂行して求められる結果を出すことに専念してください。

この期間は、あなたが周囲からの信用を得られる人間かどうかの一定の評価が定まるときです。従って、とにかく仕事ならなんでも真剣に向き合い、決して手抜きをしないことです。周囲から「あの人は仕事が出来る!」との評価を得られればしめたものです。

 仕事をしっかり遂行するには、各種のスキルが不可欠です。そのために、勉強の時間を取り、法律、経理、語学、IT等の基礎的なスキルの養成に、自己の資金を投資してください。以後のあなたの成長に大きく影響を及ぼすことになります。

 

Phase2

中間管理職として部下を持ち、上司の指示のもとに部門を切り盛りする時代、45才くらいまでを想定してみてください。企業の規模によって相当の差がありますが、平均的にはこの年齢かと考えます。

 所属する会社内でのキャリアと自己の人生の先行きが少し見えてきた、と思える時期です。自分の判断ミスや部下の起こしたミスなどにより沢山の失敗経験を持つことになる時期で、100人いたら90人以上の人がマネジメントに失敗と試行錯誤を繰り返しながら学んでいる時期です。特に人間関系の複雑さ、出会いの偶然、自己の適性について悩みながらも歯を食いしばって頑張る時期です。経営層の一部に参画できるかのチャンスが巡って来る時でもあります。また、スペシャリストとして生きる決断の時期でもあります。

 この時に一番重要だと思えることは、「自分らしさ」をどう見つけるかです。人間、それぞれ適正、能力、知識等の違いがあることが自然です。それらを自分で判断して、「自分らしさ」を表現するにはどうしたら良いのかを、真剣に考える時期です。

グローバルな環境で自己のキャリアをレベルアップするかの決断をするのも、この時期かもしれません。

 

Phase3

チャレンジングな時期です。40才から45才頃と想定してはいかがでしょう。

 Phase 2の期間で自分を客観的に評価し、且つ、置かれた状況下で何が選択できるかです。ビジネスマンとして会社の指示通りに動くか、他のオプションを考えるかという観点で選択をする時期です。ビジネスマンとして、人生のスト-リーをある程度決めることになります。意思表示が重要な時期です。

 会社内で中核的事業のために貢献するか、チームを率いて新規事業を立ち上げるか、不採算事業を立て直すか、海外事業展開に主体的に関与するか等の選択肢がありますが、自分が望むというよりは、会社の人事から命令されることが一般的です。

その命令に従わない選択もあります。起業です。それまでの経験や人的チャンネルをベースとして自分で事業を立ち上げるという決断もあります。日本でもこのルートに興味を持つ若者がもっと出てきてくれることを望みます。

 「あの人のためなら・・・」と本気で皆から慕われるか否か、が決め手です。このような雰囲気を持っている人なら新しい事業の立ち上げもスムーズにいくと思います。この時期は、自分の人間的魅力こそが人を引っ張る力になることが分かる時期です。

 ここでは勝手に国内と海外と職場を概念上分けて選択肢を探す道を挙げましたが、現代の世の中では現実的ではありません。何をやるにしても海外に人材の協力なくしては展開ができません。あなた自身、好むと好まざるとに拘わらず、違う言語、文化や風土、違う歴史的背景の人々と接点を持たざるをえません。40才から45才頃のこの年代だと、経営層の一部としての役割を果たす立場となるはずですので、一度自己採点してみてはいかがでしょう。

 海外で、新規に工場を立ち上げる交渉ができますか?

 海外の現地法人の社員を前に、英語で事業の方針説明をできますか?

 海外でのトラブルや優秀な現地社員からの退職の意思表示、特に、一部の国では労働争議、関係する役所からの調査、などへの対応をどうしますか?  などなど、項目は沢山考えられます。

 どれもこれも一筋縄ではいきません。しかしながら、このようなことがスムーズに出来る人材が世界中で求められているのです。このような人材こそ財産ですから、あなた自身、今のうちから世界に通用するこのような財産を持てるように意思を持ち、訓練を積むことです。

 

意思決定で気をつけていること

Posted on 2014-01-16

私が意思決定に当たって留意していることがあります。

 第一は、人間には「意識上の壁がある」ことです。

 無意識ではありますが、我々は重要な情報を落としがちです。自分自身もそうですが、あることに一点集中すると他の重要な情報が見えなかったり、見過ごしたり、探し損ねたりすることを無意識にやっています。無意識にやっているそのことを意識しないことの危険性です。

 私はその自分の習性を理解しているので、最近はある意思決定にあたり、本当に重要な情報は何かを常に意識することにしています。こうして少しでも意識の枠外にある情報を探し出すための工夫をしています。

 第二に、ほとんどの人が自分だけが知る情報を、他の人には伝えていないことが多いことです。その人の意地が悪いのではなく、人間のクセです。

 このような場合、本人が事前に情報を半強制的に開示できる仕掛けを作ることで情報の共有を意識的に促し、これを回避しています。

 第三に、他の会社の成功のケーススタディーの穴に陥り、誤った結論を導くリスクを常に考えています。

 人は成功体験の本を読み、何となくわかった印象を抱きます。このことから意思決定に当たっての選択幅を良いと思うもののみに限定し、他の情報をバイパスするケースです。

 良いことのみを見たいという習性が原因です。翻って私の経験に照らしても、会社の再建に成功したのは、単に、どこかの成功例を安易にベンチマークするのでなく、現場を巻き込んだ血のにじむような努力の体験があってこそ初めて成功したことから考えると、成功の例を真似するバイパスの危険度が分かります。

 第四に、正しい「質問をする」ことを心掛けています。

 リーダーとしての最大の仕事は意思決定ですが、これを正しく判断するには、前提として正確な情報を集めることです。そのためには正しく「質問をする」ことが不可欠です。

 「農耕型企業風土」づくりがどの程度できてきたかをチェック・レビューするにも、所定の項目に関する正しい「質問をする」ことが非常に大切ですが、同様に意思決定に当たって「質問する」ことの重要を認識しています。

 第五に、エビデンスをもとに判断する努力をすることです。

 そのために、テスト調査やトライアルを盛んに実施して、不明な部分についてのエビデンスをとにかく蓄積することを私は推奨しています。すなわち、「知の蓄積の習慣」を身に着けさせるためです。

 過去に新薬の開発に関連する仕事で、特定の部門がビジネス上のあるプロセスに関わっていました。医学の先生から学んだことは、先生方は医学の世界でのエビデンス(目に見える証拠主義)に基づく判断、治療をしていることでした。

 会社の病気に直面する経営者は、風評などでなく事実やエビデンスをもとに、「知の蓄積」レベルをもっと高めた判断をするよう、さらに努力すべきと考えます。