折々の言葉
あなたはどういう時に感激しましたか?
人は、それぞれいろいろな状況や場面で感動することがあります。
尾崎豊氏の葬儀の列
「この雨の中、なぜこんな沢山の人々が道に並んでいるのだろう?」と正直不思議でした。
20年前、1992年のことです。ひどい雨の降る日で、私はタクシーで池袋駅近くにあったオフィスに向かっているところでした。首都高速道路を降りて護国寺のあたりに差し掛かると長い人の列に遭遇しました。いったい何事だろうと思い聞いてみると、護国寺でシンガーソングライター尾崎豊の葬儀が営まれている、ということでした。激しく降りしきる雨の中、弔問に訪れる人々の列は池袋の駅までも続いていました。
この時、私は尾崎豊というアーティストについてあまり知識がありませんでしたので、なぜこんなに多くの人が?と浅はかにもそう思いました。しかし雨の中延々と続く弔問の列を目の当たりにし、これ程までファンに慕われるアーティストはどんな人かと、興味を持ち、オフィスに戻ると、当時私が経営責任を負っていた会社の社員の高橋勝君に聞いてみました。
また後日、高橋君からアルバムのCDをいただき、尾崎豊というアーティストの曲に触れ、心を揺さぶられるような思いがしました。「世の中にこの様な人がいたのだ」と強く感動した瞬間です。時代背景が変わった今も、彼の生み出した作品には、多くの人を引きつける「何か」があるのではないでしょうか?
根本要氏の「木蓮の涙」
それから随分時間が経過した2012年の春、あるシンガーソングライターの曲に偶然出会い心を打たれました。東名高速道路を走って伊豆に向かう途中、たまたまひねったNHKのラジオから聞こえてきた曲です。雨で延期になった高校野球の準々決勝の代わりに再放送されていた番組の中の一曲でした。
「逢いたくて逢いたくてこの胸のささやきがあなたを探している あなたを呼んでいる いつまでもいつまでも側にいると言っていたあなたは・・・」というこの曲は、スターダストレビューのボーカルでギターリストの根本要氏の「木蘭の涙」(木蘭は木蓮の漢語表記)です。
なんとも、胸に刺さる曲でした。恋人との関係を歌ったものでしょうが、私には東日本大震災で被害にあった方々の思いのたけを心の底から歌ったようにも聞こえました。「亡くなったお母さんに会いたい、恋人に会いたい、でもかなわないこの現実・・・」。何とも心に響き、聞きながら東日本大震災の被災された方々や関係者皆さんに思いをはせ、祈るような気持ちになりました。
仕事の場面でのある感動
歌とは全く次元が異なりますが、仕事の中でも社員が感動する場面があるものです。
仕事柄、一般のビジネスマンが休暇中にも仕事をしなければならない社員がいます。一般の人が嫌がる時節、正月やお盆の休暇中にも仕事をしなければなりません。
私はこの期間に仕事をしてもらっている人に感謝するため、全国に沢山あるコールセンターで正月やお盆の休暇中に仕事をしてくれいている社員に、お茶やジュースのボトルやお菓子などを差し入れることにしていました。
当時の秘書の野沢さんや富浦さんなどが、社内のメンバーを動員して配送指示をし、これを実現してくれました。私としては現場最優先、しかも、社員とアルバイト社員の区別は仕事上一切なし、現場で頑張っている人に感謝する気持ちを簡単な差し入れで表現しただけのことです。
このことに「現場のアルバイト社員がとても喜んでいます。人が嫌がる期間に仕事をしてくれる人への感謝の気持ちを表すためのこの差し入れの配慮が会社の仕組みとなっていることに、現場がいたく感動していました。」と現場のマネージャーがいっていたことを、先般そのコールセンターの総責任者だった美馬君が、嬉しく誇らしい顔で先般私に語ってくれました。
この様な些細なことで社員が感動し社員との心が通いあっていたことを再認識させられ、私も大変嬉しい気持ちになったものです。
「因縁」づくりの努力をしていますか?—嶋口充輝先生の挨拶より—
2012年2月29日に東京で行われた私の「出版を祝う会」で、嶋口先生(前法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授、慶応義塾大学名誉教授、公益法人日本マーケッテイング協会理事長)ご挨拶をいただきました。とてもありがたく拝聴しましたが、皆さんのご参考にもなると思いご紹介させていただきます。
社員を大切にした、人中心の経営
「園山さん、おめでとうございます。そして、園山ファミリー、といいますか、園山ステューデントといいますか、素晴らしい皆さま、本日は本当におめでとうございます。
私はベルシステム24で園山さんが社長をしておられたころにお目にかかって、その時、「よくここまで園山さんが若い人たちと一緒にやるな!」、と不思議に思っていましたが、この度書かれた新しい、素晴らしい本を拝見して「なるほど!」と分かって、また本日ここにきて再び「ああ、あの時と同じだ!」とそう強く思いました。
園山さんの素晴らしさは誰もが知るところかと思いますが、私も園山さんとのお話を通じていろいろと勉強させていただいてきました。そしてまた、今回出版された「これからの社長の仕事」の中身を読ませていただいて、「そうか、そうか、なるほど」とひとつひとつ納得しながら勉強させていただきました。
園山さんの思想は、農耕型企業風土をつくる、そのためのフォーミュラがあって、社員を一番大切にして人を中心に経営をしていく。そして「18の定石」をしっかりやっていけば、みんな良い会社になるというものですが、まさにその通りだと思っています。
私が少し前にベルシステム24に出社させていただいていたころ、感じていたことが二つあります。一つは、業績がどうしてこんなにいいのだろう、といつも不思議に思っていました。もう一つは、その業績のよさの根源は社員の喜々とした姿にあって、それは園山イズムに裏打ちされているのだということを強く思っていました。そして今回、本を拝見して改めて「なるほど」と思った次第です。
「社員を大切にする」、という園山さんの考えと同じようなことを、だいぶ前にもう亡くなったある経営者から聞いたことがあります。経営の世界では「人・物・金・ノウハウ」という言い方をしますが、その方がおっしゃるには「嶋口さん、違うんですよ『人物が金(きん)』と読むんですよ。そしてさらには『人物がノウハウ』なんですよ。」と。
園山さんの本を読んで、改めてその考えを、まさに「その通りだ」と思った次第です。今日、ここにお集まりの皆さんは、まさに園山さんに育てられ、その影響を受けた方ばかりだと思いますが、とても素晴らしいです。
天台宗、山田恵諦さんの「因縁」について
天台宗のトップ、山田恵諦さんという方がいらっしゃいましたが、この方が「因果と因縁」という話をしておられ、これが私にとって大変興味深い話でした。今回、園山さんの本を読んで、改めてこの「因縁」というコンセプトがまさに園山イズムのベースなのだと感じました。
どういうことかと申しますと、園山さんはアメリカに留学された経験があり、非常にアメリカ的な教育を受け、合理的な考え方もお持ちでいらっしゃいます。アメリカの経営の考え方は、どちらかというと「因果」の考え方-原因があって結果が生まれるという、ストレートな答えを反映した経営をしています。つまり、よい製品をつくれば売れる、優秀な人がいれば会社が成長するのである、といった考え方です。
それは、基本的には正しいことなのですが、山田さんのいう「因縁」とは少し違って、原因は一つでも、実際には全く違う結果になる、というものです。具体的には、たとえば葉っぱが枯れて木から落ちる、すると地面に届く。万有引力があるのでそうなると、「因果」という考え方ではそういうことになりますが実際にはいつもそうはいかない、そこに一陣の風が吹いたとすると、その風によって葉っぱは全く違う方向にいってしまう。
「縁」のかかわりによって、結果をまったく違うものにしてしまう。因果社会というよりも因縁社会だと、山田恵諦さんはそういう言い方をされていました。
人間中心の「因縁」づくり
園山さんの著書を読んでみると、まさに因縁づくりを、人を中心にしてやっていらっしゃるな、とそう思いました。よい縁があれば、よいサービスやよい商品があれば、会社が成長するのだということがはっきりわかる。園山さんはそれを把握した上で経営をしてこられたのだな、と思いました。
園山さんは、何かまた新しい事業をするのではないかと期待しています。ぜひ素晴らしい経営をなさっていただきたい。そしてまた素晴らしい人生の後輩をサポートしていただきたいと思っています。どうぞますますお元気で。本日はおめでとうございます。
嶋口先生の鋭い観察力に感服しながら、ご挨拶に聞き入りました。後日、先生からご自身の著書、「顧客満足型マーケテイングの構図」(有斐閣)を送って頂きましたが、その本のP190に山田恵諦師の「因縁」のことが書いてある旨の先生のメモが、挟んでありました。
「善因善果」となるような縁をつくりたいと考えて経営をしてきましたが、縁、関係性によって「善因悪果」もあり「悪因善果」ともなりうることに、先生の著書を拝見して改めて気づきました。
「祝う会」に集まったメンバーを見ながら、「会社を『わくわく元気』に変革きたのも『人間中心』にした『因縁』づくりの経営が成功したからかもしれない」と思った次第です。
「この人が私を成長させてくれた」と思う出会いを与えていますか?(2)
前回の続きです。
出会いの嬉しさと経営の怖さ
私のコラムの開始をお知らせすべく、2012年4月25日にFacebookに投稿したところ早速ある人から反応がありました。自分としては褒められすぎな気もしますが、書き込み内容が「人との出会いや縁が如何に以後の本人の成長に影響を及ぼすか」を示した実例ですので、経営を預かる方々に、少しでもご参考になればと思い紹介させて頂きます。
小林君は当時、新しい事業部の立ち上げに異才を放ち、ものすごく貢献してくれた人材で今は独立して事業をやっています。以下、Facebook上の小林君の書き込みを原文のまま引用します。
学生のころご縁あって、ベルシステム24という会社のコールセンターでバイトしました。バブル崩壊直後の当時にも関わらずずっと2ケタ成長を続けていたその会社のビジネスのからくりが知りたかったんです。
いざバイトで入ってみたら、ビジネスモデルもそうですが、社員たちが活き活きとポジティブなオーラをまとい、使命感を持って働いている文化に学生ながら衝撃をうけました。「どんな人が引っ張ってるの?」とそのとき社長の園山征夫さんに興味を持ちました。
大学卒業してからそのまま正社員として入社して、やっと園山さんの言葉を生で聞けるようになりました。自分にとって初めて生で触れる本当の大社長でした。
身内の零細社長たちしかみたことがない自分には、そのビジョン、立ち振る舞い、カリスマ性、ビジネスに対する哲学、発する言葉に秘める教養と気品、すべてがキラキラに輝いて見え、「人の上に立つというのはこういうことか!!」というのを植えつけられました。
以来ずっと憧れの人で、目指すべき経営者のお一人です。今考えると、多忙な園山さんにビジネスプランを承認してもらうため、何度も何度も稟議を手書きで書きなおしていたんですが、これが「経営の視点なら何が知りたい?」を考えるトレーニングになってました。
稟議の返事は必ず一言しか書いていないんですが、あまりに達筆?すぎるのか全く読めないんです(笑)。でも自分が考えたプランにハナマルだけもらった時の嬉しさたるや、フロアを跳ね回りました。自分にとっては、園山さんの背中から学んだことをどう社会に還元していくのかもライフワーク。
そんな園山さんですが、今は現役経営者を退かれて書籍を出されたり、更新育成に当たられていますので、特にマネジメントや経営されている方は書籍を手に取られてみることをお勧めします!
小林君のような人材を輩出できたことを誇りに思っています。また、私が彼にこのような影響を及ぼしていたことを今回初めて知り、嬉しくもあり、また経営の怖さも改めて認識しました。
なお、蛇足ですが私は字が下手です。社員が私の書いた文字を読めなくて、当時の秘書の野沢さんや富浦さんが翻訳代読をしてくれていたことを大分経ってから知った次第です。 小林君が今後更に成長してくれると確信しています。
「この人が私を成長させてくれた」と思う出会いを与えていますか?(1)
Facebook上でのうれしい再会
嬉しいことがありました。
今年の2月、Facebookに本田千夏さんという、以前私が経営の責任を負っていた会社に勤務していた女性のコメントを発見したのです。私が最近書いた「これからの社長の仕事」の本の表紙の写真を添付して次のようなコメントを書いてくれました。そのまま引用させていただきます。
私が新卒で入社した会社の社長だった園山さんの著書です。当時、社員のひとりひとりに向けてくださった思いに気づき、改めて感謝の念を抱きました。私は、何千人の中の1人の一般社員でしたが、それでも、『この人が自分を成長させてくれた!』と思える出会いと経験に感謝です。
特に、全社のマネジャー以上が集まるコア会議の準備での、分析やベンチマークは大変でした。しかし、それらの情報が方針や目標の一部になって発表された時、点と点がつながって一つの道筋として、ストンと腑に落ちました。著書を拝読し、ガンバロウ!と今一人で密かに奮い立っています。
Facebookをコミュニケーションの道具にとりいれたことで、6~7年ぶりに彼女とのコミュニケーションが戻った懐かしい瞬間でした。なにより嬉しかったのは、私の経営が彼女の人生で大きな積極的な意味を持っていたということを直接本人から聞いたことです。
最初の上司
社会人になって最初に出会う上司がその人の人生に大きな意味を持つ、とよく言われます。確かに、いろいろな意味で最初の上司が大きな影響を与えると思います。
私は経営上必要な視点を男性、女性の性差なく、厳しく社員に指導していました。彼女がFacebookに記載した内容を読み、非常に嬉しかったと同時に、「社長という立場の上司として、社員を中心に真剣に経営をしていて良かった。」との思いを抱いています。
人間集団をまとめる経営層のジレンマ
直木賞受賞作(145回)、『下町ロケット』(池井戸潤著)を2011年秋に読んで思うことがありました。主人公の佃航平の発言などから、著者が今の時代にどんな思いを抱いているのかが鮮明に浮かび上がります。
集団を引っ張る経営者が、自己の「夢のある目標」を追い求めていくが、なかなか社員の共感をえられないジレンマ、大企業と中小零細企業間の格差の現実の中で大企業の下請け的立場に甘んじたくない経営者としての気骨と当面の飯のタネを求める社員の思いとの板挟み、入社した会社の大きさと自分の実力を勘違いして横柄にふるまう恥ずかしい大企業の社員の姿、組織という厚い壁のある中でも、不道理に屈せず社会正義を追い求める社員の姿、いろいろな状況で見せる社員の顔の裏と表などなど。私も経営者としてこれらと同様な状況に直面し、克服してきました。
私もこれまで約20年間、経営者として稀有な体験をしました。
倒産直前の社員間の不信、裁判、上場、親株主の変更、株式の第三者割当に関わる訴訟、株式非公開化、社長解任劇などなどです。この経験を踏まえてネットスクール出版より二冊の本を著わしました。『これからの課長の仕事』と『これからの社長の仕事』です。
その中で私が気づいた経営の在り方と「農耕型企業風土」づくりで中・長期的に会社を成長させるため「いろいろな施策で社員を幸せにすると、本人(社員)の心理と脳の特定の働きかけにより、社員のモチベーション、創造性、革新性が高まってイノベーションをもたらし、本人と会社を成長に導く」フォーミュラ(公式)や「18の定石」を述べました。
この本の内容や本で言いきれなかった体験を、園山征夫のビジネスコラムでは、出来る限りリアルで具体的に、「問いかけ」の形を用いることによりテーマを簡潔明瞭に表現することに努めます。Facebook上で展開しております「わくわく元気会」の部会活動に加えて、これから活躍し社会にいろいろな意味で貢献されるビジネスマンを対象に、「折々の言葉」としてこのコラムで情報発信していきます。
皆さまが、いろいろな意味で「わくわく元気」になれることを祈ります。




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