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折々の言葉 / 語り継ぐ経営

第209回 今、リーダーに求められている経営の視座(4)

Posted on 2016-07-07

前回の続きです。

前回リーダーの資質などについて述べましたが、そのリーダーにも沢山の艱難が待っています。

 

困難へのリーダーの対処

 ビジネス上、沢山のトラブルや困難が一度に舞い込んでくる時があります。この時も、トップは我慢しなければなりません。特にベンチャー的な発展段階ではしかりです。

 いろいろなことが同時に発生し、その解決も単純ではありません。それでも、自分の仕事を投げ出さずに我慢して課題を解決しなければなりません。この時、リーダーはどう対処したらよいでしょうか。

・普段から情報開示を旨とし、常に開かれたコミュニケーションルートを経営上目指すことが大事です。

 自由に意見を言えない、何か発生しても隠す風土があるとしたら、これがリーダーの姿勢から発生していることが多いです。

 何かの事態が発生しても、リーダーは状況を隠さずありのままに開示して、全員が共通の理解の上で課題を解決する方向に持っていきたい。

・リーダーが自分の心理をコントロールする。

 実は、このことがリーダーとして非常に重要なことです。

 不安定な心理状態は、すぐ社員に伝わります。「何かあったのか?」、「自分の仕事はどうなるのだろう?」など不要な不安を社内にまき散らす原因となります。

 友達に相談することも方法です。また、自分の悩み事を何かに書き留めて問題を整理することも方法です。やたら不安を社内で掻き立てないことです。

・社員、商・製品、利益のうち、社員を最も大切にする。

 働きやすい環境を作ることにリーダーが努力をしていれば、社員という仲間がいるので、困難に直面してもリーダー一人で悩み背負い込むことがなくなります。

・社員への教育を重視することです。

 社員への教育投資を惜しまない。

 社員が辞める理由は、上司が嫌い、何も教えてもらえない、教えて育てる環境がない場合が大半ですが、もし社員への教育のなさをなげいているとすれば、そのような状態では生産性が下がるのも当たり前です。

 にもかかわらず、リーダーがこのことを認識していない場合が多いのは残念です。

・社内の政治力学に押されない経営をすることです。

 実績評価や給与査定のルールを厳格にやり、政治力学が作動しにくい仕組みとするのも方法です。リーダー自身も注意しなければなりません。よく相談に来る人をリーダーは評価しがちになります。これでは、リーダー自らが社内政治を作り出す原因になっているかもしれません。

 私の体験では、会社の成功を第一に考え、その副産物として自分の成功を考える人を採用したつもりでも、優秀な人材は最悪な社員になりうることも留意必要です。リーダーもしかりです。

 

心の習慣を変えるストレス・マネジメント

 今やリーダーはじめ世のビジネスマンにストレスに対する対策が不可欠になってきました。

 企業のリストラ、年功序列もなし、一定年齢になると給与がカットされるなどストレスが溜まるモノばかりです。ビジネスマン自身が限界感を感じてしまいます。

 特に、団塊の世代の人々は、仕事上、特定の居場所に上り詰めることに全力を注いできたからです。居心地が悪くなると酒、たばこに走る。しかし、それでは今の時代を乗り切れないのが今の世界です。

 しかし、人間にはこのようなストレスから回復する能力を元来備えもっていると言われています。へこんでも回復する力を持っています。

 笑いも良いでしょう。私の友人が「笑いの場」を設けて参加者を喜ばせています。心の生活習慣を変えることになります。

 深呼吸、体を動かす運動、睡眠、仲間や家族、自然との触れ合い等いろいろな方法があります。これらを実践すれば、ストレスからの回復力が増します。私もこれらのことを意識しています。

 人間性格があります。これをチェックするパーソナリティー指標も勿論あります。理想が高く厳格な人、受容的で思いやり豊かな人、客観的な人、自由で明るく行動的な人、自分の気持ちを抑えて周りに合わせる人等タイプがあります。

 自分の性格を知った上で、不足分を補う努力がストレスを予防できる方法です。決めたことをやらないと気が済まない性格の人もいますが、環境の変化に適合させて柔軟になるのも一つの方法です。

 ストレスからの回復力を高める資質の一つは、気楽に考える習慣です。辛いことがあっても「こういうことは起こり得ることだ。しかし自分は何とかやっていけるはずだ、大変でも意味がある」と思い、乗り切っていける資質です。

 リーダーはこうありたい。

 最後の方法として、とりあえず休むのも方法です。立ち止まり考えることです。焦ることは禁物です。

 

組織を動かすルール

 困難への対処も全てある目的に向かって組織を動かすためです。

 リーダーの統率する組織自体は複雑です。今、ますます複雑になってきているので、対処すべきことが多くあるように見えますが、「組織を動かすルール」は意外に単純です。

 私が「定石」と称することと重なるものです。

・組織をうまく動かすために、私は人間としての社員個人を、彼の行動を「知る」ことを重視していました。

 社員個々人を理解することと言いかえることもできます。今、何を望んでいるか、何をしているか、そのことで彼がどう満足をしているか等、とにかくその人を知ることです。

・社員、特に中間管理職の権限と自由に判断できる総量を増やすことにしています。

 社員個人に裁量を与えると、個人の行動を変えることにつながり、組織の動きが活発になるからです。

・助け合う環境を重視します。

 チーム自体が自立しながら協業する、チームワークを常に意識をすることです。集団で目指すアウトプットの共通理解がある前提です。対チームワークをよくして共同で何かの目標を達成する。このために対話の努力が必要となります。

・結果を共有することです。

 中間期、期末に目指した目標に対しての成果と反省を社員全員で共有することです。場合によりお祝いをする。

 助け合った人々に対して報いることです。しかもこれを単に金銭的なもので無く表彰など全員の前に彼の成果を示せる方法も得策です。

・組織を動かすために、もう一つ肝要なことは、対話力です。

 あらゆる仕事で、対話やコミュニケーションの取り方が重要です。商談、会議、報告会などビジネスマンならずとも、あらゆる人にとり仕事の重要な要素です。

 対話には言葉のメッセージによる対話と、ボディランゲージなど言葉以外のメッセージによるものとがありますが、リーダーにも双方が必要です。

 リーダーが「すみません、すみません」と公約を実現できなかったことを何回も社員に謝罪しながら、表情や体の動きから「本心が違うのでは?」と、我々には分かることがあります。ビジネスマンならず、だれでもこの違いを察知する能力を持っています。ところが、リーダーという立場になったとたんに、このことを忘れてしまう人もいます。時には、対話に於いて言葉より以上にリーダーの組織を動かす仕事に大きく影響を及ぼすことを忘れてはなりません。

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