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折々の言葉 / 語り継ぐ経営

第227回 経営者にとって事業計画、事業戦略の本質的捉え方

Posted on 2016-11-24

 経営をするにあたり他の会社と異質なことをやって会社を成長させたい。経営者なら皆、発想することです。

 そのためには「何をどうしたら良いのだろう」。このような相談を受けることが沢山あります。

 今回は、これについて本質的なことのみを簡潔に取り上げ、その相談・質問への解答とします。

 

基礎設計と動機付け

 経営者の仕事をごく単純化すると、(1)戦略や事業計画を立てるアーキテクト(基礎設計)部分と、(2)特定の方向に社員を向かわせるモーチベート(動機付け)の部分があります。双方ともないがしろにできない重要な仕事です。

 この中で、多くの会社の経営者は、どちらかと言えば戦略や計画策定の部分が不得手とみます。それでも以下のことに注力すれば、もっと経営を上手く差配できるのではないでしょうか。

 たまたま今、「事業計画」のつくり方の本、『成長し続ける会社の事業計画のつくり方』(12月に直接販売で刊行予定)の中でもふれていますので、今回はこのテーマを取り上げることにします。なお、ここに言う「事業計画」とは経営戦略の策定から毎期の年度計画の策定までをも包含した概念です。

 

アーキテクト(基礎設計)のデザイニング

 経営者の仕事の第一番目です。

 会社の将来像をどうデザインするか、戦略策定や計画策定の中でもキー要素、これが仕事です。

 アーキテクトの基礎設計部分で、このデザインの大きさ、堅牢さ、優越性が会社の将来の成長拡大の路線と範囲を規定するといえるほど重要な要素です。

 したがって経営者は、自分が描くヴィジョンの実現にむけて、この部分を最重要視して取り組まなければなりません。

 日本の経営者の一部が前任者やこれまでのやり方を踏襲して、新規性のあるイノベーティブなアーキテクトのザインを株主や社員に呈示できていない、そのような訓練を受けていないために、海外の企業に比して経営的に後れを取っている部分があるのではないかと、私は憂慮しています。

 この背景としては、基本設計のデザインの質の差、更に結果をもたらす視点やその能力に差があると思います。当然このアーキテクトのデザイン仕様が、戦略や計画に反映されることになるので、経営力の差が益々大きくなります。

 

優れたアーキテクト(基礎設計)にするには

 そのために経営者にとって重要なことが三つあります。

・第一に良いデザインをアーキテクトするには、一見バラバラに起きている諸事象を統合して把握する能力が経営層にあるか否かが、問われます。複雑な現象をどう統合して捉えるか。それらの諸事象が自社の経営にとってどう影響を及ぼしそうか、ヴィジョンに描く姿と統合した事象が価値的にどうつながるかを感じる能力です。「一を見て十を知る」センスを加味した能力が不可欠です。

・第二に、先読みができる予測能力が必要となります。いろいろな技法で環境や現状分析をする。それらの分析から将来起きそうな事態をどう予測して自らの事業をどう方向づけるかは、優れて、経営者の先読み力にかかっています。

 先を予測して、競争を優位に引っ張るドライバーを選定して、これを戦略や計画の中に活かす。これが優れたアーキテクトで勝負に挑む近道です。

・第三に、これを株主や社員に説く能力です。これは冒頭、経営者の仕事の(2)と関係しますが、戦略や計画の浸透の幅と深さ、スピードに関係します。戦略や計画実現の裏方を握ることになります。

 

統合力と予測力を磨く

 上記の能力は経営者万人には備わっていないかもしれません。それでも、少しでもこれらの力に近づくことができます。第一と第二の能力に近づくにはどうすれば良いか。

 このためにはまず、物事の因果関係を正確に把握することが必要です。

 詳細は省きますが、成長率が鈍化したことの事実の背後には、そうなる因果関係が必ずあります。原因があり、結果があるのです。その関係性の中から太い線を引けるものを見つけて、素早く手を打つための分析をする。

 原因と結果の関係を逆に捉えて満足する経営者が時々いますが、その後のその会社の盛衰は推して知るべしです。

 次に、「何故そうなったか」を徹底して何故、何故と考え続けることです。原因は統合する程度が低かったからか、予測のレベルが低かったからか、予測の範囲が狭すぎたかなどなど、何故を考える。これを習慣づけする。このことがなされていない経営を意外に多く見ます。一足飛びに結論に導き失敗する例です。

 「何故、何故」は、結果の良い時には実行の効果が大きいのですが、ほとんどの会社では、悪い結果の時にしかこれを実践しません。また、結論を急ぐために「臭いものには蓋をしたい」一心で、全うな「何故」ができずに、残念ながらまた同じ事態の発生を見てしまいます。

 因果関係と何故を含めて考える。以上の二つに留意して統合力と予測力に近づいてください。このところができれば経営の50%は上手くいくことになります。

 以上参考になりましたでしょうか。

 残りの比率は、経営者の第二番目の仕事、(2)モーチベートする策をどうするかにかかっていますが、これに関しては別の機会にふれることにします。

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