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人材育成 / 折々の言葉

継続的に伸びる会社は何が違うと思いますか?(2)

Posted on 2012-10-18

 私の著書「これからの課長の仕事」、「これからの社長の仕事」の中で「農耕型企業風土」づくりで会社を成長させるための「フォーミュラ」について述べ、2012年10月12日の本コラムで継続的に伸びる会社のポイントを違う側面から言及しましたが、今回はその続きを述べます。

社会のために「人つくり」の視点

 よく「儲かる会社」、「儲かる事業」などと表現されます。この表現は、会社としての最大の目的が沢山の顧客を発掘して結果として利益をあげることだとすれば当然で、所期の利益を上げて株主に還元するためにも最小限必要なことです。

 しかしながら、もっと大事なことがあると私は考えます。

 それは、その会社が業界の中で社会にためにどんな橋頭堡を築いたか、築いていこうとしているのかということです。長い事業スパンで考えると、それこそが、その会社の価値を決める違いになるのではないでしょうか。

 社会のために何を築くのかは、その企業が置かれた立場や業界の特色によって違いがあります。

 しかし、多少の違いはあるとしても、「人つくり」という仕事はどの会社にとっても競争上で一番の橋頭堡になるものと私は考えています。その意味で、多少コストがかかっても「人つくり」を重要なターゲットとすることは、非常に多くの意義があるのではないでしょうか。

Whyを考える「人つくり」

 この「人つくり」でも「How to」にたけている人よりも、「Why」を考える人こそ重要だと思います。

 細かい情報が沢山氾濫している現在、ある問題に対して解答を得るためのHow toを教える人やその機会が沢山あると思いますが、思考のルートやヒントを与えてくれる人や機会が少なくなってきてはいませんか。

 人間がレベルアップしていくには、起こりうるいろいろな事象に対して、それを克服するための応用問題を解く能力が要請されます。

 また、応用問題を解くアプローチも沢山あるという理解が重要です。選んだそのルートは、その応用問題のみは早く解けるが違う応用問題では限界があって苦労するようなルートかもしれません。ルートの選択で思考するクセもつきます。そのような素養を持つ「人つくり」を心がけたいものです。

「仕掛け」造りの工夫

 継続的に儲かる会社には、「仕掛け」があります。

 週間報告書(週報)や月間報告書で対話をするのも、私が取り入れていた「仕掛け」の一つです。この「仕掛け」を習慣化していました。

 本来は報告書のファーマットで学習させレベルアップすることが目的です(その詳細は先述の本に譲る)が、一定期間に実行したこと、できなかったこと、人間関係を含めて悩んでいること、会社への提案など何でも記載結構です。

 何でも記載可能な形にしていましたので、上司と部下のある種の交換日記的役割も全うしていました。報告書の中に「隣のAさんが最近沈んでいるようです」などの一言の記載から、実はAさんでなく本人が沈んでいることを表現したものと察し、必要なサポートをタイムリーに差し伸べることに成功したこともありました。

 上司を通じて私も週報を読み、コメントを手書きで返すことで「対話」を継続的に実施することにしていました。

 また、イベントも大きな「仕掛け」として年2回大規模に実施、習慣化していました。

 このイベントで社員、同期社員、家族、従業員と会社の一体感を醸成するのです。日頃の労苦に会社が感謝の意を込めて開催するこの収穫祭のイベントを、皆楽しみにしていました。「その一瞬で半年の苦労も吹っ飛び、また新たな気持ちで頑張ろうという意欲が湧いてきた」という感想を聞いていました。

 メンターと言う制度も一時期作ったことがありました。新しく入社した新人は右も左もわかりません。そこでいわば本人の「里兄、里姉」的に「里子」である新人をサポートするものです。皆から信頼される社員をメンターに充てることで、その新人の以後の成長度に大きな違いがあることに気づきました。新人のサポートをすることで、メンター自身も成長することにつながりました。

 決裁の承認の関門をなるべく少なくしました。

 組織をフラット化して稟議の関門を少なくすし、やりたい人が自己の才能や思いをなるべく障害なく実行出来る「仕掛け」にしました。特に、新しいことにチャレンジするような案件には前例がないが故に、提案者にとっては稟議承認で消極的な関門が多くなりやすいものですが、そこを省力化して若手のやる気を応援するためでした。もちろんコンプライアンス上のレビューは当然必要なことですが、会社が大きくなると自分の存在感を主張するために、何かに意見や文句を言う人が多くなる傾向がありますので、これを回避してチャレンジする心を応援する「仕掛け」です。

 クオリティー改革など、いろいろなアイデア・コンテストも実施しましたが、これはなるべくたくさんの社員をこの企画に巻き込み、隠れた才能を持った人を発掘するためでした。優れた考えを持った社員が沢山いました。良い企画には褒美のみならず、それを実行に移すことを会社として担保し、単なるショウに終わらせない工夫もしました。

 その会社の置かれた事情で「仕掛け」の内容は異なると思いますが、この「仕掛け」を習慣化して、継続的に会社の仕組みの中に組み込むことが不可欠です。

オープンなコミュニケーションができる土壌

 継続的に儲かる会社には、円滑なコミュニケーションがあります。

 組織に「甘えの構造」がみられる場合には、限られた閉鎖的なメンバー間でのコミュニケーションのみで満足していることが多いものですが、これでは限界があります。組織内に全員がオープンにコミュニケーションできる「場」が欠落していることで、会社として本来持っているエネルギーが失われてしまいます。

 特に幹部社員には「マネジメントの定石(参考:「これからの社長の仕事」)」として、オープンなコミュニケーションを実行させる習慣を身につけさせることです。簡単そうですが、これには結構努力が必要です。一度はできても継続的に実行することが危うくなることもあります。

 また、幹部社員が忙しいこととオープンなコミュニケ-ションが無いこととは、全く無関係です。多忙は隠れ蓑で言い訳以外の何物でもありません。一方的な上意下達の話のみで、部下の立場に立ったコミュニケ-ションができていないかもしれません。

 コミュニケーションをよくしようとする本心があれば、どんなに忙しくてもコミュニケ-ションの工夫によって閉鎖的な部分をけん制・打破でき、素晴らしい企業風土をつくることにつながります。

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